ナ○ツ風 シャーロック・ホームズ漫才

A「この前、ヤホーで」

B「ヤフーね」

A「凄い名探偵を見つけてしまいまして」

B「誰ですか?」

A「シャーロック・ホームズってご存じですか皆さん?」

B「世界一有名な探偵だよ!」

A「この、シャーロック・ホームズ、1887年に『緋色の研究』に初登場して以来、世界中で大人気を博しまして、事務所が観光名所になっているくらいなんです。その住所が……」

B「有名ですよね」

A「ロンドンペーパー街221B」

B「ベーカー街だよ! 何だよその、写真を撮りまくるピンク色の夫妻が出没してそうな街」

A「様々な事件を解決してきました」

B「そうね」

A「代表的なものでは、『まだらのひも』」

B「名作ですよね」

A「ちょっとだけ内容を言ってもいいですか?」

B「ネタバレしない程度に紹介して」

A「まだらさんというホステスと同棲している男がいるんですが、これが甲斐性なしで全然働かない」

B「〈ひも〉って、そっちの〈ひも〉じゃねえよ! そもそもどんな話なんだよそれ!」

A「じゃあ、『六つのナポレオン』を」

B「今度は大丈夫?」

A「マジックナポレオンズに内乱が起きて、六つに分裂することに」

B「マジックナポレオンズ、二人しかいないから! 六つに分裂しようがないから!」

A「マジック性の違いでね」

B「音楽性の違いみたいに言うなよ」

A「あと私が好きなのは、『青い紅玉こうぎょく』」

B「これも名作ですね」

A「この作品、邦題がいくつかあるんです」

B「そうそう。原題の『紅玉』に当たる『カーバンクル(Carbuncle)』を何と訳すか諸説あるためですね」

A「他の邦題としては、『青いルビー』や『青いガーネット』」

B「ええ、ええ」

A「あと、藍井エイル。あおい輝彦」

B「それは芸能人の名前だ!」

A「私、『赤毛連盟』も好きです」

B「どんどん名作が出てきますね」

A「これも少しご紹介しても?」

B「ネタバレなしで」

A「ある人物のところに、『赤毛連盟』に入らないかという誘いが来るんですね。そこに示された入会条件というのが、実に奇妙なものだった。まず、燃えるような赤毛であること」

B「『赤毛連盟』ですからね」

A「さらに、ベテラン声優で、口癖が『オッス! オラ悟空!』であること」

B「それ野沢雅子! この世にひとりしか該当者がいないよ! あと『オッス! オラ悟空!』って別に野沢雅子の口癖じゃないからね。役の台詞だから」

A「ここがべぇカー街221Bか。オラ、わくわくしてきたぞ」

B「野沢雅子というか、悟空が依頼に来ちゃったよ! ベーカー街の『ベー』を悟空の訛りの『べぇ』で言うな!」

A「オッス、ホームズさん」

B「ついにご対面だ」

A「そっちがクリリン博士か」

B「ワトソンだよ!『ン』しか合ってねえじゃねえか!」

A「書いた人がですね、コナン・ドイル」

B「作者も有名ですね」

A「ものによっては、S・ドイルと表記されていることもありますね」

B「そうですね」

A「この『S』って、何のことか分かりますか?」

B「僕は知ってますけど、ご存じない方のために教えてさしあげて」

A「サドのSです」

B「違うわ! サー! サー・アーサー・コナン・ドイル! ドイルはナイトの称号を持ってるの! 何で筆名で自分の特殊な性癖を暴露してんだよ!」

A「ミステリ作家って奇特な人ばかりですから」

B「奇特というか変態だろ!」

A「他のミステリ作家もやればいいと思うんですよね」

B「どういうことだよ!」

A「S・アガサ・クリスティとか、M・ディクスン・カーとか」

B「お前のイメージを押しつけるな!」

A「S・綾辻行人とか、M・法月綸太郎とか」

B「だからお前の勝手なイメージだろ! 怒られるぞ!」

A「ドイル自身は、ホームズの大人気ぶりが不本意だったそうなんですね」

B「ドイル本人は歴史小説で評価されたいと思っていましたからね。本業とは別のものが評価を受けるって、そういうことは、ままありますよね」

A「凄い本格ミステリを何作も書いてるのに、一番の代表作が映画化やアニメ化もされて、ライトノベルレーベルでも再刊行された、学園ホラーになったとかね」

B「誰のこと言ってるんだよ」

A「見崎鳴みさきめいちゃんのフィギュアとか出たりしてね」

B「具体的な登場人物名を出すな!」

A「そこで、ドイルは『最後の事件』で、ホームズを殺してしまうんですよね」

B「はいはい、ライヘンバッハの滝に、宿敵モリアーティ教授もろとも転落してしまうという有名なエピソードです」

A「この結末に当時のファンが怒った」

B「当然でしょうね」

A「ブログ大炎上ですよ」(キーボードタイプの動きをしながら)

B「当時、ブログとかないから!」

A「コナン・ドイル逝ってよし」(キーボードタイプの動きをしながら)

B「だから、ないから。どうでもいいけど煽りの文句が古いな」

A「まだ19世紀でしたからね」

B「そういうことじゃねえよ!」

A「やむなくドイルは、ホームズを復活させることになりました」

B「そうなんです」

A「相当不本意だったでしょうね」

B「忸怩たるものがあったかもしれません」

A「ふざっけんなよ! ホームズを書けばいいんだろうが! クソが!」

B「そこまでケンカ腰だったかはどうか」

A「ほら! 新作だよ! お前ら、これが読みたかったんだろ! どうだ! ほらほら! このホームズが復活する新作、『空き家の冒険』を、お読み!」(鞭を振る仕草)

B「本当のサドになってるじゃねえか!」

A「私、この前、映像化されたホームズ作品を観まして」

B「ああ、はいはい、たくさんありますよね」

A「びっくりして」

B「何が?」

A「皆さんご存じでした? ホームズって、犬なんですよ」

B「はあ?」

A「ホームズだけじゃなくって、ワトソンも、モリアーティも、ハドソン婦人も、全員、犬」

B「お前が観たのは、宮崎アニメの『名探偵ホームズ』だ!」

A「私、人間だとばかり思って小説を読んでたから、驚愕の事実にびっくりして」

B「ホームズが犬なのは、あのアニメだけなの!」

A「じゃあ、『バスカビルの犬』って何なんだ? お前らがそもそも犬だろと、おかしいだろと」

B「おかしいのはお前だ!」

A「こういうの、叙述トリックっていうんですか?」

B「全然違うわ!」

A「ところで、私、さらにドSなミステリ作家を見つけてしまいまして」

B「何だよ」

A「SS・ヴァン・ダインってご存じですか?」

B「もういいよ」

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