第7話

***


藍田「では、狩野さんどうしますか?」


狩野「避けるー」


藍田「えーとじゃあ回避のパラメーターでダイスロールですね」


新谷「てかさ、良い? た・た・か・え・よ! 何逃げてんのお前ら!? はー……もうイライラする」


早水「慎重なんですよ、私たちは」


秌山「逃げてばかりじゃ不利になるしかないのです! 君たちはもっと闘うことを覚えた方が良い。良いのです!」


新谷「お前もお前で別方向でイライラするけどな。つーか咲月はさ、お前なんなの? お前、自分の名前そのまんまじゃねえか!」


早水「違う名前付けるの恥ずかしいですし」


狩野「多分ね、自分の名前の方が後々恥ずかしくなるんじゃないかなって思うよ」

早水「ミランは名前なんでしたっけ?」


狩野「ボクはねー、佐藤さとう花子はなこ


新谷「……はぁ、やる気だそうよ。どうせ飛行機まだ飛ばないんだし、楽しもうぜ、こういうの」


秌山「賛成賛成。藍田さんが作ってくれた物語だしね。存分に楽しもうじゃないか。どうせ飛行機飛ばないし」


早水「えーと、あと何時間でしたっけ?」


新谷「あと二時間な。はー、本当ならもう日本に帰って寝てる時間だぜ? 何でこんなことに」


早水「機体トラブルじゃ仕方ないですよ」


秌山「多分、劣悪な環境で働く整備士が実力行使に出たのさ。我々労働者階級が味方しないでどうするんだ」


狩野「それもそれで無いと思うよ。ねー、ダイス振っていい?」


藍田「あ、そうですね。どうぞ」


狩野「よーし」


藍田「その前に一つだけ。時間もそんなに潤沢にあるわけじゃないし、物語の進行をスムーズにするためにもみんなに協力してもらいたいんですけど」


新谷「ん? それってどういうこと?」


藍田「みんなあまりこういうのに慣れてないから、今回はある程度、こちらが行動を指示するので、その範囲内でやってもらいたいってことで」


早水「それって行動をある程度制限するってことですか? さっきみたいに敵を見たら逃げるっていう選択も」


藍田「場面によっては制限させてもらいたいです」


新谷「え、それってダメだろ。全部予定調和になるじゃん。お前、いや、藍田さん、今更さ、この現代でだよ? 水戸黄門みとこうもん赤穂浪士あこうろうしを台本通りに演じて何が楽しいのかって話になるだろ」


藍田「でもストーリー進まないし」


新谷「いやいやいや、ストーリー進めるのは最優先事項じゃないのな。問題なのは、面白いストーリーになるか否かじゃないの?」


早水「なんでさっきまで私とミランを批判してた亮月が否定派に回るんですか。というか水戸黄門と赤穂浪士の例はまったく同意できないですけど」


新谷「いや、私が言ってるのは面白いかどうかって観点なの。あのさ、お前らが逃げまくって面白くなるなら別に何だっていいんだよ? でもさ、お前こんな序盤で逃げまくってたら全然前行かないじゃん。これゲームでいったらチュートリアルだぜ? スーパー雑魚相手に操作方法学ぼうっていうそういうフェーズじゃん。そこをお前ら逃げまくっちゃってさ何が何だかわからねえってかそれってさマジ、ヤバイよ。つか今水戸黄門と赤穂浪士の話はしてないだろうが! 何でそんな話、出したんだよ」


早水「『自分は文句は言うけど、行動を規制しようとはしてない』という主張ですか? それなら論理は通っているので私としては尊重しますよ。あと水戸黄門と赤穂浪士の話を最初に出したのはあなたなので」


新谷「いや、そういう話を出したタイミングはあったかもしれないけど、今の今はその話はしてないっていうの。別に変なこといってないだろ、私」


早水「なるほど。亮月の頭相応の発言と思えば変なことは言ってませんね」


新谷「そいつはどうも」


狩野「ねぇ、もう振っていい?」


藍田「え、ああどうぞ。とりあえずそういうルールで進めさせてもらいますので」


新谷「いやいやいや、論理おかしい。まだ終わってないだろ」


狩野「意味ないよ。どうせ新谷ってルール作っても守らないし。振るよー」

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