第5話 投稿小説とウィスキー

 投稿小説とウィスキーは似ている気がする、と言う話。


 いや、こんな書き出しをすると『読み物と飲み物の区別もつかないとは、遂に政宗は狂ったか』と仰る向きもあろうかと思いますが、そうでは無く。


 まずは聞いて欲しい。ウィスキーの話を。


 私は一時期、ウィスキーにハマってしまった時期がありまして、それはもう色々なものをノベツクマナク飲んだりもしておりました。特に好んだのはスコッチのシングルモルトで、それもアイラモルトを飲みに一年程のバー通い。


 いや、こんな事を言うと『やはり政宗は老年であったか。きっと老後の手慰みに小説でも書いているに違いない』と仰る向きもあろうかと思いますが、そうでは無く。


 実はまだ女子高生なんです。趣味はガトリング砲の近接掃射。


 さておき。


 皆さんは、ウィスキーと言う読み物、もとい飲み物がどの様に作られるかご存知でしょうか。例えば「ラフ〇イグ10年」と書かれたボトル。これは『ラフ〇イグ蒸留所で10年間熟成させたお酒だけをブレンドして作りましたよ』と言う意味です。


 ここで、小説風に「時を遡ること10年前」としましょう。


 今から10年前、大麦を原料としたウィスキーの「原酒」は、幾つもの樽に詰められました。10年後の出荷を待ち、熟成を経る為に。では10年後に出荷しようとなった時、どの樽のお酒も全て均一な味で、全て混ぜれば商品が出来上がるのかと言うと左に非ず。それぞれ、樽の中身には個性があるのです。


 中には味が劣化してしまい、処分されてしまう樽もある。

 味は悪く無いけれど、あまりにも個性的過ぎてブレンドから外されてしまう樽もある。

 良い感じに仕上がりまくって、あと10年位は熟成させても良いんじゃ無いかと言う樽もある。


 そう考えると、不思議な事が一つあります。毎年、膨大な量が出荷されるラフ〇イグ10年。そんなに色々な樽があるのに、どうして同じ味わいを毎年保てるのか。


 ここで登場するのが、ブレンダーと言う役割です。


 特に「マスター・ブレンダー」と言われる方は、そのウィスキーの味と香りを決定づけます。個性豊かな樽達を見事にブレンドさせ、毎年同じ味と香りを保って出荷させていくのです。


 ここまでが、いわゆる蒸留所が「公式に販売している」ウィスキーの話。


 ここで語るべきは「公式なものでは無い」ウィスキーなのです。


 世の中には蒸留所以外にも、ウィスキーを販売する人達がいます。一般に「ボトラーズ」とも言われる人達です。


 例えば「ラフ〇イグ3年」と言う銘柄があるとしましょう。

 ラフ〇イグ蒸留所はそんな商品は販売しません。これは、ボトラーズと呼ばれる業者が、ラフ〇イグ蒸留所で『この樽おもしろそう!』と言って、まだ3年しか熟成させていないけれど、樽ごと買い取ってしまうのです。そしてそれを瓶に詰めて販売します。


 他にも「ラフ〇イグ10年 マスカットフィニッシュ」と言う銘柄。

 これも蒸留所からの販売ではありません。ボトラーズが『この樽おもしろそう!』と言って、8年ほど熟成している樽を買い取り、更には「マスカット酒」を作成した後の樽で2年もの間、独自に熟成させてから瓶に詰めて販売するのです。


 味わいや香りで言えば、蒸留所の販売するボトルは本当に洗練されて、いつも同じ想いを与えてくれます。


 けれど、ボトラーズのボトルには「公式な」お酒には無い魅力があります。


 尖っていて、クセが強くて、安定していなくて、合う人と合わない人がいて、けれども公式なボトルでは決して出会う事の無い魅力が。


 中には「今まで飲んできたどのお酒よりも美味しい」と、自分のレセプタにガッチリとはまってしまうボトルも、あるかも知れません。


 と、ここまでウィスキーの話をしてみて。


 今まで書く事ばかりで一杯いっぱいだったけれど、そんなボトルが沢山浮かんでいる世界が、このWebの海にはあるのだなと改めて感じた今日この頃でした。


 そして自分の描く物も、そうなれたらいいなぁ。


 と、こんな事を言うと『やはり政宗は(以下略

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