フランス出身のエリノア

  ワシントン州 ハリソン夫妻の自宅 二〇一五年七月二〇日 午後八時一五分

 マーガレットがお芝居の話を香澄とハリソン夫妻が夢中になって聞いていると、ここで何かを思い出したかのようにジェニファーが声をあげる。

「そうだ、フランスで思い出しました。今週末に遊びにくる予定のエリーも、確かフランス出身でしたよね!?」

「――言われてみると、そうかもしれないわね。確かエリーの生まれ故郷もフランスだから、あの子から色々と面白いお話が聞けるかもしれないわ」

 今週末の七月二四日にハリソン夫妻の自宅へ遊びにくる予定のエリノア・ベルテーヌも、フランス出身の女性。だがエリノアの具体的な出身地については、香澄たちも知らない。なのでこれをきっかけに、エリノアの出身地や故郷について話を聞く予定の香澄たち。


 一方で香澄たちが話すエリノアという女性に興味を持ったマーガレットは、“そのエリーという子って、ひょっとして香澄とジェンの新しいお友達?”と問いかける。するとジェニファーは

「えぇ。心理学科で心理学を専攻している一年生――じゃなくてもうすぐ二年生かな? 心理学サークルに入部したのをきっかけに知り合った子で、私は香澄にとって大切なお友達です。……見て、マギー。この子がエリーよ」

と言いながらスマートフォン(以下スマホ)の画面を開き、数ヶ月前の心理学サークルで一緒に写真を撮った画像をマーガレットへ見せる。それを見たマーガレットは、

「へぇ、結構可愛い子じゃない!? けれどやっぱりジェンや香澄のお友達ね。このエリーって女の子、どことなく雰囲気があなたたちに似ているもの」

 自分がエリノアという女性に対して思った率直な気持ちを、そのまま伝える。だがその顔には笑みがこぼれており、“香澄やジェンも頑張っているのね!”とどこか嬉しそうだ。


 マーガレットの突然の帰宅にフランス出身のエリノア、奇妙な偶然が重なりあったことを受けて、“そうだ、マギー。せっかくだから、あなたも今週末の予定を空けてくれませんか? エリーにあなたのことを紹介したいの”とお願いするジェニファー。だがその気持ちはマーガレットも同じだったようで、

「もちろんよ、ジェン。むしろ私の方から、お願いしたいと思っていたくらいなのよ」

ジェニファーの答えを待つことなく快く承諾してくれた。

「これで決まりね。勝手に決めてしまいましたけど、大丈夫ですよね? 香澄」

「私は問題ないわ。――悪いけどフローラ、当日はエリーの分もお食事を用意してくれますか?」

ジェニファーとマーガレットの提案を同じように承諾する香澄。そして香澄はフローラに、料理の追加をお願いする。

「任せてちょうだい。当日は私の得意料理で、みんなをあっと驚かせてみせるわ」

「決まりだね。……と言っても僕はその日は学会があるから、参加出来ないんだけどね。ごめんね、みんな」

 本当な全員で楽しみたかったと思う香澄たちだが、あいにくとその日は終日学会の予定が入っているケビン。しかし“お仕事なら仕方ありませんよ”と、少し落ち込み気味なケビンをフォローする香澄。その言葉を聞いたケビンの口元は、少し緩んでいた。

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