9話 敵か味方か覆面の男

1 再動、エステバンロボ

 翌日、マルリスの家



「エステバンとレーレはこの部屋を使っとくれ」


 俺とレーレはマルリスに案内され、ベッドのある個室に通された。


「ここは?」

「弟が使ってた部屋さ。掃除はしてあるよ。向かいの部屋は倉庫にしてる。その右は作業部屋で――」


 マルリスがざっと家の案内をしてくれるが、広い。


 あれからシェイラが家出(?)してしまい、宿屋を引き払った俺たちはマルリスの厚意で彼女の家に転がり込んだのである。


 マルリスの家はサルガドの城壁で日陰になる部分――つまり、あまり『良くない』地域に建つ大きめの一軒家だった。

 彼女はここで独り暮らしをしているらしいが、空き部屋が幾つもあり、俺たちが使う分には問題ないらしい。


「助かるよ、ありがとうマルリス」


 俺が礼を述べるとマルリスは「家賃は払って貰うよ!」と言いながらプイッと横を向いた。


 ……うーむ、ツンデレだ。


 この反応をみた俺とレーレはついニヤけてしまう。

 マルリスが「なに笑ってんだい!」と恥ずかしがるのが堪らない。


 俺はマルリスの肩に手を回し、さりげなくベッドに誘う。


「ちょ、ちょっと! 何すんだい!」

「いや、ベッドの固さを調べようかと……まあまあ、良いじゃないか」


 俺は「まあまあ」とマルリスを宥めながらベッドに押し倒す。

 うむ、ベッドはなかなかいい具合の固さだ。


「ダメだって! するなら私の部屋にっ! これは弟のベッドだから――」

「まあまあ、まあまあ」


 俺は彼女の唇を奪い、服を剥いでいく。

 口ではダメダメ言っているが、本当に嫌なら俺を突き飛ばして逃げるだろう。彼女の体格ならばそれは可能なのだ。


「レーレも混ざるか?」

「うーん……今はいいや。見といてあげるよ」


 今日のレーレ様は気乗りがしないらしい。

 だが、ギャラリーの存在にマルリスはテンションが上がったらしく「こんなに明るいのに」とか「いやあ見ないで」などと恥ずかしがっている。

 そう、彼女は行為自体に不馴れなわけでは無さそうだが、極端に恥ずかしがる。

 これは少し意外だ。


 ……何かあるのかねえ?


