第17話 折り紙、ダメ!
今日の天気は雨。なので、幼稚園のみんなは室内で遊んでいます。おままごと、読書、積み木、お絵描き、それからそれから……。
「先生は、お弁当の時間が終わったら出かけます。引き出しから折り紙を取って、遊んで良いからね。今日は特別に、一人三枚どうぞ」
みんなはいつも、お弁当が終わると先生から折り紙を一枚もらって何かを作っています。三枚も使えると聞いて、みんな大喜びでした。
「パーティーの輪っかの飾りのやつ! あれがどれぐらい長くできるか、やってみよう!」
「できたお花を白い紙にいっぱい貼って、お花畑を作ろうよ」
いつもより多く折り紙が使える、せっかくの機会。みんなそれぞれ、楽しく遊んでいます。そんな中で……。
「え、でも先生が使って良いって……」
「ダメ! 絶対ダメ! げんこつされちゃうからね!」
あきちゃんが折り紙を引き出しから取ろうとした途端、もえかちゃんが両手を出してストップしました。
「ダーメ! ダメダメ!」
「え~、ダメじゃないよ~」
「あれ、もえかちゃん。どうしたの?」
「あ、なっちゃん!」
もえかちゃんと一番の仲良しの、なっちゃんがやって来ました。
「あのね! あきちゃんが折り紙を欲張って使おうとしていたから、ダメって言っていたの!」
「もえかちゃん、良いんだよ? 今日は折り紙を三枚使っても」
「あ、そうだったんだ! じゃあ使おうかな~?」
「うん、使いなよ!」
何だ、もえかちゃんは知らなかっただけか……。
あきちゃんはホッとしました。そして、あきちゃんは引き出しから折り紙を取ろうとしましたが、
「あきちゃんは、ダメェ」
「えっ?」
なっちゃんは笑いながら、あきちゃんの手を抑えました。
「あきも折り紙やりたいな……」
「ふふっ、ダメェ」
なっちゃんが不気味な笑顔を浮かべていると、
「ダメ! ダメ! あきちゃんはやらない方が良い! 怒られる!」
もえかちゃんが両手でバッテンを作り、ものすごい勢いで、あきちゃんに言い寄ってきました。
「……分かった……」
あきちゃんは、しょんぼりして本棚の方へと歩いていきました。あきちゃんの背中を見ながら、もえかちゃんとなっちゃんは「やったね!」と小さな声で喜びました。
二人はただ、あきちゃんに意地悪をしただけだったのです。
「できたー!」
もえかちゃんは折り紙三枚を、全て鶴にしました。覚えたばかりだったので、とても作りたかったのです。それは、なっちゃんも一緒でした。
「ねぇ、もえかちゃん。あきちゃんの分の折り紙も使おう!」
「うん! もしバレたら先生には『あきちゃんがいらないって言ったから』って言おう!」
「あきちゃんが違うって言ったら、嘘吐きって言っちゃおう!」
「もえかたちの方が強いもんね!」
「二対一、だもんね!」
二人は大笑いしました。
「あ、おトイレ行こうか」
「なっちゃんも行くぅ」
「鶴、盗まれたら嫌だから持っていこう!」
「うん!」
鶴を全てポケットに詰め、二人はトイレに向かいました。
「全部空いているね、なっちゃん」
「珍しいね」
そう言いながら二人は、それぞれトイレへと入っていきました。その直後、
「ほら、こっちは三対一だぞ! どうだ!」
二人がポケットの中に入れていた折り鶴が出てきました。
「……ギャーッ!」
三羽の折り鶴が、一人に襲いかかりました。もえかちゃんも、なっちゃんも「痛い、痛い」と大泣きしました。
「どうしたのっ?」
隣の組の先生がトイレに駆けつけてきました。すると、ゆっくりと二つの戸が同時に開きました。
「……先生ぇ~……」
二人は先生に抱きつきましたが、先生は少し困ってしまいました。二人とも、おしっこを漏らしていたからです。
「本当なの! 鶴が、もえかをいじめたの!」
「なっちゃんも!」
「何を言っているの、いい加減にしなさい!」
着替えながら先生に話す二人。けれど、先生は全然信じませんでした。
先生がトイレを見に来たときには、もう鶴は元の姿に戻っていて、二人の体には傷も痛みも消えていたのです。
「あきちゃん、お花を作るの上手ね」
「ありがとう」
一方そのころ、あきちゃんは「お花畑、一緒に作ろうよ」と誘われて、三枚の折り紙で見事にきれいな花を作り上げました。あきちゃんは折り紙が大得意なのです。
翌日、あきちゃんへの意地悪は仲間のみんなによって先生に全て伝わり、二人は叱られました。隣の先生によって、おしっこを漏らしたことも知らされました。また、二人はずっとトイレで鶴に襲われたことを話しているので、みんなから「変な子たち!」と言われました。もえかちゃんも、なっちゃんも、恥ずかしくて毎日つらい思いをしていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。