第74話 進行再開
「おい、ちっと魔力通してみろ。大丈夫だとは思うが、どっか不具合があるとヤバいからな」
「分かった」
ミーナが杖を持ち、静かに目を閉じた。
「……よし、問題ねぇな」
ミーナが目を開けた。
「な、なにこれ、メチャクチャ使いやすいよ!!」
俺は苦笑した。
「お前、そんなあり合わせで満足するなよ。もっとブチ込めるぜ!!」
ミーナが笑った。
「もう決めた。コイツ以外の杖は使わん!!」
「ったく、しょうがねえな。どうなっても知らねぇからな」
俺は苦笑した。
「さて、野郎ども準備出来たか。先いくぞ!!」
ミーシャが元気に叫んだ。
「よし、グダグダいってねぇでいくか」
「そうこなくっちゃな!!」
国王が息を吐いた。
「今度はちゃんといえよ。堪らねぇぜ!!」
「おう、回復手がまともになったからな!!」
ミーナが笑った。
「はぁ、無茶しやがるからなぁ。ったく!!」
ミーシャが進み始め、俺たちは地下四階の奥に進んだ。
「本当に魔物しかいないぞ。暴れるにはいいんだけどねぇ……」
ミーシャがクリップボードを見ながら頭を掻いた。
「これじゃ先生の出番がねぇぜ。ロマンもねぇよ」
俺はため息を吐いた。
「馬鹿野郎、これはこれでロマンだぜ。ひたすら叩くってのもよ!!」
国王が笑った。
「馬鹿野郎、戦場じゃねぇんだからよ。これじゃつまらねぇぜ。まあ、この先どうなってるかみるか。これじゃ、ここで遊ぶ意味がねぇよ」
「贅沢な野郎だな!!」
ミーシャが息を吐いた。
「そうだね、この先に期待だな。これじゃ、とても興味を持てないぜ!!」
「おいおい、罠を期待してるのかよ!!」
国王が笑った。
「先生の独壇場だぜ。それに、これなかったらどうやって遊ぶんだよ」
「……完全に罠の使い方を間違えてるぜ」
ミーシャがゆっくり進み、俺たちは警戒しながらついていった。
「へぇ……」
ミーシャがそっと床にしゃがんだ。
「おっと」
俺は呪文を唱え、ミーシャの周りに結界を展開した。
「先生が作動したぞ。ミーナ、こっちにも結界を張れ。多分、くるぜ」
「さ、作動って……」
ミーナが呪文を唱え、結界を展開した。
「なんだおい、楽しい事でもあるのか?」
「おう、構えとけ。火傷くらいは覚悟しろ」
「え?」
ミーナが声を上げた。
「俺は先生を死守するので精一杯だ。この結界じゃ分からんぞ。お前も覚悟だけは決めろ」
「うわ、なに?」
カチッと微かな音が聞こえ、横の壁から炎が吹き出した。
「うぉ、いいねぇ!!」
「だろ、これがねぇとよ!!」
「あちぃ!?」
さらに、通路の正面から無数の矢が飛んできた。
「乗ってきたじゃねぇか!!」
「これはこの結界で弾けるぜ。問題ねぇ」
「こ、怖いぞ!?」
国王が笑った。
「おい、今度はなんだ?」
「知らねぇよ、罠に聞いてくれ」
「喜ぶな!!」
ミーシャがこっちを振り向いた。
「もう大丈夫だぞ。大した事ねぇ!!」
「んだよ、これで終わりかよ。ショボいな」
「なに、もっとすげぇのあるのか?」
「いい加減にしろ!!」
ミーナが怒鳴った。
「怒るなよ。こんなのザラだろ。楽しまねぇとよ」
「だ、ダメだ、この神経には勝てん」
ミーナが頭を抱えた。
「……こ、この階段。気合い入ってやがるぜ!!」
地下五階に向かう階段で、ミーシャがニヤッとした。
「ほら、始まったぞ。俺たちは休憩だ。当分、終わらねぇぞ」
「おいおい、ほったらかしかよ!!」
国王が弓を構えた。
「おい、やめろ。邪魔するとブチキレるぞ」
「い、いいのかよ……」
国王は弓を下ろした。
「それでいい、あとは勝手にやらせとけ。やっと遊べるって、気合い入ってるからよ」
「……だから、罠で遊ぶなっての」
ミーナが俺を抱きかかえた。
「なに?」
「留守番じゃ、なんかあったらブチ殺されるぜ!!」
