第27話 燃え盛るポスター
「けいこちゃんが描いたポスターが、消防署前に掲示されることになりました!」
朝の会で、まるで先生は自分のことのように大喜びで報告しました。
「けいこちゃん、おめでとう!」
「すごいね~。さすがだよ」
クラスの仲間からの拍手や祝福に、けいこちゃんは嬉しくなりました。
「みんな、ありがとう!」
今日の放課後、クラスのみんなは小学校の近くにある消防署に集まっていました。もちろん、けいこちゃんも自分の作品を見に来ていました。
「この赤い炎が、かっこいいよな!」
「上手!」
「きれいに描けているねー」
たくさん誉められて、けいこちゃんは照れています。
「……そ、そんなことないって……」
「そうそう! 全然そんなことねーよな!」
意地悪そうな声が耳に入り、けいこちゃんたちは後ろを振り向きました。
「ひろあきくん……」
「こんなケバケバした色の絵、嫌いだな~♪」
「おい、そんなこと言うなよ」
「そうよ! けいこちゃんに失礼じゃない!」
クラスメートたちに注意されても、ひろあきくんはニヤニヤしています。ひどい言葉は、まだまだ止まりません。
「何で泣きそうになるんだよ。お前が『そんなことない』って言ったんだろ? これしか取り柄がないくせに」
そう言われた直後、けいこちゃんは涙を流しながら走り出しました。
「あ、けいこちゃん!」
ひろあきくん以外のクラスの仲間は、けいこちゃんを追いました。
「みんなぁ~、マラソン頑張れよ~!」
クラスメートたちに、ひろあきくんはヘラヘラと手を降りました。
「……くっだらねー!」
消防士さんも、その他の誰もいないことを確認し、ひろあきくんはポスターが貼ってある掲示板をガンッ! と蹴りました。
「何がくだらない!」
「えっ?」
人が全然いないのに声をかけられ、ひろあきくんは驚きました。すると赤くて熱い何かが、ひろあきくんの片足に巻き付きました。
「あっつ! な、何だっ?」
その赤いものはグイッ! と強い力で、ひろあきくんを引っ張りました。
「うわぁー……」
ひろあきくんは、とある場所へ吸い込まれてしまいました。そしてすぐに、
「ギャアアアアアアアアアアッ!」
立派な炎が、ひろあきくんを迎えたのでした。炎の色は青に変化しています。
「これのどこが、くだらないんだい? けいこちゃんの情熱が籠ったポスターだぞ? ぼくは君なんか簡単に燃やせるくらいの強さを持っているんだぞ? くだらないのは貶している君の方じゃないか! どうだい、けいこちゃんから授かった炎の力は……って、もう消えちゃったかぁ~」
がっかりしたような言い方をしている炎ですが、本当は大満足でした。
けいこちゃんのポスターが掲示されてから、この町で火災は一度も起こらなくなりました。そして仲間に励まされ、けいこちゃんは絵を描き続けることを決意しました。
けいこちゃんが有名な画家になるのは、まだまだ先の話です。
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