第2話 悪口の病気

「うわ、あいつ変な顔!」

「すっげぇデブだな、あの女」

「このグループって、みんなバカじゃん」


 石川くんは、いつも悪口を言っています。とても楽しそうです。しかし彼のクラスメートは、ちっとも楽しくありません。

 ある日、石川くんは学校に忘れ物をしました。宿題の漢字プリントです。


「これじゃあ宿題できねーよ!」


 気が荒い石川くんは大声を出して、学校へ向かいました。

 ぷりぷりして教室へ入った石川くんは、バタンッとドアを開けました。すると、クラスメート全員が揃っていました。


「お前ら、まだいたのかよ!」


 驚く石川くん。その後、


「うるさいんだよ、君」


 クラスメートの一人が言いました。


「あ?」


 石川くんは、さらに不機嫌になりました。石川くんが毎日いじめている気弱な男子が、急に強気になったのです。しかし石川くんへの言葉はまだ止まりません。


「いつも意地悪しやがって」

「悪口ばっかりでムカつく」

「どうしてそんなにひどいの」

「うるさいぞ、お前ら……ギャアアアア!」


 石川くんの耳の中に、みんなの言葉が入ってきました。石川くんは悪口で体が苦しくなってきました。


「やめろ、お前ら……」

「やめない。君が悪口をやめてくれなかったから」


 みんなの悪口でいっぱいになった石川くんは倒れてしまいました。やがて先生がやって来て、石川くんを病院へ連れて行きました。




 石川くんは病院へ行きましたが、悪口の詰まった体は治りませんでした。石川くんは耳も口も悪口で塞がってしまったので、これからずっと、お話をすることも、聞くこともできなくなりました。また石川くんは病気がひどく、もう登校できません。

 石川くんの病気について先生から聞いた児童たちは大喜び。

 これでもう意地悪されない!

 石川くんをかわいそうだと思うクラスメイトは、一人もいなかったのでした。

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