第8話 圭太の頼み
圭太が病院に来ると言ったのは、夕方だった。
ちょうど祝日で学校が休みだったこともあって、杏子と龍吾と綾香は、昼すぎから病院に集まっていた。
面会時間までの間、大きなクリスマスツリーがある病院のロビーで、圭太とおばあさんをちゃんと会わせるにはどうしたらいいか、ずっと考えていたけれど、三人ともいい考えは浮かばなかった。
「むりに名乗らせるのはやっぱりダメだ。今日のところは、顔を見せるだけでいいことにしようぜ」
「でもさ、おばあちゃんの病室に関係ない人が来たら変に思われちゃうでしょ? 圭太さんのこと聞かれたら、なんて紹介するの?」
綾香が腕組みをして二人を見回す。
「そうだね。じゃあ、あたしの従兄ってことにしようか? 病院で偶然会ったから連れてきた……とか?」
「うーん、ちょっと不自然な感じもするけど、まあいっか」
「シーナの従兄か。あれ……あの人、圭太さんじゃないか?」
龍吾の視線の先には、昨日と同じ緑色のダウンジャケットにジーンズ姿の青年が見えた。人目を気にしているみたいにうつむいて、受付の方に向かって歩いている。
「けっこう早かったな。行こうぜ!」
三人は圭太に駆けより、おばあさんの病室に案内した。
「こんにちは」
そっと病室のドアを開けると、まず三人が静かに中に入り、最後に圭太が入った。キヨさんに軽く会釈をする。
「あたしの従兄です」
杏子は聞かれる前にキヨさんに説明した。
キヨさんは会釈を返し、にっこり笑うとおばあさんの耳元に口をよせた。
「奥さま、ちいさなお友達がお見えですよ」
キヨさんの声が聞こえたのか、おばあさんがゆっくりと目を開けた。
「おばあちゃん、起きてたの?」
「昨日、杏子ちゃんたちが帰ったすぐ後に目が覚めてね、みんなに会えなかった事をとても残念がられてたのよ。今日は朝から気分もいいみたいで、みんなが来たら起こしてねって頼まれていたの」
キヨさんが説明しながら電動ベッドのスイッチを押して、おばあさんが話しやすいように少しだけ背中を起こしてくれた。
「来てくれてありがとね」
声は弱々しいものの、おばあさんの笑顔はすこしも変わらなかった。
「おばあちゃん……よかった」
「昨日はホントびっくりしたよ」
安心したように笑う三人の子供たちを嬉しそうに見まわしたおばあさんは、ドアの前に立つ青年に目を止めた。
「あの……あなたは?」
おばあさんの真っすぐな視線を受けて、青年は困ったように顔をふせた。
「あの、あたしの従兄なんです」
杏子はあわてて圭太のそばに寄った。
「杏子ちゃん、ぼくは外に出てるよ」
「えっ、ちょっと待って!」
「廊下で待ってるから」
「でも!」
杏子が圭太の腕をつかんで引き止めようとしたとき、ガラッとドアが開いた。黒いダウンジャケットの青年が、驚いたように目を見開くのが見えた。慎二だ。圭太も目を見開いたまま慎二を見つめている。
まさか本物とニセモノが鉢合わせしてしまうなんて、思ってもみなかった事態に、杏子はパニックをおこして、動けなかった。
「……圭太、おまえ、裏切ったな!」
「ちがうんだ、これには訳が……」
「ちっ、おぼえてろよ!」
「待てよ!」
走り去ってゆく慎二の後を追って、圭太も病室からかけ出した。
杏子たちはまだ、凍りついたように誰も口をきけない。
「いま……あの子は、圭太って言わなかった?」
最初に口を開いたのはおばあさんだった。
「杏子ちゃん、あなたが従兄だって言った人は、まさか……」
「ごめんなさい! 後でちゃんと説明しますから」
杏子はそれだけ言って病室を飛び出した。
圭太と慎二をさがさなくてはいけない。あの二人をさがして、ちゃんと説明しなくちゃいけない。それが、むりやり圭太とおばあさんを会わせた自分の義務だ。
