第3話 花は生きている

「ちょっと朝田くん! あけみちゃんにまかせっきりでしょ!」


 お花係は花壇に水をまいたり、花瓶の水を変えたりするのが仕事。しかし朝田くんは、それらを全くしていません。


「いーじゃん。あいつがぜーんぶ、やってくれるんだもん!」

「あんたが全然やらないからでしょ!」


 朝田くんは、あけみちゃんの友達の注意を気にせず、外でじょうろに水を入れているあけみちゃんに見向きもせずに教室を出ました。するとそのとき。


「今すぐ校庭の花壇の前に来い!」


 朝田くんの耳に、聞き慣れない声が入ってきました。


「え?」


 誰の声か分かりませんが、朝田くんは、とりあえず校庭へ向かいました。怒っている声が怖かったのです。




 朝田くんが花壇の前に着くと、そこには誰もいませんでした。


「何だよ、誰もいないじゃん!」

「いるぞ! ぼくらが!」

「へっ?」


 また聞き覚えのない声。朝田くんが驚いていると、


「あけみちゃんとぼくらに、よくもひどいことをしてくれているな!」

「ひっ……ギャーッ!」


 花壇の花たちがニョキニョキと伸び、朝田くんに襲いかかりました。朝田くんは体を巻きつかれたり、葉でぶたれたりと、花たちに痛めつけられています。


「痛いっ! 痛いよぅ……」

「ぼくらが元気なのは、あけみちゃんのおかげだ! あけみちゃんに意地悪したら、ぼくらが許さないぞ!」

「分かった、分かったよ! ごめんなさい!」


 朝田くんが謝ると、花たちは元に戻りました。朝田くんの体も傷一つ残っていません。


「あれ、朝田くん!」


 あけみちゃんが、じょうろを持って花壇へやって来ました。そして朝田くんは言いました。


「今までごめん! 手伝うよ!」


 それからお花係は、いつも二人で協力するようになりました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る