スカウト


「きみ、豚の匂いがするね」

男に繁華街で声を掛けられた

ちょーショック!

そんなナンパのされ方って初めて

えっナンパじゃないの?

じゃあなんなの?

「エーブイ」

それに出演しないかというお誘いだった

エーブイなんて出ないよ!

軽薄そうな男はこう言った

「太めの女性を探してるんだけどなあ」

失礼だよあんた

ひとをまるで高速道路で横転したトラックの荷台から逃げて来たばかりみたいにさ

そりゃあ体重は若干オーバーしてるよ?

誰もいないエレベーターに乗り込んで警報がぎゃあぎゃあ鳴り出したのも一度や二度ではない

けどわたしはれっきとしたヒト科なんだよ

「おれ、豚、大好きなんだよね」

男は言った

そうなの?

時代は豚系女子を求めてる?

「甘辛いタレに絡めて食うと御飯、何杯でもいけるわ」

それ好きの意味、違うじゃん!

わたしは頭にきてその茶髪の若者を路上でひん剥くと早速、味見をし始めた

………この世界って終わってるね

都会の人々は洗練され過ぎていて誰もが無関心に通り過ぎて行った

そのおかげでかなりの部分を味わうことが出来たわけだが


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