おまけ エステバンとの約束
これは宴会の翌日、
俺はギルドでシェイラを回収し、宿の部屋に転がした。
前日、完全に酔い潰れていた彼女は、真っ青な顔色で寝ゲロまみれ……見るも無惨、憐れな姿だ。
今も胃の中に何もないのにオエオエと
さすがにゲロまみれの女を宿のベッドに寝せるのは気が引けるので彼女を転がしたのは床だ。
「汚ねえな……ゲロ臭いし」
さすがの俺もこの状態のシェイラにイタズラはしたくない。スカトロ趣味は無いからな。
……まずは水でも飲ませてやるか。
俺は魔法で空の水筒に水を溜め始めた。
これは「水を作る」魔法だ。
何も無いところに何かを生み出す魔法は、実はかなりの高等技術なのだが、空気中の水分を集めるようなイメージを使うと上手くいく。
やはり魔法とはイメージによるところが大きいようだ。
「おい、飲めるか? うがいでもいいぞ」
俺が水筒を渡すと、彼女は「うー」と返事をし、可愛らしく喉を鳴らしながら水を飲む。
まだ酔いが残っているのか、
「そんなに、私が好きなのか?」
その思いもよらない一言に、俺の思考は一瞬停止した。
「シェイラは俺のだって、誰にも渡さないって」
「あー、言ったかな?」
昨日、宴会で適当に喋ってたかもしれない。完全に酔い潰れてたと思ったが、聞いてたのか。
「言ったぞ、確かに聞いた。『俺はシェイラを愛してる』って」
それは言ってない気もするが、俺は「言った言った」と適当に話を合わせた。
「ちゃんと、言ってほしい。私に好きだって、愛してるって言ってほしい……そうしたら私は――」
シェイラは目を潤ませ、上目遣いで俺を見上げる。
思わぬ展開に驚きつつも『乗っかってしまえ』と俺の狩猟本能が騒ぎだした。
これは完全に据え膳だ。
多少ゲロ臭かろうが食わぬは男の恥である。
「シェイラ、お前は俺の女だ。誰にも渡したくない、愛してるぞ」
俺は手早くシェイラのゲロ臭い上着を剥ぎ取った。
簡素な下着姿が剥き出しとなる。
「あん、駄目じゃないか、お前には契った相手がいるのに」
「シェイラ、俺はお前が――」
彼女が俺に抱きついた。
水筒が床に落ち、カツンと乾いた音を鳴らす。
俺は彼女の長い耳を甘噛みし、そして下着に手を滑り込ませ――
「あっ、ダメ、うん……エステバオエ、ぶオエェ、げぶっ」
――盛大に吐かれた。
しかも、俺の
不快な温もりが肌を伝う。
恐らくは空っぽの胃に水を入れたから吐き戻したのだろう。
ゾクリ、と凄まじい悪寒が電流のように全身を走り、俺の体は反射的に動いた。
無意識に出た打ち下ろし気味の掌底の一撃が彼女の
俺にスカトロ趣味は無い。
なんて不愉快なガキだ。
俺は彼女の首を引っ張り、角度を直してから部屋を出た。
季節的には床で寝ても大丈夫だ。暖かくなってきたからな。
――――――
翌日
目が覚めた彼女にはゲロの記憶は無かった。
どうやら宴会の中盤辺りからの記憶を完全に失ったようだ。
どこかで顎を強く打ち付けたらしく「首が痛い」と訴えていたが……知らんな。
良い子のみんな
『酒は飲んでも飲まれるな、行為の最中ゲロ吐くな』
エステバンとの約束だ。
絶対に守ってくれよな!
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