第9話 粥の巻

 夏休みに入ってしまい、うだるような毎日である。夏の終わりには恵伝学園との再試合が行われる。あと一ヶ月と少し。野球部の実力はというと、さほどついていない。強ければもちろん甲子園を狙うところだが、甲子園は恵伝学園でも行けない高い高い壁である。

 ほぼ全員が部室でノビている。他の部室にはない冷房がある。空山が入れたのだ。おまけにソファも心地いいので、外に出ようなんて誰も思わない。博多が入ってきた。


「よし、みんなそろっているな。今日の練習を始める」


 全員かったるそうだ。


「……どこでやるんですか?」


 空山が消極的な態度で訊く。


「もちろんグラウンドだ」

「暑いですよ。危険ですよ」

「熱中症対策はする。皆の根性を見せる時だ」

「あのですね、今時昭和の価値観である根性なんて流行りませんよ。こういう時は涼しい部屋でビデオなどを見てフォーメーションなどの研究を……」


 パッカーン! と派手な音がして博多のハリセンが空山の顔面に炸裂。


「甘えるな下郎。根性こそは勝利への第一歩である」

「く、くそっ……今日こそ……」


 空山は顔を押さえつつスマホを出して電話をかけた。同時に博多のスマホも着信音を立てる。博多がスマホに出た。


「もしもし……父さん」

「違う」

「え……誰ですか?」

「博多だ」

「いいいいい?」


 空山が通話を切り、唖然として博多を見た。


「お父上はぼっちゃんの電話があまりにうっとおしいというので、世話を私に任せ、電話は私のスマホに転送するようにしてある。お父上より、ぼっちゃんを男にせよと命じられておる」

「い……今時、男は男らしくとか古いな」


 パッカーン!


「さあ、やるぞ少年達よ。ちなみに練習中水は飲めない」

「ええーっ! 鬼畜ーっ!」


 全員がブーイングするところ、博多が苦笑して抑える。


「まあまあま、水はミネラル成分が入っておらんので、飲んでもあまり吸収されず、すぐ排泄されてしまうのだよ。従って、ここに冷たいスポーツドリンクを用意したぞい!」


 そう言ってクーラーボックスに入ったスポーツドリンクを見せた。


「おおーっ!」


 今度は全員手を叩いて喜ぶ。


「やる気のある者には飲ませてあげよう」


 その言葉で全員が固まった。嫌な予感がする。


「やる気の……ある者? じゃあ、ない者は?」


 空山が恐る恐る訊く。


「やる気なしと見なしたものは……粥だ。粥を食ってもらう」

「か……」


 全員絶句。博多はランチジャーに入った粥を見せた。白い湯気を立てていかにも熱そうだ。この暑いのに粥なんか食えというのか。


「うそーっ!」

「あ、あ、ああづいでねえが!」

「なんで粥なんです?」


 空山の疑問に。博多はうなずきつつ答える。


「これは水分を豊富に含んだエネルギー源である。熱源でもある。やる気のない者も、きっと熱く燃え上がりやる気が出てくるであろう!」


 絶対そんな理由ではない、と誰もが思っている。


「とにかく着替えてグラウンドに走れい!」


 博多は怒鳴った。



 全員だらだらとグラウンドに集まってきた。日差しも強く、既に汗もだらだらである。博多だけ手にしたスポーツドリンクのペットボトルを飲みながらやってきた。


「あっ! 一人だけずるいっス!」


 尾大の抗議に博多はうなずく。


「うん、しかしだ、理由その一、私は老人である。理由その二、私はやる気がある。理由その三、君達にはやる気がない」

「そんな露骨に言うなよ」


 紺野が悪態をつく。


「で、今日は紅白試合だ」

「え? 全部で九人しかいませんよ。どうやって……」

「心配するでないぼっちゃん。ピッチャーとキャッチャー、守備二人を二チーム作る。これで八人。そしてファーストは常に紺野君。君だ。ファーストの腕を磨くのだ」

「俺が常にファーストですか。まあいいっすよ」


 紺野はファーストミットをはめた。とりあえず鳥居、尾大、林、坂東チームと、六角、空山、二階堂、小泉チームに分かれた。最初は、鳥居ピッチャー、尾大キャッチャーといういつものバッテリー。守備は林と坂東。


