第3話 安らぎの地「学校」
前日の親父からの電話で、全く眠れなかった俺は今日も二つの意味で重い足取りで学校に向かう。
俺の通っている
蓬学園、通称「よもこう」の特徴はアホみたいに偏っている男女比とデザイン性の高く人気な制服だ。
デザイン性の高い制服が選択理由の一つだった女子生徒は少なくないはずだ。
そのせいで、うちのクラスの男女比は男子五人に女子三十五人という、もし俺がハーレム系主人公キャラだったらモテまくりだったのかな?
と、ありえない妄想をしてしまう程の偏り具合である。
ちなみに、伝説となった男子は四股をして、卒業式で全員に仕返しをされたらしい。
まあ、妥当だと思う。
「今日はいつにも増してすごい顔してるな」
隣で歩みながら、俺の顔をのぞき込む友人の総司。
俺はそれを無視して、進む足を速めた。
「どうかしたのか?・・・・もしかして!」
朝なのに何でこんなにテンション高いの?お前はニワトリか?
俺は寝不足で半分も開いていない目で声をいつもより低いトーンにして総司の顔を払う。
「少なくても、今お前が考えている様な事は何一つ無かったからな」
そう言い、水筒に入れてきたコーヒーを口に含み味わう。
「何だ。てっきりお前の兄ちゃんと妹ちゃんが義兄妹だったのを知って、眠れなかったのかと・・・」
総司は残念そうに、笑い混じりに言葉を続けた。
その時、俺は無意識に口に含んでいたコーヒーを霧状にして噴き出す。
それはまるで、流星が通る時の様な一瞬の出来事であった。
「うお!ど、どどうした!?過労死か?」
不吉なことを言うな!実際にそうなっちゃうかもしれないんだから!
咳き込み、ツッコミがままならない。
「な、えほっ!何でぇ、ぶほっ!それをぉ、ごほっ!ぶほっ!」
「餅つけぇ!」
餅をついてどうする!正月じゃねえぞ!
俺はお前に不意を突かれて、一息つくのも一苦労なんだよ。
少し足を止め、息が落ち着いた頃に会話と歩みを再開する。
「どうしたんだよ。いきなり」
「お前があんなこと言うからだよ」
さっきの出来事も重なり、テンション最底辺の俺はうつむき肩を落とす。
生徒玄関に入り、下駄箱から上履きを出して履き替える。
「冗談に決まってるだろ」
「冗談・・・そ、そうだよな。冗談だよな・・・・」
含みのある言い回しをする俺に総司の視線が刺さる。
総司はおもむろに真剣な面持ちで俺に問いかける。
「・・・まさか、お前・・・・・・」
「・・・その・・・・まさかだ」
その後、俺達に沈黙が訪れる。
両者は廊下の端で止まり、神妙な顔つきで窓の奥に覗く空を見つめる。
教室に向かう生徒達の喧騒が飛び交う廊下で感じたひとときの静寂。
その静寂を破ったのは・・・。
「オッハヨー!!」
「ふぐぁ!!!???」
聞き覚えのある女声と総司の腹から押し出されたカエルの様な声だった。
総司の腹に肘を入れて、足下に這いつくばらせた女子生徒は金髪ロングの髪を揺らし、ブレザーとスカートひるがえす。
彼女の胸囲的な力がこの制服のポテンシャルを引き出している。
足下の総司から視線を女子生徒にゆっくり移す。
「おはよ、夏樹」
「お、おはよう。美咲」
戸惑う俺、足下に転がる親友、親友に一発入れた幼馴染み。
人の少なくなった廊下で拡がる、謎の光景を遠い目で見つめる。
兄さんがヤンデレ妹を愛しすぎている 浅田 時雨 @74932015
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