十一章

第124話

 三階に上り、右手に折れる。

 曲がったすぐのところに、エドワードとロドリックが待っていた。


「来ると思っていたよ」


 ロドリックが言う。

 得意げに頬を歪ませた。


「早速行くとしよう。時間は限られているからな」


 ロドリックは部屋に三人を招き入れる。

 狭い部屋に見えた。

 だが、それは部屋を囲む本棚のせいだとすぐに分かった。


 ドアから見て正面には窓がある。

 左右には背の高い本棚が壁に沿って並んでいる。

 棚の中には革表紙の本がいくつも並んでいた。


 部屋の中央には来客用のソファと机がある。

 窓辺には仕事用の机が置かれている。

 サーシャに負けず劣らず、机の上には資料と本が積んであった。


 三人が入ったところで、ロドリックがドアを閉める。

 ドアには、金獅子の装飾が付けられている。

 ロドリックはポケットからプレートを取り出す。

 金獅子に飲み込ませ、ドアを開いた。


 そこには大学の廊下はなく、薄暗い廊下が真っ直ぐに伸びていた。


 ロドリックは迷うことなく廊下を進んでいく。

 その後をジャックとユミル、エドワードが続く。


 廊下は左右に分かれ。それぞれの突き当たりにはドアがある。

 ロドリックは右へ進み、突き当たりのドアを開けた。


 まばゆいほどの光が、扉の向こう側から差し込んできた。


 手を庇代わりに掲げ、ジャックはドアを抜ける。

 光になれ始めると、ようやくあたりの景色が見えてきた。


 そこは緑あふれる森の中だった。

 木の葉が風に揺れ、さらさらと音をたててこすりあう。

 木々の間からは木漏れ日がもれ、葉が揺れるたびに陰たちが踊っている。

 地面には綺麗に切り揃えられていた芝が、青々とした色をたたえていた。


「ようこそ。我が村へ。何もないところだが、ゆっくりしてくれ」


 ロドリックは振り返りながら言った。

 エルフたちが家々を行き交い、時々こちらに目を向ける。

 警戒、と言うより物珍しい何かを見るような、好奇の目だった。


 村の家は、土造のものがほとんどだった。

 茶色の土の中にまだらに黒い物体が顔を出し、どことなく毒々しい色に見える。

 近寄ってそれをみると、黒く色づいた石だ。

 細かく、そして小さな石粒が陽光に当てられてきらきらと光り輝いていた。


 土造の家屋は全部で十棟。

 四隅が角張った物。

 丸みのある物。

 蜷局状の貝殻のような物。


 一軒一軒の家の形状は様々、多彩な形をした家々が軒を連ねている。


「ひとまず、村長に会いに行こう。気難しい方でな、あまり機嫌をそこねるような真似はしないでくれ」

 

 そういうとロドリックの足は再び歩みを進めた。

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