第171話 ダンジョン亭深太郎 完

 斬る! 斬る! 斬る!

 深太郎、久々にテンションアゲリシャスです!!


 いやぁ~いいですね『OKEANOSオケアノス』!


 次世代ARがここまでとは……みなさん、想像以上ですよこれは!

 例えば「斬る時に稲妻のエフェクトが欲しい!」とすると、演出素材から探して適用するといった感じになります。


 操作方法も、目の前に現れるコントロールパネルをタップするだけでメニューが表示されます。

 直感的なUIですので、初見でも十分に操作できますよ~!


 そして、肝心のダンジョンですが……

 まずは、1~5階は洞窟タイプですね。特に目新しさは無く、オーソドックスな造りです。

 ん~ヒカリゴケはちょっとベタすぎるかなぁ~(^_^;

 ちなみにGKは、マッド・グリズリーでした。


 次に6~10階は迷宮タイプです。

 以前、仲間から聞いた話だと、ヴァンパイア・ロードが出たらしいのですが、恐らくガセネタでしょう。(その仲間はラキモンまでいると言ってましたw ガセは結構多いのです……😥 情報を精査する力が問われる時代ですからね💪 深太郎のオンラインサロンでは、厳選した確かな情報だけ共有させてもらってます!(o゜▽゜)o)


 この規模のダンジョンで発生するとは思えませんし、召喚したとなると恐ろしくコストがかかるはず。賢明な経営者なら中位種のヴァンパイアを召喚するでしょうね。


 さてさて、これで最後ですね。

 11~15階は密林タイプになっております。


 何だか普通かな~っと思っていたら、なんと、途中で珍しいものを発見しました!

 深太郎は知人の話でしか聞いたことがなかったのですが、ケットシーパレスというものがありました。

 これはケットシーが造るといわれていて、中々のレアもの……!

 小さなお城のような建物で、女性人気も高そうですね。

 いやぁ~よもやよもやですよ!(高ポイントです)


 あと、5階から別ルートもありました。

 氷原タイプのフロアとメルトゴーレムの待つ灼熱の洞窟。

 うん、バランスは悪くないと思います。


 後は……最下層のベビーベロス。

 これは驚きました。

 もちろん、逃げましたけどw(深太郎はあくまでレビュワーなので😅)


 変なコボルトもいましたね。かなり老体のようでした。

 ちなみに老体のモンスがいるということは、かなり環境が良いってことですからね、こちらもポイントは高いです♪


 てなわけで、意外や意外!

 正直、全く期待してなかったのですが、良い意味で裏切られました!

 ざっくり回っただけでも、バランス良く楽しめます!


 そして、今回の一番の収穫はなんと言っても看板娘の花さんです!(マジカワです💘)

 帰りの時に受け付けしてもらったんですが、芸能人顔負けです!

 ちょっと店主さん、こういうのは早く言ってよ~!(滝汗)


 深太郎は普段、例え企業のお偉いさんや経営者相手でも、自分から名乗ったり、名刺を渡すことはないのですが……はい、負けましたw


「あの、とても良いダンジョンでした。私、こういう者でして」

「ダンジョン亭深太郎……さん? どうもありがとうございます」

「あれ? 知りません? いやぁ、業界では結構知られていると思ってたんですけどねぇ、まだまだ力不足なのかなぁ~ww」

「あ……すみません、あまり詳しくなくて……店長に……」

「いえいえ! 貴方にお聞きしたいんですが、ちなみにこの後お時間ありますか? 良かったらお茶でもごちそうしますので、ゆっくりお話を聞けたら、なんて……」

「すみません、ちょっと……」

「ああ、いいんですいいんです! 女には無理強いしない主義だからね! 次回来たときに期待してますよ?(ウインク)」

「……えっと、それは……」

「あれ? ハズしたかなぁ? あははは! それとも彼氏さんに怒られちゃうのかな? 僕は気にしないタイプですけどね~(^▽^) おっと、あんま言うとセクハラになっちゃうなwww」


