マーガレットが戻ってきた理由とは!?

  ワシントン州 ハリソン夫妻の自宅二〇一五年七月二〇日 午後八時〇〇分

 思わぬ友人との再会により、胸を躍らせる香澄とジェニファー。そして実の娘のように可愛がっているマーガレットの無事な帰りを、心から歓迎するハリソン夫妻。そして彼女たちの祝福を受け、心から感動するマーガレット。香澄・ジェニファー・ケビン・フローラ、そしてマーガレットの五人が食卓へ並ぶ姿を見るのも久しぶりの光景。

「……というわけなのよ。本当は国外でクリスマス公演をする予定だったんだけど、劇団の都合で急遽きゅうきょシアトルへ戻ってきたってわけ。だからしばらくの間……またお世話になるわね」

「えぇ、もちろんよ。メグのために私、いつでも部屋は綺麗に掃除いるのよ」

「これでしばらくの間、僕らの家もまた賑やかになるね。何はともあれ……家にいる時はゆっくりくつろいでね、メグ」


 マーガレットは当初、何の連絡もしないでいきなり帰ってきたので、“以前使っていた部屋は、まだ掃除されていないかも?”と内心焦っていた。だがマーガレットがいつ帰ってきても問題ないようにと、ハリソン夫妻は彼女が住んでいた部屋の掃除を定期的に行っていたのだ。その事実を知ったマーガレットは、ハリソン夫妻たちの優しさと気遣いに感謝してもしきれないという気持ち。

 興奮が冷めないのは香澄とジェニファーも同じで、ハリソン夫妻らと同じようにマーガレットを質問攻めにする。

「そういえば私まだ聞いていないんですけど、マギー。本来ならあなたは、どこでクリスマス公演をする予定だったんですか? 先ほど“国外で上演する予定”って言っていましたけど、本来なら――」

「あれ、ジェンにはまだ伝えてなかったかしら? 私たちの支配人がね、フランスでオペラを中心に行っている劇団と知り合いなの。それがきっかけで、オペラ・バスティーユでオペラに挑戦する――というはずだったんだけど、向こう側の都合で公演は中止になってしまったの」


 オペラ・バスティーユといえば、フランスの英雄ナポレオン・ポナパルトが活躍したフランス革命でも有名な場所。フランス革命二〇〇年記念ということで、このオペラ・バスティーユが建てられた歴史を持つ。そのためフランスの歴史を語る上において、欠かすことが出来ない場所の一つでもある。

「本当に残念ね、メグ。それで結局、クリスマス公演はどこで上演することになったの? さっきあなたは“しばらくシアトルに滞在出来る”って喜んでいたけど……」

「うん。私たち劇団員にとってのお家でもある、ベナロヤホールでクリスマス公演をすることになったの。でも舞台公演の場所が変更になったから、何を上演するか今みんなで考えているのよ」

 演劇やお芝居のことを語るマーガレットの姿は、とても生き生きと輝いている。かつて学生時代に劇団員を夢見ていたころと変わりなく、まるで少女のようなまなざしで大好きなお芝居の話を続けるマーガレット。

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