症状4『自傷』

「アァッ!!」


襖の向こうから、声が聞こえ、

部下の3人が覗き込む。


「どうしたんですか?」


「ライオン様!?」


「何か問題でも?」


座禅を組み、凛と佇むライオンの姿があった。


「大丈夫だよ。何でもない」



「そう・・・、ですか」


「失礼しました...」


襖をゆっくりと閉めた。


気配が無くなったのを確かめると、

ライオンは自身の手首を見つめた。


ちょっと深く切り過ぎたかもしれない。


赤く、血が滲む。



その線をなぞる様に、舌で血を舐める。



「美味しいなぁ...」


次々に体の中から、外へと排出される赤い液体。

それをゆっくりと、味わう。


左右の腕には傷の痕。

まあサンドスターのおかげで2、3日すれば、完全に治る。


以前に、ちょっとしたことで指を切ったことがあった。

その時ヘラジカが舐めてくれた。


不思議に思った。


私の血はそんなに美味しいのかと。

ふと気になり、自ら皮膚を裂き、血を舐めたのだ。


それ以来、癖になった。



何とも言えない味。唯一無二の味。


最初のうちはそれで満足していた。


しかし、日に日にある欲求を抱き始めた。


“ヘラジカに血を舐めてほしい”



私の血を味わってほしい。




「なあ、お前達」


部下を呼びつけ、命じた。


「ツキノワ、オーロックス、ヘラジカを呼んできてくれるか」



二人は了承した。

さあ、これであとは。


「オリックス」


「なんですか?ライオン様」


「君のその槍で私を突き刺してよ」


「・・・はい?」


にわかに信じられないその言葉に、驚きを隠せない。


「早く刺せっ...」


「刺せって・・・、そんなことしたら・・・」


「貸せっ」


躊躇うオリックスに嫌気がさし、槍を奪い取る。


「あっ!!」


彼女は息を飲んだ。

槍を自分で腹に突き刺したのだ。


白いシャツが赤く滲む。


「もっと・・・」


痛いとか、そういうセリフではなく、その血を求める声が出た。



「いやっ!!!!」






「おーい、ライオンなんだ?勝負でもしたいのか?」


ヘラジカが襖を開けた。

そして、目に飛び込んで来た光景に、言葉を失う。



「はぁぁ...」


隅では怯えたようにオリックスが座り込んでいた。



「ヘラ...、ジカ...」


全身真っ赤な血の色に染まったライオンが右手を上げた。

周囲には、血の池が出来上がっている。


「おいっ・・・!!何なんだこれは!?」






「な・・・、めて・・・」



微笑みを浮かべて要求した。

唯一無二の味を、堪能してと。

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