第十一話:妹候補の女の子
いつまでそうしていただろうか。
我に返ったのは、屋敷に着いた馬車が止まったからでも、それでもまるで動く気配のなかった俺にバルクさんが声を掛けたからでもない。
......見かねたラースに尾でビンタされたからだった。
「おい、ホムラ。着いたそうだぞ?」
「あ、あぁ。ごめん。
......ちょっとボーッとしてたんだ。」
「我は別に構わんのだがな。バルクは先に......」
「それはマズいね。」
あまりバルクさんを待たせてはいけないかと、少し急いで馬車を降りたその時。
「お父様ーっ!!おかえりなさい!せっかくのお休みなのに大変ね?」
少し幼さの残る、高めの声が聞こえた。
声の主は、赤紫色の緩くウェーブしたロングヘアーを持っていた。
「ただいま、レヴィ。こればっかりは、私がゆかねばねならないだろうとね。
それで、こちらが件の......」
彼女がバルクさんの言っていた、僕の「妹候補」のレヴィアか。
馬車の中で名前だけは聞いていたが............
「まぁ。あなたがあの「龍の
「えぇ、まぁ。そうらしいです。」
バルクさんの紹介でこちらに気付いたらしきレヴィアに話しかけられた。
なんだか気の強そうな子だと思った。
「ふぅん......その子、本当に立派なドラゴンナイトになれるのかしら?
いくら伝説の「堕馨仔」でも、そんなに弱々しい見た目だと疑っちゃうわ。」
「......は、はぁ。」
......同時に、気難しそうな子だなとも思ってしまった。
「......そういえば、僕その伝説ちゃんと知らないんですけど......?」
「え......?あなたが「堕馨仔」だってこと自体は説明された......みたいね。
伝説については聞かなかったの?」
「それはね、レヴィ。うちでゆっくり話そうと思って、まずは彼自身の質問に答えていたんだよ。
何せ彼は「堕馨仔」で、何かと知らずに苦労することもあろうかとね。
さぁ、それより早く家に入ろう。パパは少しだけ疲れてしまったよ。
もう歳かな......?」
「まぁ、それは大変!早くお家に戻らなくては!」
......そして、お父さんが好きなんだな、とも思った。
「ははは、あの子がすまないね......」
「いえいえ、お父さん思いのいい子ですね。」
「ああ。自慢の一人娘なんだ。
......と、先ずは家に入ろう。
ようこそ、我が「ドラゴフレイム家」へ。」
「お世話になります。」
その後、大きな屋敷の敷地内を軽く案内してもらったあとで朝食を頂いた。
貴族と聞いて思い浮かんだ僕のイメージとは裏腹に、食事は決して無駄に豪華なものではなさそうで、そこになんとなくバルクさんらしさを見た気がする。
それに、里では安全安心で食べられればマシというような食生活をしていたので、それでも僕には素晴らしいご馳走だった。
......そういえば、脱走してから何も食べてなかったよな......。
自覚してみると、途端に空腹が意識され始めた。
「それでは、頂こう。」
バルクさんの一声で、朝食が始まった。
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