#007 パワーバランス

 今回のお題は「パワーバランス」。


 皆さんはパワーインフレについてどう思いますか? 面白ければそれでいいと言う人もいれば、設定や最低限の物理法則は守るべきと言う人もいます。


 小説は物語であり、フィクションであり、ファンタジーなので、リアリティーのみを追求するのもよくありませんが…、あまりにも設定が二転三転すると読者もついてこれなくなります。


 私は、ハッキリ言ってインフレ反対派ですね。別にインフレ作品の存在価値を否定するほど嫌っているわけではありませんが、好きか嫌いかで言えば嫌いです。コメディーとか、他の部分に大きな魅力が無い限りは読みたいとは思えません。




 批判的な話をする時に具体的なタイトルを上げるのははばかられますが…、努力友情勝利な雑誌で連載されている作品なんかはパワーバランスを一切考慮しない傾向が強いですね。作品のスタート時に目標にしていた高みが、連載がすすむとアッサリ設定が破棄され後付けでどんどんバランスが塗り替えられていく。流石に初期設定で世界最強クラスの強者を、終盤の脇役が軽々と凌駕していくのはやりすぎだと思いますが…、1つ1つ展開は熱いし、短期的なストーリーを重視した結果であり、それも一つの答えなんだと思います。


 この手のバランスブレイクは、一見すると考えるのもラクそうですが、実際にはコレはコレで大変なんだと思います。なにより、作者としてインフレ時のストーリー構築の大変さは理解しているつもりです。初期の頃の誰でも理解できる次元の話なら問題は無いですが、しだいに能力は複雑になり、登場人物も増え、アイディアもつきてきます。その中で短期的な展開を重視して燃料を燃焼し尽くせば、あとが続きません。そう言った部分では、週刊誌に連載されているインフレ作品は凄いなと思います。




 アンチ能力。強くなりすぎた主人公を抑制するのに便利な展開は、やはりピンポイントで刺さる初見殺し。あるいは人間関係から崩す作戦ですね。あくまでバランスは守る。だから吊り天上にするのではなく、アンチ能力で対抗する。


 まぁ"魔法モノで新章の敵は魔法無効"みたいな展開は、流石に酷いって思いますけど、結局どこかに矛盾は産まれるわけで…、"操作系能力は謎が解かれるまで無敵"とか"その時だけ都合よく相手の気配に気づけない"あるいは"超高速で移動しているのに全く着かない"などの不自然はよく用いられます。でも、ボスっぽい人が毎回、催眠系能力者だった時は、流石にこの作品終わったなって思いましたね。




 もちろん週刊誌にも初期設定を守る作品も多いです。まぁその手の作品は途中で連載休止や打ち切りが多いですが…。最初から作者の中では結末が決まっていて、そこに計算し尽くされた展開で向かうだけ。そう言った作品はいいですね。でも週刊誌だと引くに引けなくなって、無理やり蛇足が追加されたりなんてことも。


 もちろん殆どの作者がある程度の展開を前もって考えたうえで作品を形にしています。しかし、書いているうちにもっといい案が浮かんだり、読者の反響が思った以上によくなってしまった脇役が切り捨てられなくなったり。そういった事態に柔軟に対応するのも一つの答えです。あくまで大切なのは面白さであり、多少のことは受け入れるのも大切だと思います。




 しかし、中には異才と言うか、根本的に頭のねじがぶっ飛んでいる作者もいます。ゆで理論だったり、コピー芸だったり、ハトビームだったり。あとは子供向け作品としての表現なんかもありますね。ここまでいくとバランスそのものが異次元なので常識は通じません。独特の中毒性があることも理解しているので、それはそれでありだと思います。


 ただ、許せないのが子供向けの思想が抜けきっていないナンチャッテ本格ファンタジー。あくまで子供向けやコメディーとして作っているのならいいのですが、残念ながら"野生のサルにエサを与える程度の浅はかな善行"をやらかした主人公が、なぜか持てはやされるような作品が多く、しかも評価されている。これは正直、どう受け止めていいのか分からなくなります。


 たとえば回復魔法を無償でばらまき経済崩壊させたり。ちょっと助けられた程度で素性の分からない不審者に貴族や王族が大切な娘をさしだしたり。なかには肉食動物にバランスが悪いと言って野菜を食べさせる作品なんかもありましたね。最近は子供向けの作品でもそう言った表現は規制されているって言うのに…。


 あとは、作為的に実例を過大解釈したりねつ造するタイプの作品もあります。小さな虫が身体能力に優れているのは、虫の遺伝子が優秀だからではなく、小型でなにより軽いからです。実際には微細な虫を人間台の大きさにしたら自重で動けなくなりますし、真空に特殊強化ガラスを破壊するだけの力は出せませんし、100kg超の物体の慣性を片手で軽々と捻じ曲げるのも不可能です。正直に言って、事実をねつ造してリアルを謳うタイプの作品は、もうすこし作者としての責任や倫理を考えてほしいですね。




 最後は批判的な内容になってしまいましたが、それらの作品も一つの答えであり、立派に書籍化したり、アニメなどのメディア展開を果たしています。子供向けでも、大人向けでも、リアルでも、独創的でも…、それはそれとして完成していることが重要であり、それぞれの答えがある。


 本当に、作品作りって奥が深いですね…。

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