第3話

 起きると見知らぬ天井だった。

 起き上がると昼間と同じ部屋だと気付く。

 今までの事は夢じゃない。


「…………」


 ここで悩んでいてもしょうがない。それより時計を見ると20時だった。また寝ようかとだけど寝転がるが、眠れない。暇を潰すか。だが昼間に見回した時に、この部屋で暇を潰せそうなのはなにもなかった。

この部屋を出れば何かあるかもしれない。だが勝手にこの部屋を出ていいのだろうか。でも待っていたって誰か来るとは思えない。


「よし! 部屋を出よう」


 俺はベッドがら降りて、部屋から出た。周りを見ると誰もいない。もう夜だしこの建物の中には誰もいないのか。後俺パジャマだった。急に恥ずかしくなったがこのまま行くことにした。着替え無いし。

 少し歩いていると階段があった。どうやらこの階は2階らしい。それに何か音がする。ゆっくり降りると一階には人がいた。

 なんかバーみたいな雰囲気だ。というよりバーカウンターがマジである。


「おや?笹倉君起きたのですか、先程部屋に来た時は寝ていたものですから」


 室内を眺めていると竹内さんに声をかられた。


「なんか急に目が冷めちゃって」

「そうですか。ではこちらへどうぞ」


 俺は言われるとおりに隣の席へ座った。バーカウンターに座るのなんて初めてだ。なんかむず痒い。

 カウンターの向こうには三十後半から四十代くらいだろうか、ダンディなおじさんがいた。


「よ、俺は富永直隆とみながなおたかだ。目覚めたって聞いてたからな、会えて嬉しいぜ」

「あ、俺は笹倉良司です。よろしくお願いします」

「ここにおいてあるの好きに食っていいぞ」


 カウンターにある袋に詰められたお菓子やフルーツなどが盛り付けられた皿を指さしてそういった。


「ありがとうございます」


 俺はお菓子を手に取って食べた。おいしい。まぁ、市販のお菓子だしおれもよく食べてるやつだからな。

 ちょうどいいから何か質問してみることにした。


「この建物ってなんですか?」

「一階がバーのビルだよ。この店の主がいないから勝手に使わせてもらってる。二階以降も仲間に使わせてるよ」

「武富さんはこの店の人ではないんですか?」

「ああ、俺も昔は封鎖区域の中色んな所をフラフラしてたが、たまたまガラ空きのバーを見つけて、こうやってバーまがいのことしてるってわけだ」


 バーか……って俺昼間にフルーツ沢山食べたし今もお菓子食べてるしお金払ったほうがいいのか?


「お金は気にすることありませんよ」


 俺の心を見透かしたかのように竹内さんは俺に言った。


「ああ、ここじゃお金なんてあまり意味ねぇ」

「それってどういうことですか?」


 俺はずっと[外]で暮らしてきたから封鎖区域の中の事情など全くわからない。


「昔はお金のやりとりをしていたんだ。お金を払って店から個人から物や食べ物を買ったりしていた。物々交換もあったな。だがここは封鎖区域だ。食料品や生活用品、嗜好品は全国で作られてその後全国に出荷されるだろ?だけどそういった物は封鎖区域の中には入ってこない。生活用品や嗜好品は新しいのは入っってこない。食料品に至っては減る一方だ。お金だって封鎖区域でしか回らない」

「お金が尽きる人間や、空腹で倒れる人間も現れた。ある時、一人の人間が他の人間を襲いお金と食料を奪ったらしい。そこを皮切りにいろんな人間が人間を襲って食料や金を奪った。死者も出た。そのせいで人間が沢山減ったな」


 いままで幸せな生活を送ってきた俺にとっては想像のつかない出来事だ。


「ま、この地域では15年から10年くらいの間に暴動は収まったがな。地域の皆で話し合った結果、お金のやり取りは無しになった。食料や必要な物は各自で調達するということになった。調達できない人もいるからな、そこは助け合いだ」


 これがお金を使わない理由。でも。


「食べ物は貴重ってことですよね?いいんですか昼間にあんなにもらって……それにこのお菓子達も」


 俺の疑問に竹内さんが答えてくれた。


「野菜や果物は私達で自家栽培しています。野菜や果物は問題ありませんよ」

「昼間の果物はここで育てたものですか?」


 うなずく竹内さん。


「自家栽培じゃ育てられねぇ物もあるしな、それに[外]じゃないと手に入らない物もある。そこは仲間がたまに[外]に出て調達してるよ」

「そ、[外]ですか?」

「おうよ。透明化できるやつもいれば空を飛べるヤツもいる。[外]の見張りの目をかいくぐって[外]に出るなんで朝飯前よ」

「お金は余ってる分もありますが、他にどこかで換金できそうなのを探して[外]でお金を調達したりもしていますよ」


 なるほど、使わないお金は[外]での調達に使い、調達係はバレずに行動できるる能力をもった人たちで行うのか。


「ま、そういうことだ!ところでお前歳いくつだ?」

「17です。一応高2です」


 この場合でしたのほうがいいのか?もう学校には通えないわけだし。


「17か、まだ若い内は遠慮せずどんどん食っとけよ!」

「は、はい」

「そういえば、あなたを助けた彼も17歳でしたね。」


 俺を助けた人が俺と同い年の男なのか……。


「その人は今何処にいるんですか?お礼を言いたくて」

「彼は重症の君を連れてきたあとまた出ていってしまいまして」

「あいつも後から此処に来た口だが、よくここを離れるんだよ。まぁそろそろ戻ってくるんじゃね」

「そうですか」


 俺が気を失う前に見た男の姿はもしかして俺を助けてくれた人なんだろうか……。今はイないみたいだしいずれ会ったらお礼を必ず言おう。


「まぁ今日はお休みになってまた明日お話しましょう。ここのでの暮らしはまだわからない事だらけでしょうし」

「はい、そうします」


 俺はその後洗面所とトイレの場所を教えてもらった。さらにお風呂まで貸してもらった。

 寝る前の歯磨きをしっかり済ませ今日は早めの就寝をした。

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