第2話 大失敗
人には消し去りたい過去って1つは有るものですよね?これを読んで下さっている皆さんはどうですか?
本当、今思えば何であんなバカな行動したんだろうと私は後悔するばかり。
今回はそんな消し去りたい過去のお話です。
◆◇◆◇◆◇
小学生の頃は学校のクラスでいろんな係りが決められていた。私の学校ではそれぞれの係りに「⚪️⚪️委員」と名付けられているものが多かった気がする。
4~5人の班(グループ)に分かれそれぞれの班の【班長】や、気分の悪い子や怪我をした子を保健室に連れていったりする【保健委員】。花の水やりをする【美化委員】など、さまざまな委員があり、一人一人に必ず役割があった。
その中でも高学年にしか出来ない【放送委員】というものもあった。
放送委員は校内放送を担当していて、放送委員全員を曜日ごとに役割分担をして、朝、昼、下校時の校内放送を担っていた。
小学校5年生の頃の私はその放送委員を担当していた。
同じクラスからは私を合わせ4人の放送委員がいたが全員が女の子。
決められた曜日に一緒に役割を果たす仲間たちだ。
担当の曜日の日は、色々と忙しかった。
朝は普段より少し早めに登校して、朝の音楽を流さなくてはならない。そして始業5~10分前には音楽を終わらせ、自分の教室に戻って授業をうける。
お昼は早々に給食を食べ終えてから、お昼の放送で自主企画のクイズ大会やらカラオケ大会を開いた放送を流す。
放送の司会者は私たち放送委員。
そしてクイズや、カラオケに出てもらうのは1年生~6年生の全クラスの中から選ばれたクラスの代表者数名。
出演交渉も私達、放送委員の仕事だった。
放課後は下校の時間に音楽を流して、校内や校庭に残っている生徒に向けて
「下校の時刻になりました。まだ校内に残っている生徒は速やかに下校しましょう。」
と下校を促すアナウンスを放送していた。
日々の仕事はそれほど難しい事ではなかったが、放送委員には年に1度の大きな仕事がやってくる。
運動会だ。
運動会の各競技の司会進行という大きな舞台が待ち構えているのだ。
当然のごとく、私にもある競技の司会進行の役割を任された。音響担当とマイクを使って司会進行をする2人ペアのうち、マイクを使った司会進行役を私は任されることになった。
私が任されたある競技とは教員の玉入れ競争。
「次の競技は先生方による玉入れ競争です。」
とうとう始まった。
出だしは順調!
「赤組白組お互いに頑張って下さい。」
「白組がリードしています。」
「赤組の先生方頑張って下さい。」
なんのトラブルもなく進行していく玉入れ。
負けるものかと頑張っている先生方。そしてそれを応援する生徒や保護者たち。
皆、それぞれの場所でとても盛り上がっていた。
ピッピッピーーーーッ!
競技も終盤に差し掛かり、どちらが優勢なのか判らなくなってきた頃、競技終了の笛がなった。
さて、これからが大詰め。
籠に入った玉を数えていく。
「それでは数を数えていきます。太鼓の音と共に玉を空に向かって打ち上げて下さい。それではいきます。」
そして数を数え始める私。。
この場合、大抵の人は「ひとつ、ふたつ、みっつ………」と数を数えるだろう。私ももちろんそのつもりでいた。だが、私の口から出たのは…
「
………─────っ!?
間違えた。
大いに間違えた。
ひとつ、ふたつ、と数えるつもりが、『いち、にぃ、』と数えてしまったのだ。
別に『いち、にぃ、さん…』でも間違いではないのだから、後々冷静になって考えてみればそれほど気にする程の事ではないとは思う。だが『ひとつ、ふたつ』と数えなきゃいけないと思い込んでいた私は、そこで一気にパニックになってしまった。
『い~ち』と数えた後、間違いに気づきパニックになりながら、隣の音響担当の子に「間違えた!どうしよう!どうしよう!!!」と聞きながらも、既にドンッという太鼓の音と共に空高く玉が放り投げられているのを見て訂正出来ない事実に更にパニックに陥ってしまった。
だが、パニックに陥っても競技の進行を中断するわけにはいかない、という思いだけはしっかりしていた。そのため、
「
と、そのままパニックになりながらも数を数えることは忘れなかった。
だが同時に間違えたままの数え方で進行しなければならなくなり、更にどうすればいいのか分からなくなっていた。
「に~い」と数えたあとも、左右をキョロキョロして「どうしよう!どうしよう!!」と誰かに助けを求める。
もちろん助けてくれる人なんて誰もいるはずもない。そうこうしてるうちに、再び太鼓の音と共に玉が宙を舞う。そして、
「
更に間違ったまま突き進んでいく。
いっそこの競技を始めからやり直したいと思い、頭を抱えながら机に突っ伏し「あ゛ぁぁぁぁ~~~!!」と、声にならない呻き声を上げて悶絶をしていた。
だが時間が巻き戻るはずもなく無情にも太鼓の音はなり、玉は空高く上がる。そして競技はどんどん進行していく。
「
とうとう「4」まで数えてしまった。
だが、ここでとんでもないことが起きてしまった。いや、起きてしまったと言うか起こしてしまった。
私の中で起きてたパニックがとうとう限界を越えてしまったのだ。越えると言うか突き抜けるというか……
その結果、
「
……やってしまった……
数え方を途中で変更してしまったのだ。
何を考えていたのか自分でも分からない。「
私が数えかたを変更した事により、会場中がザワザワとしだした。生徒も教師もそして、保護者たちも。
ザワザワしていた会場の空気を察して、
(あっ………ヤっちまった……)
そう思ったが後の祭りだ。もうどうにでもなれ的な気持ちだった。そして素知らぬ顔をして「
数を数えてる間、会場中のざわめきは収まらなかった。
競技が終わり放送室代わりののテントを出る時も、周りに居た人たちにニヤニヤと言うか生暖かい目で見られていたので、早々にその場を立ち去ったのだが、立ち去った先でも同じ様な視線を投げ掛けられたので、何処に居ても居心地が悪かった。
ことわざで穴が有ったら入りたいとはよく言うが、まさにその時の私はそんな心境だった。
全校生徒+その保護者の前でとんでもない大恥をかいてしまったが、終わったものは仕方ない。早々にこの事は忘れようと思った。
そしてその後は何事もなく、運動会は終わっていった。
◆◇◆◇◆◇
後日、運動会での大失態がだいぶ風化しかけていた時だ。
算数の授業の時、担任の先生が突然、
「○○(私の名前)!いいかぁ?数を数えるぞぉ~!
と、聞いてきた。
もう、やめて!と思いながら顔を隠したが、おそらく暫くはこのネタでからかわれるのだろうなぁ…と悟った瞬間だった。
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