第4話
帝国領とエルフヘイムの国境。
そこには巨木が生い茂る広大な太古の森がある。
「任務ご苦労様です。団長殿」
関所に立つ兵士からねぎらいの言葉を受け、エドワードは馬上から軽く手を挙げて応える。
エドワード・ブラウン。
五十人の兵士達で構成されるドレーク騎士団の団長である。
齢三十にして数々の戦場をくぐり抜けてきた歴戦の兵だ。彼の経験を物語るその肉体は、屈強な兵士達の中にいてもなお抜きん出ている。
「副長。あとどれくらいで最初の村につく」
坊主頭をなでながら、エドワードは副長に訊ねる。
「もうすぐです。このまま街道に沿って行くと、森に入る細い小道が出るはずです。そこを行けば村につきます」
彼らに与えられた任務は帝国領内にあるエルフ族の村の巡回、および出現する魔物の討伐だった。
なんとか日が沈むまでには村に到着したかったが、すでに太陽は巨木の陰に隠れ、暗闇が早足に森を包んでいく。
宿場町で一泊していきたいところだが、あいにくまだ最初の村だ。周るべき村がまだまだ残っている状況で、あまり時間を費やす訳にはいかない。
明かりが途切れ、ランタンの心もとない明かりが懸命に暗闇を照らし出す。
客引きの声も人々のざわめきもなくなり、馬の足音が寂しく響く。
ようやく街道をそれる道を見つけた。
人の手が加えられていない自然に出来た道、獣道と呼ぶに相応しいような道だ。
巨木の根が地面のそこかしこから現れていて、落ちた葉が道々につもっている。気にしていなければ、あっけなく通り過ぎてしまっていただろう。
馬に乗ったままでは少々狭い道だが、通れないほどではない。エドワードを先頭に一列になって進んでいくと、副長が言葉を発した。
「団長、何か聞こえませんか」
「ん?」
耳を澄ます。
木と木の間をくぐり抜け、確かにその音はエドワードの耳に届いた。
「全員、戦闘の用意をしろ」
エドワードはそう号令を掛けると、馬に発破をかけ獣道を駆け抜ける。
聞こえてきたもの。それは悲鳴だった。
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