第5話

No.5 私の場合。 滝沢 清香


初めてあった時から、気になる存在だった。

なんだか、笑顔が嘘臭かったから。

だから、最初は好きじゃなかった。いけ好かなかった。

一人称『僕』だし、むだに女の子に優しくしようとするし、可愛いとか綺麗とか、好きとか愛してるとか、軽率に言うから。

だんだんその気になって言ったんだよ。

貴方にその気はなさそうですけどね。


ほら今日も、先輩に夢中。


「おっはよーござーあーす。」

「おー、おはよーももちー」

「もー先輩、やめてくださいよーその呼び方ー。」

「仕方ないじゃん、この部活、あだ名で呼ぶ決まりだから(笑)」


そんな会話を嬉しそうに顔を綻ばせてする貴方。

なんだかむかつくわ。

私に気づくのはいつかしら。

しばらく気づかないの、知ってるけど。


「僕そんな可愛いキャラじゃないっすよ。」

「えー、かわいいよ?ももちー。」


相沢は、『桃』と呼ばれるのが嫌い。『ももちー』も嫌い。

だから、私は呼ばない。 『相沢』って呼ぶの。

時々嫌がらせで呼ぶけどね。

でも貴方は、先輩に呼ばれる時だけ、少し嬉しそうなの。

むかつく。私が呼んだ時は、嫌そうな顔するくせに。

ほんの少しだから、貴方は気づいていないのでしょうけど。


「オハヨ、相沢。」

「っはよーすももちー」

「おっはよー清香に萩ちゃん。」


あ、萩ちゃんにももちー呼びされて嫌な顔した。

一瞬。誰も気づかない。

私しか気づかない。

そのことに少し、嬉しくなった。


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