第2話 親父の言葉は軽くて重い
家事を終え、窓から見える景色はほぼ真っ暗で、月の優しい光が世界を照らす。
シンプルな自分の部屋に立ち尽くし、スマホを耳に当てる。
俺は電話の主に、疑問を投げかける。
「親父。何の用だ?」
「なんだ~。久し振りに我が息子の声を聞こうと電話したのに、そのドライな声は」
親父の声は笑い混じりで、なんかチャラい。
「いや、先月も電話してきたろ・・・」
「あれ?そうだっけ?」
「・・はぁ。そんなことより何の用?また、せんべいを送れば良いのか?」
「いや、まだそっちは大丈夫だ。今日電話したのは、大事な話があるからだ」
急に親父の声色が真剣になった。
「もしかして、帰って来るのか!?」
「いや、そっちはしばらく無い。それよりも重要なことだ」
「何だ、その重要なことって?」
俺の質問の後、数秒間沈黙があり、次の親父の言葉は親父の電話越しの深呼吸が聞こえたすぐ後だった。
「・・・あのな、夏樹。お前達三人は本当の兄弟じゃないんだ」
「・・・・・」
「・・・驚くのも分かるけど、落ち着いて聞いてくれ・・・あの」
「やっぱりぃぃー!」
俺は近所迷惑になる程の声で叫んだ。
「えっ?えっ、気付いていたのか?」
「・・・気づくだろ。親父の血液型はAB型だろ?で、俺の記憶だと母さんはA型だろ?」
「ああ」
「俺はA型。冬花はAB型。春斗はO型。常識的に考えて、そう思うだろ」
実の兄だったら、O型は普通あり得ないだろう。
「マジかよ・・・」
「何で、今その話をしようと思ったんだよ」
「・・・なんとなく、そろそろ言うべきかなって思ってな」
うちの親父は優柔不断だな。
「・・・まぁいいや。やっぱり、三兄弟の内俺だけ、血が繋がってなかったんだな」
「えっ?」
「へっ?」
親父の返した言葉にふ抜けた声で返す。
「いや、お前らの内で血が繋がってないのは・・・・春斗だぞ」
「・・・・・」
「春斗が俺の連れ子で、お前と冬花が母さんの連れ子だったんだ」
「・・・・・」
俺の脳内で、ビッグバンのようななにかが起こった。
「・・・お、おーい。夏樹くーん?」
「それ・・・春斗と冬花には言った?」
「いや、まだだ」
「絶対にあの二人には言わないでくれ」
「あ、え、なん」
「絶対に!!」
親父の台詞を強引に切り、最後の言葉を言い、電話を切る。
俺の中では、血のつながりの事を知った時よりも複雑な感情が渦巻いていた。
その時の表情は笑顔では無かったはずだ。
混乱する思考を投げ捨てるように、ベッドに体を投げる。
肉体的、精神的の疲れで眠気が訪れるが、なかなか寝付くことが出来無かった。
不安が砂時計の様に僅かながらも確実に溜まって行く。
兄妹の愛情、俺の心労。
友との会話は現実に。
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