ナ○ツ風 江戸川乱歩漫才
A「この間、ヤホーを検索していたら」
B「ヤフーね」
A「凄い日本人ミステリ作家を発見してしまいまして」
B「誰ですか?」
A「皆さん、
B「その人以上に凄いミステリ作家は日本にいないよ! 日本ミステリの父だぞ!」
A「江戸川乱歩は、大正12年に『二千円銅貨』でデビューしまして」
B「『
A「以降、数多くの名作を世に送り出していくわけです。『赤いヘア』とかね」
B「『赤い部屋』だろ! 声優の野沢雅子のことかよ」
A「おめえらがそんなふうに、たいくつがどんなもんだがをよく知ってると思ってっからよ、オラは今夜この席に列して、オラのへんてこな身のうえ話を話そうと決心したんだぞ」
B「悟空を『赤い部屋』に連れてくるな! その人の身のうえ話っていったら、とんでもない事件ばっかりだぞ!」
A「この作品は『シンギュラリティーの犯罪』を扱った傑作と言われているんですよね」
B「『プロバビリティーの犯罪』だ! 時代を先取りしすぎでしょ」
A「あとは、『路地裏の散歩者』」
B「『屋根裏の散歩者』だ! 路地裏を散歩したって全然まともだよ。
A「他には、『押尾と旅する男』」
B「『押絵と旅する男』だ! 押尾コータローの全国ツアーに帯同するスタッフの話か」
A「それと、『空気椅子』」
B「『人間椅子』だよ!」
A「人間が椅子になるっていう、恐ろしい話でね」
B「人間が椅子になるって、そういうことじゃないから! 空気椅子は、膝を曲げてあたかも椅子に座っている体勢を維持するっていう、きついやつでしょ」
A「(空気椅子の体勢をしながら)『奥様の方では、少しも御存じのない男から、突然、此様な無躾な御手紙を、差上げます罪を、幾重にもお許し下さいませ……』」
B「空気椅子をしたまま、あの手記を全部読み上げるのは無理でしょ」
A「『ちょっと法師』も好きですね」
B「……『
A「あと、忘れちゃいけないのは、『少年探偵団シリーズ』ですよ」
B「そうですね。現在でもオマージュ作品が作られ続ける、日本文学史に残る名シリーズです」
A「小林少年率いる少年探偵団と、
B「
A「戦う相手が、怪人二十面相ですよ」
B「こちらも文学史に残る名悪役ですね」
A「企てる犯罪が、また恐ろしくて、『どくいり きけん』というラベルを貼り付けた青酸入りチョコレートをばらまいたり――」
B「それは、グリコ・森永事件の『かい人21面相』だ! 若い人は知らないよ!」
A「多重解決ミステリの
B「それは、アントニー・バークリーの『毒入りチョコレート事件』だ! 二十面相は毒入りチョコと関係ないの!」
A「二十面相が、毎回色々な怪人に扮するのも魅力的でしたね」
B「子供心をくすぐられますね。少年探偵団ものに限らず、乱歩作品には大勢の怪人が出てきます」
A「ええ、僕が好きな怪人はですね、『青銅の魔人』『妖人ゴング』『暗黒星』『黄金仮面』『影男』『蜘蛛男』『死神カメレオン』『テレビバエ』『カブト虫ルパン』――」
B「待て待て! 最後のほう、仮面ライダーに出てくるほうの怪人になってるから。それと、『テレビバエ』とか『カブト虫ルパン』が好きって。マニアックすぎでしょ」
A「『テレビバエ』って、いいですよね。今の時代に復活するなら、『インスタバエ』ですか?」
B「『テレビバエ』の『バエ』って、その『映え』じゃねえよ。テレビと昆虫のハエの合成怪人なんだよ」
A「『カブト虫ルパン』もいいですよね」
B「あらためて考えると、凄い取り合わせですね」
A「乱歩作品に、少年探偵団もので『赤いカブトムシ』っていうのがありますし、『黄金仮面』にルパンも出てきますから、乱歩作品にインスパイアされて
B「それはないから。というか、カブト虫ルパンの誕生に、石ノ森
A「ちなみに、『黄金仮面』は『秘密戦隊ゴレンジャー』に同じ名前の怪人が出てきます」
B「特撮の話は、もういいって。乱歩の話題は!」
A「少年探偵団は基本、子供向けのシリーズにしか出て来ないんですけれど、団長の小林くんだけは、大人向けの作品にも登場するんですよね」
B「そうです。小林少年こと小林
A「大人顔負けの大活躍でしたよね……『そうか! 地獄の道化師の正体が分かったぞ! ようし、この腕時計型麻酔銃で小五郎のおっちゃんを眠らせて――』」
B「そんなシーンないから! それはもう、小林くんのほうが主役じゃねえか!」
A「
B「目羅博士、そんなキャラじゃねえよ。人殺しだから」
A「こんなに凄い乱歩なんですけれど、実は、やらかしたことがありまして」
B「ああ、あの話ですね」
A「昭和8年に書き始めた『悪霊』という作品は、三回目を最後に連載が途絶してしまったんですね」
B「乱歩自身も無念だったでしょうね。乱歩は休載にあたって、『いつか稿を改めて発表したい』とお詫びの文章を掲載しましたが、結局続きが書かれることはなかったんですよね」
A「それに比べたらね」
B「何ですか?」
A「『次がシリーズ最終作』と宣言しておいて、最後のシリーズ作品刊行から七年以上(2019年現在)経った今でも、まだその『最終作』を発表していないことくらい、全然大したことじゃないですからね」
B「いきなり、誰を引き合いに出してるんだよ!」
A「せめてタイトルだけでも公表しておかないと、『〇〇館の殺人』ていう、めぼしい名前を誰かに先に使われてしまいますよ!(カメラに向かって)」
B「呼びかけるな! 失礼だろ!」
A「あと、乱歩といえばですね。『怪奇と幻想』というイメージが強いと思うんですけれど」
B「ええ、そうですね。有名な、乱歩のキャッチフレーズともいえる言葉もありますしね」
A「『うつし世はゆめ、夜のゆめみてねごと』」
B「『夜のゆめこそまこと』だ! それだと、現実逃避して夢を見てねごと言ってるだけでしょ! 駄目すぎるよ」
A「あまりにはっきりとしたねごとなので、そばにいる人が返事をすると、それにまた答えを返すというね」
B「それは『夢遊病者の死』に出てきた
A「とにかくですね、僕は乱歩は『怪奇と幻想』だけじゃないと言いたいんですよ」
B「そうですね。乱歩本人としても、ロジカルな本格ミステリ作品のほうも、もっと評価してほしいと思っていたでしょうね。乱歩はデビュー作の『二銭銅貨』の他にも『何者』とか、『恐ろしき錯誤』とか、優れた本格をたくさん書いているんですけれどね」
A「現代でも、凄い本格ミステリをたくさん書いてるのに、学園ホラーが代表作の作家とかいますからね」
B「誰のことを言ってるんだよ」
A「こんなに凄い乱歩、その影響力は国内に留まらないんです」
B「ええ、海外にもファンは大勢いるでしょう」
A「僕ですね、お前、乱歩のこと好きすぎだろ、って海外作家も見つけてしまいまして」
B「誰ですか」
A「エドガー・アラン・ポーっていう――」
B「おい!」
A「お前、そのペンネーム、絶対江戸川乱歩から取っただろって――」
B「逆だ! 逆! もういいよ」
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