夢中で走っているうちに、杏子は病院の裏にある駐車場に来ていた。
「そんなの信じられるわけないだろ! やっぱり金が欲しくなったんだろ!」
「違うんだ! ぼくは名乗るつもりなんかないんだ。ただ、あの子がどうしても会ってくれって言うから……」
慎二と圭太の声がした。
杏子が声の方へ走ってゆくと、病院の建物の影で、慎二が圭太のジャケットのえりをつかみあげていた。
「やめてっ、あたしが頼んだんです! おばあちゃんに会ってくれってあたしが頼んだから、圭太さんは仕方なく来てくれたんです」
杏子は、慎二の黒いダウンジャケットにしがみついた。
「圭太さんは会うだけだって、絶対に名乗らないって言いました。だから、あたしの従兄だっておばあちゃんには言ったんです。本当です!」
「本当だよ。ぼくは約束どおり、母さんのブローチだけ返してもらえればいいんだ」
「それは、ちゃんと返すって言っただろうが!」
慎二の手がゆるみ、そのすきに、圭太は慎二からはなれて呼吸を整えた。
杏子も、慎二のダウンジャケットから手を放した。
「圭太さんはあなたを裏切ってません。それは信じてください。でも……あたしは、おばあちゃんにウソをつきたくないの。いまからでも本当のことを言ってくれませんか?」
「うるせぇ! おまえには関係ないだろ!」
慎二は怒鳴った。
そのとき、スーツ姿の男が近づいてきた。
「いまの話、どういうことか説明してくれないか、圭太くん」
男の目はまっすぐ慎二を見つめている。
「あんた……弁護士の」
慎二の顔がみるみる青ざめてゆく。
「車の中で聞いてしまったんだが、きみは、圭太くんじゃないのか?」
「………」
「もう一度、ちゃんと話してくれないか?」
慎二は弁護士さんから目をそらし、圭太の顔をキッとにらみつけると、そのまま走り去ってしまった。
「ごめん、杏子ちゃん」
圭太もそれだけ言うと、慎二の後を追うように走って行ってしまった。
この日から、慎二は行方をくらました。自宅にも帰らず、弁護士さんも連絡が取れなくなったのだという。
「シーナのせいじゃないよ」
龍吾は何度もそう言ってなぐさめてくれた。
「あたしも、杏ちゃんのせいじゃないと思うわ。だって、まさかあのタイミングでニセモノが来るなんて思わないもの」
綾香もそう言ってくれたけれど、おばあさんを傷つけてしまったのではないかと思うと、杏子は不安と後悔で胸がいっぱいだった。
あの日は、弁護士さんとおばあさんに、杏子たちが本物の圭太を見つけた経緯を簡単に説明したけれど、翌日から杏子はおばあさんのお見舞いに行くことが出来なくなった。
「おれと森沢が、ちゃんと説明しといたから大丈夫だよ。シーナがウソをついたのは、圭太さんに頼まれたからだし、圭太さんを説得してから本当のことを話すつもりだったんだって、おばあちゃんもわかってくれたよ」
「うん、ありがとう。おばあちゃんは、圭太さんが名前を売ったこと、ショックじゃなかったかな?」
杏子がそう聞くと、綾香が人さし指を口元にあてて首をかしげる。
「それは驚いただろうけど、あたしが見るかぎり、おばあちゃんは本物の圭太さんが来てくれたことを、喜んでたみたいに見えたよ」
「そうだよ。だいたいシーナがいなかったら、本物の圭太さんがいることだってわからなかったんだからさ、あいつがニセモノだってわかっただけでもお手柄なんだぜ!」
龍吾が「グッジョブだぞ」と言いながら親指を立てた。
三人は病院の広いロビーを横切り、三階にあるおばあさんの病室に向かっていた。
龍吾と綾香は、毎日おばあさんの病室に顔を出していたけれど、杏子は三日ぶりの病院だった。
クリスマスが終わったばかりだというのに、病院は早くもお正月の飾りつけになっている。杏子たち小学生も冬休みに入っていた。
