第4話 後編

 なんとなく宇杉君の事を見てみようと振り返ったら、もう店から出ていた。早い。


「彼はあまり人と関わりたくないのでしょうね。何も言わずに消える事が多いです」

「あいつら初めてここに来てからずっとそんな感じだからなぁ」

「宇杉君って外の人なんですか?」

「ああ。都心が封鎖されたのは20年前だからな。中で住んでる20歳未満のやつはここで生まれたか外で生まれたかの2択しかねぇよ。はっきり言っちまえば中学高校くらいの年齢で中にいるやつは皆外から来たやつだよ」


 宇杉君も外から来た人なのか……。俺は友達に付いて行った結果ここに来る事になってしまったが、彼は好奇心で封鎖区域を見に行くような人には見えないが……妹も一緒だというし。


「宇杉君達も俺と同じように襲われたんですか?」

「たぶんな」

「多分ですか?」

「当時、彼に何があったのか聞いても何も答えてくれませんでした。なので私達はこれ以上は何も聞きませんでした。ただなにがあったのか推測は出来ます」


 何があったのか気になるけど、人の事だしあまり突っ込むのはよくないかな。朝食も食べ終わったし、そろそろ店を出よう。


「富永さん、ごちそうさまでした」

「お粗末さま。ところでお前さんこの後どうするんだ?」

「そうですね、この辺りでも散策しようかと思ってます」

「じぁあ私が街を案内するね!」


 さっきまで別の人と会話をしていたはずの名取さんが出てきた。突然すぎる。だがその申し出はありがたい。


「じゃあお願いします」

「よろしく。それと私の事は清美でいいよ、敬語も無し!」

「それだったら俺も良司でいいよ

「ふふっ! よろしくね良司!」


 名前で呼ばれるのは家族以外でなかないない。からなんか新鮮な気分だ。せっかくだから竹内さんと富永さんにも声をかけた。


「よかったらお二人も名前で呼んでください」

「じゃ、遠慮なく呼ばせてもらうぜ」

「では私も良司君と呼ばせていただきますね」


 ファミレスを出て、清美に街を案内してもらった。



「どう? 私はあまり外には出ないからわからないけど20年前で止まってるから古臭い感じする?」

「どうだろう、別にそんな古いって感じはないかな。俺が住んでいた場所もそんなに新しい建物があるってわけではないし」

「そっか」


 その後もいろいろ見て回った。スーパーやコンビニなどにある食品はもうないが、日用品など生活道具などはまだ余裕で置いてあるらしい。ホームセンターとかにも沢山あるらしいが、場所によってはガラが悪いやつらがたむろしているとの事だ。

 また場所によっては建物が崩壊している場所もあった。以前中で暴動が起こったと聞いたしそういう場所もあって当然か。


「案内できるのはこのくらいかな? 封鎖区域の中って結構広いから私達は一部の区域でしか活動してないの。

「他のエリアに来たりするとまずいことでもあるの?」

「まずい事はないけど、別の場所で縄張り作ってるグループもあるかもしれないし問題になったら嫌でしょ?」


 その問題が発展して乱闘騒ぎになる可能性もあるかもしれない。


「……確かにそうだね」

「だからもしエリアの外に行く場合は何があっても対処できるように準備して行くこと!」

「わかったよ」


 その時、ずいぶん気の抜けた音が聞こえた。


「えへへ……お腹空いちゃったみたい。普段この時間にお腹空くことないんだけど、沢山歩いたからお腹が空いたみたい」

「そうだねちょうどいい時間だしファミレスに行こうか」


俺と清美は昼食のためにファミレスへと向かった。

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