「ふ、ふだりで守備はきづいなあ……」

「この広い範囲の守備はシュビっと俊敏に動かねば……いやもう大変っすな」


 そう言って坂東はレフトへ。林はライトに向かう。


「坂東先輩、こっちの守備も頼みます」

「なんでだよ!」

「暑くってライトの守備なんてきらいっと」


 これを聞き、博多がメガホンを持って怒鳴った。


「林ーっ!」

「はい?」

「今すぐここに来て粥を食えっ」

「え、ええええ?」

「早く来い」

「やる気出ました。ライトもやる僕えらいっと」

「四の五の言わずに来るんじゃあっ!」


 林はシブシブ博多のもとへ。シートの上に正座させられ、ランチジャーからスチロール椀によそった粥とプラスチックスプーンを持たされる。


「制限時間一分」

「いいいい?」

「食えなきゃもう一杯。スタート!」


 林、必死で食べ始めるが何しろ熱い。


「あ、あ、熱い……熱っ……はふっ……ふーっ……ひひっ……はふはふっ……お、お、オカユ……ふふーっ……なんて……熱っ……これ、お、お、オユカ……みたいな……」


 何とか一分以内で食べ終わった。林は汗だくで、肩で息をしている。空山が抗議する。


「こ、これはもはや指導ではない! 拷問だ。虐待だ。火傷したらどうすんです!」


 バッカーン! とハリセンが炸裂。空山はまたも顔を押さえる。


「やかましいぞ下郎。火傷しない絶妙な温度にしてあるのだ。熱く、熱く燃えるのだ野球部少年達よ。恵伝に勝ちたければ言うことを聞けい!」


 かくして林がライトに戻る。バッターは小泉。鳥居は守備二人に声をかける。


「打たせて取りますよ。お願いします」


 これを坂東が嫌がる。


「い、いやぞりゃないでよ鳥居ぐん。三振にどってくれよ。守備ざぜんなよ」


 当然、博多が怒鳴った。


「坂東ーっ! 粥だ!」

「いいいいい、やりまず。守備やりまず」

「ダメだ。早く来て食えっ!」


 有無を言わさない。坂東も涙ながらに粥を食べ、言い訳も通用しない雰囲気になってきた。しかし鳥居は好調で、小泉をライトフライに打ち取った。次のバッターは六角だったが、どう暗示をかけるか空山が悩んでいる間にレフト前ゴロ。紺野もそつなく送球をキャッチ。次の空山はあっけなく三球三振。


「ぼっちゃん、三振はみっともないですぞ」

「それは……」


 やる気が出ないと言いたかったが、ハリセンか粥のどちらかを食らうことになるので、黙っている。スリーアウトチェンジで攻守交代。ピッチャーは六角、キャッチャーは空山、ライト小泉、レフト二階堂。

 空山は早速、六角に暗示をかける。


「相手バッターを時に三振、時にレフト前ゴロ、あるいはライトフライに打ち取る優秀なピッチングマシン。およびレフトからファーストへの送球の際に、ファーストが難なくキャッチできる速度でボールを加速するマシン」


 これで何とかなるだろうかと思う。レフト前ゴロ、というのは、二階堂はフライを取ろうとしてもボールに負けて転倒して落としてしまうからだ。加速マシンも、二階堂の送球速度が歩くよりも遅いからである。

