番長


おれは番長

すごく番長

上半身は番長

下半身は番長

生粋の番長

生まれた時から番長

サランラップに包まれて棄てられた番長

そこから奇跡的に生還した番長

周囲の者達は尊敬の念を込めてこう言う

「番長」

まず間違い無く番長

どのくらい番長かと言うと

スカイツリー三個分は番長

「番長か………」

おれはそう呟いた

自分で自分のことをそう呼ぶのも悪くなかった

番長であるおれの肌は潤っていた

「さすがは番長だな」

番長たるもの空気中の水分を顔面にたぐり寄せることなど造作もなかった

「おはようございます、粗大ごみさん」

登校中に下級生がおれに向かって朝の挨拶をした

「おう」

ふと疑問がよぎった

「おいお前いまなんて言った?」

「尊敬してます」

下級生はてけてけ走り去りながらこちらを振り返って言った

きちんと教育が行き届いてるな

空を見上げた

もはや太陽は自分のために輝いているとしか思えなかった

(今日の給食はなんだろうか?)

ふと思った

給食のことを思うといつも胸がときめいた

番長に与えられし給食、それはソフト麺がふさわしいと思った

教室に入ると授業はとっくに始まっていた

「おいっ、遅刻だぞ」

注意された

「はあ、でもおれ番長なんで」

「番長? なんだそれ? お前、馬鹿か?」

番長の威光がこいつには通用しなかった

心の中で処刑した

着席すると買ったばかりのシャーペンを取り出した

「シャーペンの本名は、シャープペンシルって言うんだぜ」

隣りの女に知識を披露した

そいつは欲情しているように思えた


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