第2話 後編

「あなたは今、封鎖区域の中にいます」

「えっ!」


 封鎖区域って流石に驚くぞ!そんな俺の様子を気にと止めず。竹内さんは聞いてくる。


「あなたが気を失う直前二人組に会いませんでしたか?」

「はい、会いました」


 喋る化け物の姿をしたヤツと青年だったはずだ。


「彼らはある細胞を持っています」


 細胞?なんか話が変わってきたぞ、大丈夫か?


「私達はロスト細胞と呼んでます。ロスト細胞を持った人から傷を受けたり、体液を飲んだりするとロスト細胞を持ってない人はロストウイルスに罹ってしまいます」

「えっと俺はもしかしてロストウイルスに罹ってるんですか?」

「正確には[だった]です。あなたはロストウイルスと相性がよかったのでロスト細胞として身体にもっています」


 どういうことだ?


「ロストウイルスに罹ると相性が悪い人は死に至ります。酷い人であれは身体が変貌し、理性のない化け物のような姿になります」


俺、相性悪かったら死んでたのか。


「ロスト細胞はあらゆる病気に罹りません。私や名取さんもロスト細胞をもっていますがずっと健康ですよ」


 竹内さんと名取さんもそうなのか。


「ロスト細胞は外傷を早く治す作用もあります。あなたも腹に穴が開くほどの傷を負いましたが早く塞がったのはそのためです」


 あの傷が一瞬で……。


「ですが小さいキズであれば一瞬で治ります。切り傷や擦り傷など。見てください」


竹内さんが腕に傷をつける。うっすらと血が滲んでいたが、直ぐに治ってしまった。


「究極がこれです」


二人が顔をあわせる。すると俺の目に信じられないものが映った。

それはメラメラと熱く揺らめく炎が名取さんの手ひらで燃えていた。


「能力は人それぞれですがこういう超能力的な力が備わります」

「こういう目に見える能力以外に、聴力や視力を自在にコントロールできたりするって人もいるよ。身体の一部分を変化させたり、全身変えたりとかいろいろ」


 俺は驚きでいっぱいだった。こんなの漫画やゲームの世界でしか見たことない。でも二人は平然としていた。


「この細胞のせいであなたはもう封鎖区域の外で暮らすことは出来ません」

「っ!」

「一応外で暮らしたいと言うのであれば協力はします。ですが、傷が直ぐに治ってしまう事、あなたの能力はまだわかりませんが謎の力を持っている事を[外]の世界で隠し通せますか?

秘密を打ち明けても問題ないという人もいますか?」


確かにそんな身体になっているんじゃ[外]に帰れない。そんな重大な事相談出来る相手すらいない……。


「あと日本政府が公表してないだけで、血液検査とかそういうのするだけでロスト細胞あるかどうかわかっちゃうんだ。だから私は[外]で暮らすのはおすすめしないよ」


名取さんは難しい顔をしながら言った。検査するだけでわかるのか……。もう俺はここで暮らすしかないのか……。


「今あなたが知っておくべき事はこれくらいですね。私達は席を外しますのでゆっくり考えてください」


 二人は部屋を去っていった。

 俺の身体は本当に変わったのか?……確かめよう。俺はベッドから降りたが少しよろめいた。一週間も寝てたんだし当然か。

 気を取り直して、俺は部屋の中を見渡した。何か使えるものはないか。

 横を見るとあるものを見つけた。それは果物が入ってた皿だった。シリアスな話をしてたからな。うっかり持っていくの忘れたんだろう。だがそれよりも気になるのは、皿に入っているフォークだった。俺はフォークを手に取りじっと眺めた。

 …………決めた。

 

「ふぅ…………」


深呼吸をして俺はフォークを腕に突き刺した!


「ゔっ!」


 やっぱ痛えぇぇぇぇ!痛さに膝をついた。だがまだだ、確認しなければ。俺の身体が変わっているなら傷が治るはずだ。

 フォークを抜くと血が滲み出てきた。そしてティッシュで血をふき取った。そこにはフォークで付けた傷跡がなかった。


「マジかよ……」


 でも傷は直ぐに治るといっても痛みはまだ残ってるんだな。

 とにかく俺は傷が治るのを確認した。つまりおれの身体は変わってしまったのは本当だった。

 日常生活でうっかり転んで傷ができたり、知らないうちに傷ができたりとかよくある。誰もいない所で怪我をしたならまだしも、誰かに傷が治る所を見られたら化け物だと言われるだろう。

 それにロスト細胞は検査でわかるという。俺はまだ高校生だ。健康診断でわかってしまう。どの道俺に選択肢はない。

 …………父さんと母さんは今の俺の姿をみたらどう思うんだろう。いややめとこう。仮に俺を受け入れてくれる事があってもいずれ迷惑をかける。


「…………」


 空気の入れ替えでもするか。俺は窓を開けようと窓に近づきカーテンを開ける。カーテンを開け目にしたものは少し遠くにるが、何十メートルもある鉄の壁が見えた。

 鉄の壁は視界の端までみえた。この壁がくるっと囲んでいるのか……。窓を開けて少しだけ身を乗り出してみる。

 封鎖区域というくらいだから中はボロボロのイメージがあったが、結構きれいな街並みだった。でも20年前でその街並みの成長が止まっているせいで、少し古臭い感じもする。

 俺は窓を閉じてベッドに座った。

 友達と遊びに来ただけなのに死にかけて、目覚めるの普通の人間とは違う身体になっていた。たった一週間で俺の人生が変わった。

 今日は話を聞いてただけなのに疲れた。まだ外は明るかったが、また眠ることにした。

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