 その結果、ピッチングは見事で、最初のバッター林は、一球目でライト方向にフライを打ち上げ、小泉に難なく取られた。林は一応悔しがる。


「ううむ、フライなだけに、あげちゃいましたな……いやもう大変なんすから」


 次のバッターは坂東。バットを振り回し、やる気十分だ。


「おう、でっがいホームランを打っでやどぅ」


 早速六角の初球。


「もらっだ!」


 打ったがこれも見事にレフト方向のゴロ。


「あぢゃー……」


 ボールの行方を見つつ、一応一塁に向かって走る。二階堂は転がってきたボールをグローブですくおうとしたが、ボールの勢いの方が強く、グローブでつかんだままボールに引っ張られるように地面をズルズル引きずられていった。博多が叫ぶ。


「おおおっ、タジオーっ!」


 走っていた坂東は思わず立ち止まり、指さして非難する。


「あ、あ、あではおがしいだろ! たががボールの運動えでるぎーが二階堂ぢゃんの体重をはごんでいぐごどはえでるぎー保存ほうぞくがからしてだな……」


 見かねた小泉が走っていって、二階堂を引きずるボールをキャッチし、急いで一塁に送球。それを見て坂東は慌てる。


「おっど一塁にいがねば」


 走ろうとしたが、とつぜんバッカーンと音がして目の前が真っ暗になり、頭がくらくらした。博多のハリセンだった。紺野がボールをキャッチしてアウト。坂東はすぐ近くにいた博多に怒る。


「な、な、なにずる! お、お、おでがなにしたっでんだ!」

「すまんすまん。今日は風が強いもんでのう。ハリセンが飛んでいきそうになったワイ」

「うぞづげーっ!」

「おお、それより二階堂よ、ナイスファイト。今すぐスポーツドリンクを差し上げよう」


 そう言ってクーラーボックスからスポーツドリンクを出し、わざわざレフトまで走っていって二階堂に渡す。


「飲みたまえ」

「すいません、いただきます」


 そう言ってためらうでもなく、うまそうにラッパ飲み。それを見て空山が頭に来る。


「えこひいきだ。露骨だ。茶番だ……」

「何か言うたかぼっちゃん」

「二階堂はボールに負けてたんだから本来粥ものでしょう!」

「負けているところを勝とうとしたのであるから、賞賛すべきであろう。実力そのものよりも、たゆまぬファイティングポーズこそが勝利への道である」


 何をもっともらしいことを言ってるだけだと、空山は歯ぎしりする。練習は続行。今度のバッターは尾大。


「ごっつあんです! 打たせていただくっスよ」


 明るくそう言ってバットを構える。野球センスと長打力があるので警戒しなければ、と空山は思う。ストライクゾーンぎりぎりで攻めたい。第一球。外角ボールで見送り。空山はキャッチし損ね、ボールがミットから真下に落ちる。尾大は苦笑。


「引っかけようったって、そうはいかないっスよ」


 二球目、内角。尾大はバットを振ったがボールは少しかすってコースがそれた。空山はキャッチすればアウトのところキャッチし損ね、ボールが後ろへ少し転がる。


「危なかったっス。なかなかいいコースっスね」


 三球目、外角高めのボール。尾大見送り。空山はキャッチし損ね、ボールはミットで弾かれ上に。

 四球目、外角低め。尾大は空振り。


「あちゃー!」


 空山はキャッチできす、ボールが後ろへかなり転がる。ボールを取ってきて戻ってくると、博多が立っていた。


「おい、ぼっちゃん」

「はい、なんです?」

「さっきから一球もちゃんとキャッチできてないではないか」

「そりゃまあ、ぎりぎりのコースを狙っているので」

「粥を食え」

「いえ、それにはおよびません」


 博多はおもむろに空山のキャッチャーマスクをつかんでむしり取る。その直後、パッカーン! と派手な音。もちろん顔面ハリセン。


「ぼぼぼ暴力、暴力反対!」

「部長ならやる気を見せんかい!」

「いや、だから取れないところを取ろうとしているナイスファイトで……」

「粥じゃあ! 粥を食えっ!」


 ハリセン第二波が炸裂。空山は泣く泣く粥を食う。


「くそっ……熱いっ……ふーっふーっふーっ……あ、あ、あふいよ……あひひひ……」


 その後、尾大はライト前ゴロでアウト。スリーアウトチェンジで攻守交代。ピッチャー、再び鳥居。バッターは二階堂。二階堂、やる気だけはあるが、力が弱いのでバットに当たったところで、飛ぶわけがない。