ミーナが笑った。
「過保護だよ、こんな猫野郎。ったく、甘ったれるんじゃねぇ」
国王が笑った。
「なんか知らねぇけどよ、こうしたがる連中が多くてな。今じゃ抱き枕みてぇだぜ」
「お前なんか抱いたら、妙な猫アレルギーになっちまうよ!!」
「……酷い」
ミーナは苦笑して俺の背を撫でた。
「ったく、急に大事にされるようになったな。こうなってからは、ひでぇもんだったからな!!」
「まあ、そんな事もあったかな」
俺は笑った。
「……はぁ、尊敬していたのになぁ。魔法使いとしての腕はトップレベルだしねぇ」
ミーナがため息を吐いた。
「まあ、色々幻滅しちまっただろうが、敬意は払っていいと思うぜ。それくらいの事はやってるからな」
「まぁな、あのジジイがいなかったら、この国は成り立たねぇからな!!」
国王が笑った。
「だからこそなんだけどなぁ、どんなに立派な事をやってても、これやったらまずいでしょ。人としてどうかと思うなぁ」
ミーナが俺の背に手を置いた。
「人だからこういう事やっちまうんだよ。俺だって危ねぇぞ。なまじ、知識をブチ込まれてるからな」
ミーナが首根っこを掴んだ。
「そのための飼い主だ。変な事を考えたら、ここ掴めば猫は大人しくなるからね!!」
「ったく、これだから猫好きはよ。ちゃんと知ってやがるぜ!!」
国王が笑った。
「馬鹿野郎、飼い慣らされてるんじゃねぇよ。ったく、随分丸くなったねぇ」
「まあ、飼い猫も悪くねぇぜ。相手選ばねぇと、エラい目に遭うがよ!!」
俺は苦笑した。
「なんだ、まだ掛かるかねぇ……」
「ああ、こりゃ大休止だぜ。一回、寝ちまった方がいいぜ」
国王がそのまま床に転がった。
「んじゃ、適当に起こしてくれ。なかなか疲れたぜ!!」
国王は目を閉じ、寝息を立て始めた。
「は、早い!?」
「おう、昔からそうだ。どこでも、寝ちまいやがるからな」
俺は笑った。
「いや、これが国王か。すげぇ国だな」
「これでも、普段は真面目にやってるんだぜ。まるで別人だからな」
俺は小さく笑った。
「よし、私も寝よう。もう面倒だからこれでいいや!!」
ミーナも床に転がった。
「まあ、寝てろ。俺は俺の仕事するぜ」
俺は杖を持ち、ミーナの脇に丸くなった。
「……それ放しなよ。疲れるぞ」
ミーナが俺の背を撫でた。
「馬鹿野郎、これ持ってねぇと落ち着かねぇんだよ。腐っても、魔法使いだからな」
ミーナが笑った。
「取り上げたら怒る?」
「多分、ブチキレるんじゃねぇか。やめとけよ」
ミーナがそっと俺の背を撫でた。
「はいはい、怖いからやめとくよ。ちゃんと休めよ!!」
ミーナはそっと目を閉じた。
「ああ、また寝てやがる。ったく……」
階段から戻ってきたミーシャが、俺を引っつかんでミーナの脇から退け、自分が横に転がった。
「お前はここだ。すぐ忘れやがる!!」
ミーシャが自分の脇に俺をおき、そのまま目を閉じた。
「あのミーシャがこれだぜ。すげぇな」
俺は小さく笑い、周囲に神経を張り巡らせた。
「これが、楽しいんだよな。ここの醍醐味だぜ」
俺はそっと杖を構えた。
「……甘いぜ」
素早く呪文を唱え、火球を放った。
爆音が轟く中、国王が目を閉じたまま笑った。
「うるせぇよ、起きちまったじゃねぇか!!」
「しょうがねぇだろ、魔法だもん」
俺は笑った。
「よし、いいぞ。なかなか骨があったぜ!!」
ミーシャが笑った。
「ったく、楽しくて堪らねぇってか!!」
国王が苦笑した。
「先生の醍醐味だぜ。しょうがねぇだろ」
「……だから、罠を間違えてるって」
ミーナが苦笑した。
「よし、いくぜ!!」
ミーシャを先頭に、俺たちは階段を下りた。
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