第十三話:決意
それから昼頃までは特に何をしていた訳ではなかった。
広い敷地の大きな木の下で座り込んでいただけだった。
......というと語弊があるかもしれないが、全く何もしていなかったという訳では無い。
これは僕の癖のようなモノだったのだが、よっぽど何かに集中している時以外は何をしていてもずっと何かを考えている。
とりとめのないことをぼんやりと、そう、ぼんやりしていると言った方が近いのかもしれない。
ただ、何をしていても頭が空っぽになるようなことはほとんど無かった。
だから何かと言えば、昼頃まではずっと、僕にしては珍しく「考えごと」をしていた。
そもそも何かを考えようと思ったことすら、ここ最近では珍しかった。
途中でふと気付けばラースは居なくなっていて、それで一層考え込んだ。
それは例えば、これからのこと、バルクさんのこと、レヴィアのこと、学園のこと。
今まで生きてきた
もちろん僕もそちら側で、戦う以外を知らずにいた。
ずっと嫌だった。「傷つけること」が。
始めは子供らしく、“いい子”でいる為に......拒絶されない為に。
戦う術を学び始めてから暫くは、嫌ではなかった。少しだけ。
しかし年を経て、それが我が身可愛さだったと知って厭になった。
おだてられて言いなりになり、居場所を得たつもりになっていた自分の浅ましさが......偽善が厭になった。
どれだけ建前を並べても、それら全てが「保身」に帰結した時点で、全てが厭になった。
気付けば何も考えず、染み付いた「手順」を行使していた。
だからこそ、だったのだろうか。
あの朝にラースと出会って、そのまま勢い任せに飛び出した。
不思議な奴だと思った。と同時に訳が分からなかった。
今まで見たことも無い体色、人の言葉を話すし、襲ってこない。
それに妙にエラそうで、それが何故かサマになっている。
こんな竜が他にもいたのかもしれないと思うと、激しい後悔を感じる。
少なくとも、何も考えず言われるままに、殺戮を続けた俺はバカだった。
どうして、竜や龍が悪だと信じて疑わなかったのか。
所詮僕も、「滅龍の民」だったということか。
もっと早くその間違いに気付いて、
今となっては結果論、たらればで、無意味なことかもしれないが......。
......つくづく今までの俺は愚かだったんだ、と。
だから今度は、これからは違う。
この国に来られた。バルクさんとレヴィアに会えた。
......だから変わりたい。
何かを傷つけることしか出来なかった俺が、誰かを護ることの出来る僕に。
今こそ。変わろう。
吹っ切れた、とは言い切れないが、薄っぺらかった自分がよく見えた。
これからのことも、決めた。
いつの間にか陽は天高くに輝き、木陰は僕を追い出していた。
「こんな所に居たのね。そろそろ昼食よ。
その後は、分かってるわね?」
「ああ。どうぞ宜しく、レヴィア。」
「......貴方、なんだか......。
いえ、行きましょう?お父様がお腹を空かして待ってるわ?」
「それは大変だね!早く戻らないと!」
僕達は屋敷へと駆け出した。
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