「さあ鳥居君、思いっきり投げて下さい!」


 二階堂はまじめにそう言うが、それは気の毒だ、と鳥居が思っているところ、二階堂の台詞を博多が絶賛。


「おおっ二階堂! すばらしい言葉よ!」


 このジジイの頭に粥をぶっかけたいという衝動を抑えつつ、鳥居は冷静に投球。直球ど真ん中。誰でも打てるが二階堂なら飛ばないだろう。せいぜいキャッチャーゴロだ。二階堂、バットを振って当たった。そのまま一塁に走る。ボールは鳥居と尾大のちょうど間をのろのろ転がっていく。鳥居と尾大はボールを拾おうと同時にダッシュ。どちらが早くボールに着くか。まさか同時に着いて衝突などというマンガみたいな展開はできない。


「おおっ! 虹が見える!」


 博多が叫んだ。え? こんな時間に? と思わず西の空を見た一瞬、二人は衝突した。


「いてーっ!」

「痛いっス!」


 鳥居、ふらつきながらもボールを拾って一塁に送球。


「あっ! 女がグラウンドに入ってきた!」


 またも博多の叫び。これには紺野が反応。


「ぬぁにい?」


 一瞬、紫の煙を噴き上げるがすぐに嘘だと分かる。しかしその一瞬ボールから目を離し、キャッチし損ね、ボールがミットで弾かれ下に落ちた。しかしすぐに拾ってベースを踏んだ。二階堂は一生懸命走っていたが、直前でアウトとなった。


「オッケーっ!」


 鳥居が叫ぶ。紺野は怒って博多に抗議。


「なんだよ虹とか女とか! 何もないじゃないか!」

「いやー、見間違えであったな」

「二階堂をセーフにさせようとしたな!」


 図星なのか、今度は博多が怒る。


「黙れーい! だいたい野球以外の言葉にいちいち反応するとは何事かっ! 三人とも粥を食えーっ!」

「ええええ?」

「横暴が過ぎるっス! 一生懸命やってたっス!」


 さすがに尾大も抗議。鳥居も粥など食いたくなくて抗議する。


「集中しずらい状況は分かりますが、粥はないと思います!」


 博多は一応耳を傾けている。そして威圧的ながらも、今までと違う目つきになり、凄みのある声で答える。


「なぜこんなムチャクチャに厳しいのかと思うだろう。しかしな、試合というものは、勝負というものは、あらゆる理不尽な状況であっても、それに気持ちがめげてはならない! いかなる事態に陥っても、常に野球を続け、戦う気持ちを忘れるべきではない! そのための今日の指導でもある! さあ、粥を食って乗り越えろ! 勝ち続ける気持ちを持て!」


 一応それらしく聞こえたもので、三人はシートに座り、粥を食べる。しかしさすがにキツい。尾大は半泣きである。


「あ、あ、あ、熱いっス……ふーっ、ふーっ……チャンコより熱いっス……」

「え? 別に相撲部じゃないよね……ふーっ……こりゃ熱い……でも、これに耐えて心が燃えられるか……それが勝負ってことだ……」


 鳥居はそんな感じで、割と素直に指導に従う思考になっている。紺野は椀に入った粥を置いてしばらく見つめている。


「粥は熱い。俺の体も熱い……しかし、俺のあそこはクールだ……」


 そうつぶやくと立ち上がり、おもむろにズボンとパンツを下ろした。まさか……隣で食い始めた鳥居の顔から血の気が引く。そのまさかである。紺野は腕立て伏せの姿勢になり、椀のすぐ上に股間のブツを持ってきた。そのまま腕を曲げて、股間のブツを粥に浸した。


