第20話 カンチョー号、直撃!

「よし、できた!」

「おれも完成したぞ!」

「競争しようぜ!」


 男子三人組は、楽しそうに紙飛行機を作っていました。


「ちょっと、あんたたち! いい加減にしなさいよ!」

「うるせーな。邪魔するなよ」

「先生がいないからって、そんなこと授業中にやってもOKにはならないんだから!」


 先生は今、用事があって教室から離れています。クラスのみんなは、それぞれのグループで調べ学習の発表会の準備をしていました。しかし、一つのグループは「めんどくせーな」と言って遊び始めてしまったのです。


「先生がいなくても……みんな、きちんと準備ができると先生は信じているよ。もう六年生なんだから!」


 と、先生は外出前に目をキラキラさせながら言っていました。紙飛行機の三人は、そんな先生の期待を裏切ったのです。


「行くぞ~!」


 先生からのメッセージを、すっかり忘れた三人組。一斉に紙飛行機を飛ばすと……。


「きゃっ」

「うお!」


 それらは全て、発表のための資料を夢中になって作っていた、わかばちゃんのお尻に当たりました。


「ぶっ、あっはははははは……!」


 教室が凍りつく中、紙飛行機トリオは大爆笑しています。


「ケツ! 見事ケツに刺さった~! カンチョーだ~!」

「早く回収しよう! わかばの尻の臭い、嗅ごうぜ!」

「もしや、ついちまったか? うんこ!」

「っ!」


 下品な言葉を浴びたことで、わかばちゃんはショックを受けて教室へ飛び出してしまいました。


「わかちゃん!」


 紙飛行機トリオに注意していた女子は、グループの仲間と一緒に親友を追いかけました。


「何やってんだ、お前ら!」

「わかちゃんに謝りなよ!」

「これ、先生を裏切ったってことだよ?」


 教室にいる全員に咎められている紙飛行機トリオ。それでも彼らは、


「うるせーバカ共!」

「ケツなんか突き出しているから悪いんだろ!」

「もう外に行こうぜ!」


 自分たちが悪いことをしたなんて、全く思っていません。みんなに怒鳴った後、三人は紙飛行機を片手に出て行きました。


「うわー逆ギレとかダサッ……」

「あの三人どうする?」

「ほっとけ!」

「わかちゃんたちを待ちながら、準備を進めた方が良いよ」




 さて、外に出た紙飛行機トリオ。調子の方は、一体どうでしょうか。


「くっそー! わかばのケツのせいで全然ダメじゃねーか!」

「それ言うなら『くっせー!』だろ?」

「ギャハハ……」


 紙飛行機は不調ですが、三人は品のない話題で盛り上がっていました。


「なあ、もう紙飛行機なんてやめて違うことしようぜ」

「おっ、良いねぇ~」

「何する?」


 すっかり気が変わった三人は、その場に紙飛行機を捨てて歩き始めました。


「意見してきた奴ら、潰さね?」

「おし、やってやっか! まず誰いく?」

「あの女ったらし野郎か、わかばのグループ……」


 教室に戻ろうとしていたそのとき、一人の言葉がプッツンと切れてしまいました。


「うあっ……!」


 その男子は、がくんとその場に膝をつきました。


「おい、どうしたっ?」

「何がっ……!」


 その直後、他の二人も同じ体制になりました。三人は苦しそうに、お尻を手で押さえています。


「わかばちゃんや他のクラスメートに迷惑をかけ、ぼくたちをポイ捨てした罰だよ」

「……は……?」


 三人のお尻を突き刺したのは、彼らが捨てた三つの紙飛行機でした。紙飛行機は三人を残して「ゴミ箱、ゴミ箱……」とピュンッと、ものすごいスピードで飛んでいってしまいました。


「な、何だ今の……うっ!」

「てかトイレトイレ!」

「やばい! もう出る!」


 肛門に強い刺激を与えられた三人は、急いでトイレを目指して走り出しました。


「はあっ、はあっ……」

「う……!」

「早くしねーと……うわっ!」


 靴箱に到着し、三人は驚きました。そこにはクラスメートのみんなが揃っていました。一番前にいる、わかばちゃんの親友が叫びました。


「あんたたちを迎えたくなかったけど……わかちゃんに謝ってないから、早く戻って!」


 大勢に睨まれた三人は、恐怖で腰が抜けてしまいました。

 そして……。


「……何か臭くない?」

「うわっ、本当だ!」

「えっ、まさか……!」


 三人組は、やっと自分たちの行いを心から後悔し、反省しました。




「六年生にもなって何やってんだ!」


 学校に戻ってきた先生は、心もパンツも白くなった三人をきつく叱りました。

 その後、わかばちゃんは三人から謝罪されました。本当は許したくなかった、わかばちゃん。しかしクラスメート全員の前で、あれほどの醜態を晒してしまった彼らを許さないのは、さすがに鬼だろう……。そう思ったわかばちゃんにより、三人は許されたのでした。

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