Epilogue
水晶に手をかざす。
淡い光を放ち、水晶は未来を映し出す。
死という最悪の未来は回避された。
的中率100パーセントを誇った占いは今回初めて外れた。
けれど、そんなことは些細なこと。沙月は自分の占いにプライドがない。
外れたところで気にしない。むしろ悪い未来なら外れてくれた方がいい。
しかし、未来はそう簡単には変えることができない。
建ち並ぶ高層ビルは人間界。
至るところから黒煙が上がっている。
倒壊したビル群の中、損壊を逃れたビルの屋上。
二人が対峙している。
一人は冬夜。
もう一人は真白。
互いに視線を交わす。
何処か悲しげな瞳で。
「冬夜! もう終わりにしよう」
「駄目だ。ここで退いたら、今までの犠牲が無駄になる。オレは――」
――二人が同時に駆け出す。
必殺の一撃。
その先には死が待ち受ける。
「……――」
儚げに笑った冬夜と、瞳を潤ませた真白。
刹那。
冬夜が何を言ったのかは分からない。
それでも、その言葉がその先の未来を引き寄せたのだろう。
安らかな顔で眠る冬夜を抱き寄せて、真白は一人悲しみに暮れていた。
水晶を覗き込むのをやめる。
未来は何一つ好転していない。
むしろ悪化している。
大切な人同士で傷つけ合う。
そんな未来は変えられるのだろうか。
変えられるか、ではない。変えなくてはいけないのだ。
占いはあくまで占い。予知ではない。
だから、絶対ではないはずだ。
この占いの結果(未来)は自分の胸に仕舞っておいた方がいいのか?
一人でこの未来に抗うのは難しいか……
だが、伝えることも憚られる。みんなの悲しむ顔は見たくない。
だから沙月は、未来ではなく現在を取る。
未来は現在の積み重ねだから。
未来は変わっていくものだと信じて。
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