 俺は少し引っ掛かりを覚えたが、雑念は振り払い行為に没入することにした。

 女体と向き合うときは真剣勝負――これが俺のモットーである。


 俺はマルリスを苛め抜き、大いに満足した。




………………



…………



 行為を終えた俺は、勝手口の外に備えてある井戸で体を清めていた。

 都市で井戸は大抵が共用であり、よほどの金持ちか宿屋でもなければ専用の井戸などは先ずあり得ない。


 治安の悪い立地、広い家に多くの部屋、専用の井戸……これらの条件を満たす施設を俺は1つしか知らない。


 恐らく、ここは売春宿――たちんぼと呼ばれるコールガールが客の手を引いて利用するタイプだ 。


 だが、明らかに今は営業していない。


 マルリスがなぜここに一人で住んでいるのか……それは分からないし、探るべきでも無いだろう。

 彼女は妊娠した過去があり、子供とは住んでいない。あまり愉快な昔話ではなさそうだ。


 ……ま、冒険者は『今』だけだ。


『過去は過去の自分が歩んだ道、未来のことは未来の自分が何とかするだろう。今日の自分は今日の食を求めよ』


 これは冒険者なら誰もが知っている心得である。


 危険の多い世界の中でもさらに危険な職業が冒険者だ。

 昨日のことは忘れ、先のことを悩まない。刹那的な利益を求めて這いずり回る。


 こうした荒んだ生活が続けば将来設計を考えるやつはいなくなり、昼に稼いだ金は夕暮れ時には酒か娼婦に姿をかえる。

 だが、それを良しとするのが冒険者の気っ風でもあるのだ。


 ……それに、女の過去を探るなんてダサいぜ。


 そう、彼女の乳は素晴らしい。それで十分だ。

 モントゴメリー腺がエロいぜ。


「エステバン、お腹が空いたよ。何か買いに行こう」


 物思いにふけっているとレーレが声を掛けてきた。

 どうやら退屈をしているらしい。

 そう言えば、彼女もわりと冒険者的というか、享楽的な性格をしている。


「いや、ここは台所を借りて何か作るとしよう。炊事、洗濯、床働き。コレをこなすのが良いヒモだ」


 レーレは「ええ……?」と困惑顔だが、寄生するだけではただのクズだ。

 良いヒモは養ってもらう女性に「ありがとう」と言ってもらえる存在なのだ。


 ちなみに小遣いが欲しいからって女の財布から抜き取るような真似は厳禁だ。

 ヒモを養うような女性は聖母のような存在である。素直に「お金ください」と言えば大抵は貰える。


「何か、慣れてるね。クズだね」


 レーレが失礼な事を言ってきたので、俺はすぐに「そんなことは無い」と否定した。


 俺がヒモ紛いのことをしたのは若い頃に1度だけである。

 駆け出しの頃にベテランのお姉さんに養ってもらいながら様々な手解てほどきを受けたもんだ――まあ、ヒモと言うよりは内弟子みたいなもんか。

 俺も冒険者として身を立てようと必死だったしな……それこそ昼も夜も大冒険だった。


 ……夜の冒険は俺がリードしていたがな。


 俺が遠い目をしながら「フッ」と笑うと、レーレが何か言いたそうにしていた。


 ……何か言えよ。




――――――




 その後、俺はパエリアっぽい食べ物を作り、よろよろと寝室から出てきたマルリスと共に食事を取ることにした。


さすがに台所には保存の利くモノしか無かったが、一通りの食材や調味料が揃っていたのはマルリスが自炊をするからであろう。

 

「……うまい」

「でしょ? エステバンはね――」


 マルリスとレーレはそれなりに打ち解けているようだ。俺の竿を縁にした竿仲間でもあるわけだし、仲が良くて何よりだ。

 絆の竿師エステバン。悪くない。


 ちなみに今回作ったのは具が干し魚と玉ねぎだけのパエリアもどきだが、なかなか好評で俺も嬉しい。ヒモ冥利に尽きるってもんだ。サフランとニンニクが効いたな。


 そう言えば全くの余談だが、パエリアもどきを作ったことからも分かるように、この世界にも米がある。だが、日本の米とは品種が違うらしく大粒でパッサパサだ。

 あまり美味しくないし、おにぎりにはできない。


「シェイラのご飯はマズいんだ。この間なんかね――」


 レーレがシェイラの名前を出した途端にマルリスの顔が曇る。

 やはり気が引ける部分もあるのだろう。


「――シェイラさんはどうしてるんだい?」

「うーん、ギルドで仕事するとは思うよ。シェイラなら1人でも簡単な狩りならできるはずだけど……」


 レーレの言葉は頼りないが、彼女としてもこれ以上のことは言えるはずがない。

 マルリスは不安げに「様子を見てあげなよ」と口にする。

 確かにシェイラのような娘がフラフラしていては危なっかしいのは間違いない。


 養ってもらう女性の不安を解消するのもヒモたる者のつとめ。俺はシェイラの様子を見に行くことにした。


「よし、わかった。一仕事した後に様子を見に行こう」

「いいよ、後片付けくらいはアタシが――え?」


 俺は食器を片付け始めたマルリスの腰を掴んで寝室に向かう。

 ヒモたる者、床働きは欠かせない。


「え、何で? さっきあんなに――ちょっと、だから弟のベッドじゃ――」

「まあまあ、まあまあ」


 俺はマルリスを宥めながら服を剥いでいく。


「あ、ボクも混ざろうかな? マルリスとも仲良くなりたいし」


 今回はレーレ様も参加なさるらしい。彼女も養ってもらう身、床働きはしたほうが良いだろう。



 この後、俺は久しぶりにエステバンロボと化し、兜に乗り込んだレーレ様の指示でマルリスを責めるという新たな局地を切り開いた。

 従う快感と従わせる快感が同時に得られる荒業である。さすがはレーレ様だ。


 ……全裸でヘルメット……これは癖になりそうな予感がする。


 暇なときに覆面でも作ってみることにしよう。





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モントゴメリー腺


乳輪のブツブツのこと。

エステバンはデカ乳輪好き。

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