第11話
***
早水「――何しに来たんですかね、この人」
藍田「一応、はい。このストーリーの目的を示しに来たというか」
早水「ご都合主義――いえ、失礼しました」
藍田「……こういうもんですよ。別に突っ込まれたから変に見えるだけで、普通です」
秌山「この人、もう去ったのだろうか?」
藍田「えーと、一応まだ背中が見えはしますね。何かしますか?」
秌山「はい」
***
――ちょっと待って欲しいのです!
熒は甲高い声を上げた。
「どうかしたんですか? もう少し説明した方が良いですか?」
男は振り向いたが、表情にはやや困惑の色が窺えた。
「あなたは私達のチームの監督になりたいと思って来てくれたのです!」
――は? 男と少女たちの声が揃った
「あなたにはリーダーの才能があるのです! 」
「ええ……そんなことないんですが。すみません、もう帰って良いですか?」
早水が恐縮そうに頭を下げる。
「呼び止めてすみませんでした。気にしないで下さい、この子ちょっとアレなんで」
「いや、ちょっと待つのです!」
***
秌山「私のキャラクターシートを見てもらいたいんだが。ほら、この特殊能力のところ」
早水「亮月が開始前にごねてた奴ですね。これがどうしましたか? 『ウソをつかない』としか書いてありませんが。そもそもこれって能力じゃないですよねって話しましたよね」
新谷「正直こんな『制約』みたいなの書いて頭悪い方なのかなって思ったぜ」
秌山「だからそれだよ。私はウソを吐かない」
早水「は?」
秌山「言いかえるなら、ウソを吐かないってことは私の言うことは全部事実ってことだ」
藍田「だからどうしたんですか?」
秌山「つまりこの男が私達のチームの監督になりたいと思って近付いたってことが事実だってことだよ。彼にはリーダーの才能があるし、監督になってもらいたいと言ったらオーケーすると言うことだ」
藍田「そ、そんな能力ないでしょう。話がメチャクチャになるじゃないか!」
秌山「でも書いてあるし、君はそれを認めたじゃないか。最初に新谷が『関西弁設定辞めたい』って言ったときに君は『始まったら設定は変えられない』って言ったのじゃなかったかな。私は別に
藍田「そ、それは」
秌山「認めてもらえるだろうね。この能力を。さあ認めるのです!」
狩野「――でもさ」
秌山「あっ黙れミラン」
狩野「全部矛盾なく秌山の思惑を潰す方法ってあるよね。悪いけどわかっちゃったな」
秌山「……そんなはずはない」
藍田「なんだって!? それ、教えてもらえますか?」
狩野「うーん……そうだね。今は――黙ってようかな。秌山がこの能力を濫用するようなら考えちゃうけど」
秌山「わかったわかった。ミランは安心して寝ていればいい。まあ藍田さん、とにかく私が言ってしまったことは言ってしまったことだから、設定を生かしたまま話を進めてくれたまえ」
藍田「マジかよ……。この流れで話進めるのか……?」
秌山「さて、この男はなんていう名前なんだろうな。日本人かな、外国人かな。石川か、山田か、はたまたモロトフかリチャードソンか。――願わくば事前に名前を考えていてくれているといいが」
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