45-25

 ああ臭い。鼻が曲がりそうだ。ここには痴呆の不能者しかいないではないか。それならまだしも奴らの腸を引きづり出してみたならば、ことごとくどす黒く腐り果てているに違いない。もうこうなったならば地中深くに埋めて、その上に十字架で杭するしかあるまい。奴らがもたれ掛かっているその十字架でもって。   

 心があるものならば、闘うはずだ。知能があるものならば、国を捨てるはずだ。

「まっとうな」聖職者はそのどちらでもありえない。無抵抗の条理は神の子たるゆえの宿命か。ならば、人柱の私がお前らの胸腹に刃を突き立ててやろう。その刹那瞳に映る色を私は知っている。刀を持つだけの胆力も逃げるだけの度胸も持たぬ者は結局のところ、精神の呪いでもって復讐するしかないのだろう? お前らは神などとうに捨てたではないか。ならば、早く私を殺して見せろ。ユリウス帝に仇なす真の敵を屠ることが出来たならば、私はこの身を何にでも差し出して良いのだ。


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『Aの日記』  灘田勘太 @nanndakannda

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