 いやぁ、困った顔もかわいいかわいい。

 すっかりファンになっちゃいましたw


 と、ここまでは良かったのですが……

 なんとここの店主がねぇ……、残念ですが冗談の通じない方だったようで。


「お客様、申し訳ないのですが二度と来ないでもらえます?」

「は?」

「お代は結構ですので、二度と来ないでください」

「いやいや、お前、俺が誰かわかってる?」

「知りませんが関係ないです。お引き取りください」


 中々、強気な店主です。

 平和主義な深太郎としては事を大きくしたくないのですが……。


「私はダンジョンレビュアーです、これ、記事にしますよ? いいんですか?」

「どうぞ、お好きなように。お引き取りを」


 いやぁ~店主、若い若いw

 一瞬、業界から消そうかとも思ったんですが、深太郎は大人ですからね。


「わかりました、帰ればいいんでしょ? ですが、こんな経営を続けていると痛い目を見ますよ?」

「ご忠告感謝します、お引き取りを」

「はは、今は何を言っても無駄なのかな? まぁ、気が変わったら名刺見て連絡くださいよ、相談に乗りますんで。じゃあ、後悔しないようにね」


 とまあ、最後は深太郎が折れる形で矛を収めました。

 一昔前ならパンパンですけどねww💪💪

 深太郎も丸くなったもんです(深太郎の昔を知ってる人なら信じられないと思う)


 まあ、これとダンジョンの評価は別ですので。

 さ、お待ちかねの評価は……「D++」です!


 これから伸びていくダンジョンでしょうし、店主さんのお手並み拝見ですね♪


 以上、ダンジョン亭深太郎でした、潜潜もぐもぐ~w



 * * *



「さっきの人、怖かったです」

 花さんが眉根を寄せる。


「うん、途中から俺も怖かったな……」


 二人でカウンター岩に置かれた名刺を見つめる。


「これ、捨てた方がいいな」


 俺は名刺を手に取って細かく破って捨てる。


「まあ、ダンクロの時も変な人はいたから、接客業だと仕方ないよね」

「そうですよね、すみません、もっと上手く対応できたら良かったんですけど……」

「いやいや、花さんは何も悪くないから大丈夫! 俺ももう少し冷静に対応できたら良かったかな」

「ジョーンさんは毅然としてて……格好よかったですけど……」

「え……⁉」


 思わず顔が熱くなった。

 き、聞き間違いじゃないよね……。


「あ、あははは! そ、そうかなぁ~! さ、さて、気持ちを切り替えて頑張ろう!」

「はい、がんばります!」



 * * *



「は? 何この記事?」


 カフェで仕事をしていた紅小谷がノートPCの画面を睨んだ。


「ダンジョン亭……深太郎? 誰よ、このカス……」


 おもむろにスマホを手に取り、紅小谷は電話を掛けた。


「あ、もしもし、あのさー、ダンジョン亭深太郎って知ってる?」

『はい、ウチも何本か記事書いてもらってるライターさんですね』


「ふぅん、そうなの、じゃあ、今月で全部契約切ってくれる?」

『え⁉ な、何かありました⁉』


「ああ、大丈夫大丈夫、来月から書かせなきゃOKだから、お願いね、はいー」


 通話を終えた紅小谷が、またどこかへ電話を掛けた。


「もしもし? うん、久しぶり、あのさー、ダンジョン亭深太郎って知ってる? うん、あれ『さんダ』関連は全部NGだから、うん、じゃあ、またねー」


 紅小谷は次々と電話を掛けていく。


「もっしー、うん、あのさーダンジョン亭深太郎って……」

「ダンジョン亭深太郎NGで」

「NGリスト追加お願いしまーす、ダンジョン亭……」



 その日を境にブログは閉鎖し、ダンジョン亭深太郎の名を業界で聞くことは無くなったという……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る