「ぶーっ!」


 あまりの光景に鳥居が粥を吹いてしまう。紺野は歯を食いしばり熱さと戦っていた。


「こ、紺野先輩! 何やってんですか。死にますよ!」

「これでいいんだ! 俺のナニが熱を吸収する!」

「……っていうか、それを食べるんですか?」

「食べるがどうした」

「だ、だ、だって……バ、バッチくない?」

「俺の股間を甘く見るなイガグリ野郎! お前はさっさと食え!」


 悪夢だ……これは夢……いや夢じゃないよな。鳥居はまたメタフィクションのようなことを考える。これが小説などの一部として……なぜ紺野先輩はここまでやるのか。いや、やらされているのか。いくら股間を使うといっても無理がある。紺野先輩の股間ネタが尽きたのに、何かやらせようと無理矢理こんなことをさせているのか。いや、もしかして……鳥居の頭にもっと恐ろしい考えがよぎった。そもそもこれをやらせるために粥を出してきたんじゃないだろうか。いや、まさか、そんなどうしようもない目的で部員全員を熱々の粥地獄に落とし込むなんてあんまりじゃないか。


「あと三十秒」


 博多の声。鳥居は現実に返る。とにかく食べなければ。必死に粥をかき込んで、どうにか完食した。汗だくな上にめまいがする。しかし、ここで倒れてはいけない。自分は野球部だ。耐えろ。恵伝学園に勝つのだ。鳥居は歯を食いしばる。尾大も食べきった。そして紺野も言葉通り、股間のブツを粥から引き抜いて、あっという間に食べてしまった。そこまで自分の股間が信じられる人がうらやましいと、鳥居は少し思った。


「あのう、監督!」


 尾大が手を挙げる。


「何だ?」

「さっき、厳しいのは、俺達の気持ちを鍛えるためだと言ったっスよね」

「うん、言った」

「何で二階堂先輩には厳しくしないんですか?」

「んな、何を分かり切ったことを。カワイイからに決まってるじゃぁないか!」


 それを聞いて、鳥居の頭の中で何かがプチッと切れた。いきなり立ち上がり、博多の方を向いて怒りをぶつける。


「お、お、俺は真剣にやっているのになんですかっ! ふざけるな! こ、こんなクソ暑い中こんなことやってられるかーっ!」


 そう言ってユニフォームの上を脱いでかなぐり捨て、その下も脱ぎ、上半身裸になった。肩で息をして、博多をにらみつける。普段冷静な鳥居がキレたので、全員唖然とする。博多も目を見開いて、鳥居を見つめていた。


「鳥居君……き、君は……」

「こんなこと……もうたくさんだっ……」


 鳥居の目に涙がにじんでいる。


「君は……いい体してるんだな……さすが野球部随一の選手」

「いい体……ええっ?」


 怒りと悲しみが一気に動揺に変わった。


「私は……私はタギってきた」


 そう言うなり、博多も上着を脱ぎ捨て、上半身裸になった。鳥居の血の気が引く。


「ハグさせろ!」


 そう言って迫ってきた。


「い、い、嫌だっ……」


 鳥居は逃げ出した。博多は全力で追いかけ始める。


「監督命令、いや監督お願いだ。待ってくれっ!」

「いやだっつーの!」


 灼熱のグラウンドで追いかけっこが始まる。しかし、若い鳥居の方がもちろん速いし、体力もある。


「おおお待ってくれ……私は今大いにタギっているのだ……鳥居君……鳥居くーん……」


 鳥居は何も言わず逃げ続ける。やがて博多の足がふらつき、走れなくなり、歩くこともできず、膝をつくなりそのまま地面に崩れ、倒れてしまった。


「大変だ! 監督が倒れた!」


 空山が叫ぶ。それから救急車が来て、博多は運ばれていき、熱中症の治療を受け、練習はそのまま終わってしまった。

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