レイクビュー墓地に響く陽気な声
ワシントン州 レイクビュー墓地 二〇一五年七月二〇日 午後三時〇〇分
トーマスたちへの近況報告を終えた香澄たちは、彼らが眠るレイクビュー墓地を後にしようと足取りをそろえ始める。だがその表情に笑顔はなく、誰もが重苦しい雰囲気を発している。
まるで無表情なお面のような顔をしている香澄たちの背中から、ある人物の元気な声が聞こえてくる。
「こら! せっかく久々にシアトルへ戻ってきたのに……いい歳した大人たちがみんなそろって、いつまで暗い顔しているのよ!?」
暗く沈んだ香澄たちの心に、一点の光が差すような瞬間。だがその元気な声に聞き覚えがあった香澄たちは、
「!? その声はもしかして……」
目を点にしながら声がする方へ振り向く。
するとそこには、香澄たちがよく知る人物の陽気な姿があった。
「みんな、久しぶりね! 今まで忙しかったのだけど、やっとシアトルへ戻ってこれたわ」
にっこりと満面の笑みを浮かべながら白い歯を見せ、太陽のように笑っている白いブラウスとピンクのスカートを
悲しみに打ち浸れる香澄たちの前に、突如帰ってきたマーガレット。色々と聞きたいこともある香澄たちだったが、そんな彼女たちに目もくれずトーマスたちへ近況報告するマーガレット。
「お久しぶりね、トム。あれから数ヶ月の間会えなかったけど、元気にしてた? 本当はクリスマス公演まで、シアトルへ戻ってこれないと思っていたんだけど……」
その後もトーマスたちへ近況報告を澄ませるマーガレット。暗い陰を落とす香澄たちとは異なり、常に明るく接しようと努力する姿を見せるマーガレット。一見すると表向きはもう元気になった様子に見える彼女だが、その心は香澄たち同様に深く傷ついている。
しかし学生のころから演劇をしてきた経験からか、どんなに悲しい時でも笑顔を作ることが出来るのがマーガレットの長所でもある。そんな裏表のないはっきりとした性格に、生前のトーマスも密かに惹かれていたのかもしれない。
トーマスたちへ近況報告を終えたマーガレットは、サンフィールド家の墓石に別れを告げた後、そのまま香澄たちが待つ場所へと向かう。そしてマーガレットは改めて、自分が香澄たちの元へ帰ってきたことを報告する。
しかし少し込み入った内容になるということを踏まえ、“少しでも早くお家に帰りたい”というマーガレットの気持ちを汲むことになった。
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