「こんにちは!」
綾香が明るい声をかけながら病室に入ってゆく。
龍吾の後から杏子が病室に入って行くと、おばあさんと目があった。おばあさんは穏やかな顔で、杏子に笑いかけてくれた。
「こんにちは、おばあちゃん」
杏子は勇気をふり絞って声をかけた。この前より顔色も良くなっているし、元気そうなことに安心する。
「杏子ちゃん、来てくれたのね」
「うん……元気そうで良かった」
この三日間、ずっと心にのしかかっていた不安が消えてゆき、杏子も笑顔を浮かべた。
「ずっとお礼を言いたかったのよ。杏子ちゃんがあの子を見つけてくれたこと、私は本当に感謝してるの。あの日は、杏子ちゃんの従兄だと紹介されたけど、私あの子の顔を見てね、娘を思い出したの」
「娘さんを?」
「そうよ。どことなく似ていたのよ、娘に」
そう言ったおばあさんの顔は、見たこともないほど嬉しそうだった。
「そっか、そうだよな。じゃあ、もしあの慎二ってヤツが来なかったとしても、おばあちゃんにはバレてたのかも知れないよな。なっ?」
「えっ、うん」
龍吾があまりにもグイグイ同意を求めて来るので、杏子は思わずうなずいてしまった。
「龍吾くんの言う通りよ。私は本当のことが分かって、良かったと思っているの」
おばあさんは優しく微笑む。
「でもさぁ、慎二って人の行方がわからないのは不安よね」
今まで黙っていた綾香が、深刻な声でそう言った。
「圭太さんもあれから連絡ないんでしょ? 杏ちゃん、探してあげないの?」
綾香の真っすぐな視線が、杏子に向けられた。
慎二の行方をさがすなんて、考えてもみなかったことを綾香に言われて、杏子は答えることが出来なかった。
「じゃあね龍吾くん。また明日!」
病院のロビーを出たところで、綾香が手を振った。
「えっ……ああ、じゃあな」
龍吾は、すこし驚いたようにうなずく。
「バイバイ」
杏子も綾香に並んで、龍吾に手を振った。
『杏ちゃん、帰りに二人だけで話せるかな?』
おばあちゃんの病室を出てすぐ、杏子の携帯に綾香からのメッセージが届いた。
なんの話かわからなかったけれど、きっと龍吾には聞かせたくない話なのだろう。さっきの綾香の射るような視線を思い出し、杏子は覚悟を決めた。
「綾ちゃん、話ってなに?」
「ここじゃ心配だから、うちの近くの公園に行きましょう」
綾香はそう言って、すたすたと駐輪場まで歩いて行ってしまう。
(なにが心配なんだろう?)
杏子は仕方なく、綾香の後について彼女の家の近くにある公園まで自転車をこいで行ったけれど、その間ずっと胃のあたりがモヤモヤして気分が悪かった。
公園に自転車を止めて周りに誰もいないことを確かめると、綾香は杏子に振り返りニッコリと笑った。
「あたしね、杏ちゃんに黙ってたことがあるの」
綾香の笑顔を見て、杏子の心臓が大きく脈打った。自分が綾香に隠し事をしている覚えはあるけれど、綾香が自分に黙っていた事なんてあるのだろうか。
「あのね、スイミングに杏ちゃんのウワサ流したの、あれ、あたしなの」
屈託のない笑顔のまま、綾香はそう言った。
「えっ?」
一瞬、何のことだかわからなかった。
「杏ちゃん、気がついてなかったの? あたしのこと、一度も疑わなかった?」
「えっ、うん。どうして今頃って思ったけど、まさか綾ちゃんが流したとは思わなかった」
杏子は無表情のまま答えた。綾香がずっと笑顔のままだから、どう対応していいのかわからない。
ふふっ、と綾香は笑った。
「杏ちゃんがいけないのよ。あたしより目立っちゃいけないのに、あたしより先に進級するし、龍吾くんと仲良くなろうとするんだもん」
「綾ちゃん……あたし、確かに進級はしたけど、べつに龍吾くんと仲良くなろうとしてないよ。初めてしゃべったのだって、あのウワサが広まってからだったじゃない」
