集中県道

集中県道

　私が住んでいる団地の近くを通る県道は事故が多発する場所だ。

　昔から危険な道だと言われていて、自動車の教習所の教官によっては危険だからスピードを出し過ぎない様にと教えられることもある。

　私を担当した教官も何度か気を付ける様に言っていた。

　途中に道を二つに割る様に掘られたトンネルこそあるが見た目は至って普通の、どちらとも見通しが良くとても事故が多発している場所には見えない普通の県道だ。

　しかしそこでは事故が多発している。

　道はそれぞれ別の呼び名で警戒されている。

　十字路のある道はブドウ畑を降りた所。

　もう片方はトンネルを抜けてすぐの所に左側から合流して来る道のある場所は保育所を過ぎた所。

　どちらも見通しが良く、保育所を過ぎた所は確かにトンネルを出てすぐ左側に合流して来る道はあるがそこには一旦停止が描かれていているので、それこそ警戒するので普通は事故が起こりにくい様に見える。

　だけど保育所を過ぎた所では2回、死亡事故が起こっていてうち一件は即死だった程の大事故、そんな危険な場所だと有名なのにそこでは事故が良く起こっている。

　ぶどう畑を過ぎた所ははっきりと言って保育所を過ぎた所よりも圧倒的に見通しが良く酷く視界を遮る様な建物も街路樹も無く、左右の確認を忘れず無理な運転をしなければ事故はまず起きない場所だ。

　だというのに保育所を過ぎた所よりも圧倒的に事故が多発している。

　幼い頃から母に何度も気を付ける様に言われ、大人になり免許を取得した後も頻繁に母に注意され、知人も家族から注意する様に言われているのにそこでは事故が多発している。

　実際に私も何度か危ない場面に遭遇した。

　それは仕事へ行く為にブドウ畑を降りた所から県道を横切ろうとした時だ。

　原付に乗った私は目の前の対向車がウィンカーを出していない事から同じ様に県道を横切ろうとしているのだと思い、私は左右の確認をした後に直進した。

　対向車も私が見えていた筈で、何より後から来た私が左右を確認している間も動こうとしなかったのだ、だからそれは完全に虚を突かれた。

　対向車は右にハンドルを切った。　

　危うく私は横っ腹を盛大に普通車に勢いを付けて当てられる所だった。

　咄嗟にアクセルを全開にして駆け抜けたので、幸いにも当たる事は無かったが危うく石の下だった。

　そしてこれはほんの一部だ。

　私が通っていた中学の先生が前方不注意の車に当たられた事もあったし、忘れた頃に必ず事故が起きている。

　とても、とても見通しの良い場所なのに……。

　保育所を過ぎた所もまた同じ様に誰もが危険だと知っているのに、不注意な運転をする車が多い。

　教習所で危ないと教えられる場所なのに、そこでは不注意から起こる事故が多発している。

　それだけじゃない。

　その周辺では何かと痛ましい事件が何度も起きている。

　急な坂を自転車で降りていた子供が転倒して酷く、それこそ脳が漏れだす程の重傷を負った事件や、通学路だというのに猛スピードで細道を突っ走り子供をひき殺しかける事件や定期的に子供が車に当たられたり、当てられかけたりする事件がその県道の近くで頻繁に起こっている。

　親が口々に危ないと言っている。

　誰も彼もが危ないと言っている。

　だというのにその県道では忘れた頃にか、記憶が薄れる暇もなくか。

　何かと事故が起こっている。

　今日も、もしかしたら事故が起こっているかもしれない。

　今日も、もしかしたら事故が起こり掛けているかもしれない。

　もしかしたら、明日に起こるかもしれない。　

　ブドウ畑を下りた所と、保育所を過ぎた所で……。