初夏


初夏の

爽やかな風が

わたしの指と指の間を

そっとすり抜けて

海の方へと

向かってゆく

麦わら帽子を浅く被った

あの人が

振り返りとんでもない笑顔を見せつけるよ

ああ

信じられない

白馬に乗った王子様が

もうすぐここへやって来るんだよ

夏休み

わたしは既に宿題を終えて退屈だった

だから出掛けた

紫外線?

関係無いね

去年の夏はかけがえのない親友と片思いの人の譲り合いでマジギレ

「てめーのが似合うっつってんだろ!」

「ふざけんなボケナシュ!」

結局、どっちもまるで眼中に無くて笑りんこ

巨乳なら誰でもいいとか噂で聞いて最悪だぜ

でも自分の胸を見下ろして深い溜息

わたしたちには秒針しか見えていなかった

じゃあねって言って明日の朝までお別れ

その明日はどれだけ先なんだろうね

やって来た今年の夏は去年に負けないぐらい楽しい

わたしはまたあの人に会える

うわあって無免許で自転車を漕いでやっばあ汗が噴出

味なんかわかんない食べ物をもぐもぐする

あんまり見られたくないよ

わたしは思う

このままこんな風に

楽しく大人になっていくんだと

でもあなたはある日、新しい眼球を装着する

それは不可避


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