杏子が反論すると、綾香の顔からスッと笑顔が消えた。
「ホントよね。あたしの流した噂が、龍吾くんと杏ちゃんが話すきっかけになっちゃうなんて、最悪よね。あたし……知ってるのよ。杏ちゃんが二度目に圭太さんに会いに行ったとき、龍吾くんも一緒だったんでしょ? あたしに内緒で、二人で行ったんでしょ?」
思いがけない綾香の言葉に、杏子は思わず息を飲んだ。
「それは、違うよ。あたしが圭太さんのコンビニに行ったときには、もう龍吾くんが先に来てたんだよ。黙ってたのは悪かったけど、綾ちゃんを仲間はずれにしたんじゃないの。気を悪くするかも知れないと思って、偶然会ったことは龍吾くんにも黙っててもらったの」
「最っ低!」
吐き出すように、綾香は言葉を投げつける。
「綾ちゃん……」
「ねぇ! まさかとは思うけど、あたしが本気であんたの友達になったとか、思ってないよね? いつもひとりぼっちで可哀そうだから、声をかけてあげただけなんだよ。毎日おばあちゃんの所に行ってるのだって、龍吾くんがいるからよ。いい気にならないでね!」
綾香の口調はだんだんと激しくなっていく。
「だいたい杏ちゃんは何なの? 学校ではみんなとろくに喋らないで、一人でクラスの雰囲気悪くしてるくせにさぁ、龍吾くんとは普通に喋っちゃって。みんなが気味悪がってるからなんて、自分に都合の良い言い訳じゃない! 自分からみんなと仲良くする努力もしないでさ、あんたが自分から壁を作ってるだけじゃない!」
綾香の言葉は、杏子の一番痛い部分に食い込んだ。
「うん……わかってるよ」
杏子はうつむいたまま答えた。
「わかってるの? そうなんだ。じゃあ、あたしが本当は杏ちゃんのことを嫌いだってこともわかってるよね? あたしは杏ちゃんのこと、いつでもシカトできるんだよ。そしたら、あんたはまた一人ぼっちじゃん」
「……わかってる」
杏子はもう一度うなずいた。
綾香の言葉は全部本当のことで、杏子に否定できるものは一つもない。でも、自分の気持ちだけは、綾香に知っていて欲しかった。
だから、杏子は唇を強く噛んだまま顔を上げた。
「それでもあたしは……綾ちゃんに感謝してるよ。どんな理由でも構わない。綾ちゃんが声をかけてくれたことで、あたしは本当に救われたの。頭ではわかってても、怖かった。誰かに声をかける勇気がなかったの。まわりの人がみんなあたしのことを敵視してるように見えて、自分ではどうすることも出来なかったの。そんなあたしに声をかけてくれたのは、綾ちゃんだけだったんだもん!」
杏子の答えを聞くなり、綾香の表情がみるみる険しくなってくる。
「バッカじゃないの!」
綾香は杏子に背中を向けると、自転車を勢いよく動かした。スタンドが土を蹴って跳ね上がる。
「言っとくけど、これ以上あんたのくだらないさがし物に、龍吾くんを巻き込まないでね。それから、このこと龍吾くんに話したらシカトだから!」
綾香はそう言うと、薄暗くなった住宅街に消えて行った。
杏子は大きく息を吐くと、その場に座り込んだ。立てた膝を抱え込むように腕を回し、その中に顔をうずめる。
「きっつ……」
綾香のストレートな言葉は、杏子の心の奥までしみ込んでいた。
● ●
気まずい思いを抱えたまま、杏子は翌日も病院に向かった。
綾香に会ったら、どんな顔をして話をすればいいのだろう。
出来れば会いたくなかったけれど、おばあさんの病室のドアを開けると、すでに龍吾と綾香が来ていた。
「こんにちは」
そっとつぶやくようにあいさつして部屋に入る。
「杏子ちゃん、いらっしゃい」
「おっす、シーナ!」
おばあさんと龍吾が笑顔を向けてくれる。
「杏ちゃん遅ーい! 今日は来ないのかと思っちゃった」
綾香はいつもと変わらない口調だったけれど、杏子を見る目は冷たい。
「ごめんごめん」
綾香と龍吾がおばあさんと楽しそうに話をしている姿を、杏子は壁際で静かに見ていた。
コンコン、と遠慮がちにドアがノックされた。
ゆっくりと開いたドアから入って来たのは、緑色のダウンジャケットを着た青年だった。
「圭太さん!」
杏子は思わず大声を上げた。
「すみません、お邪魔してもいいですか?」
圭太は部屋にいる子供たちを見回してから、最後にベッドに身を起こしているおばあさんを見つめた。
「ええ……ええ、いいですとも」
おばあさんはにっこりと笑った。
「あの、今日はちゃんと謝りたくて来ました。ぼくと、慎二のことを許して下さい」
圭太はベッドの横に立ち、頭を下げた。
「ぼくと慎二のしたことは、たしかに悪いことです。でも慎二は、あなたの孫になることで、人生を変えたかったんだと思います。ぼくは両親を早くに亡くしたけど、幸せな思い出がたくさんあった。でも慎二は、両親がいても家族バラバラで、ずっと孤独だったんです」
圭太は自分のことよりも、慎二のことを心配しているようだ。
「大丈夫よ、警察には届けていないわ」
おばあさんはそう言って、ほほ笑みをうかべた。
「えっ?」
圭太は驚いたように顔を上げた。
「なにも盗られたわけじゃないし、間違いは誰にでもあるわ。私も昔、娘の結婚に反対したことをとても悔やんでいるの。本当にごめんなさいね。あなたにも余計な苦労をさせてしまったわね」
「いえ……ぼくは」
圭太はすこし戸惑ったような顔をしてから、笑みを浮かべた。
「杏子ちゃんが、ぼくの小学生の頃の写真を持って来たときは、本当に驚きました。母さんがあなたに写真を送っていたなんて知らなかったから……」
「一度だけ、手紙が来たの。いま思えば、娘は自分の死期をさとって、私に手紙を送って来たのかも知れないわね。住所がなくて、消印を頼りにさがしたのだけど、見つけられなかったの。あのとき見つけて会いに行っていたらね……」
おばあさんはとても後悔しているように、苦しそうな顔をしていた。
「あの……母さんは、恨んでなんかいませんでした。ぼくが勝手にすねて、自分の名前を売ったりしたけど、母さんは一度も、あなたのことを恨んだりしていませんでした」
「ありがとう……」
おばあさんは静かに涙をこぼした。
ハンカチで涙をぬぐうおばあさんから、圭太は杏子の方へ振り返った。
「杏子ちゃん、実は、きみに頼みがあるんだけど」
圭太は、壁ぎわに立つ杏子に歩み寄った。
「……えっ?」
いきなり声をかけられて、杏子は驚いた。
「慎二をさがしたいんだ。あいつの住んでるアパートには何度も行ったし、電話もしたけど全然つながらないんだ。一緒にさがしてくれないか?」
「それは……いいですけど」
杏子は圭太の顔をじっと見上げた。
圭太は杏子の能力を認めた上で、一緒にさがして欲しいと言っている。こんな依頼を受けるのは初めてだった。
「今日はもう遅いから、明日でもいいかな? 午前中から捜したいんだけど」
「はい……大丈夫です」
「おれも行く! なっ、いいだろ?」
龍吾が話に割り込んで来る。
「龍吾くんが行くなら、あたしも行く!」
綾香も龍吾に並ぶ。
「ちょっと待ってくれよ。いくらなんでも、小学生を三人も連れ歩くのは嫌だよ」
圭太は困ったように頭をかいた。
「杏子ちゃんのことは、責任を持って昼過ぎには返すようにするから、きみたちは、おばあさんのお見舞いに行ってくれないか?」
「ちぇ、仕方ないなぁ」
圭太の頼みに、龍吾はしぶしぶうなずいた。
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