第4話 何もないじゃないバカーッ!
誰もいないPC室。
でもPC室は普段施錠されており誰かがいるはずなので、誰もいないという状態に、私は不信感を持った。
だから本当にそうなのか、まず私はそれを確かめた。
大して広くないスペースだ。人が隠れられる所なんかたかが知れている。
机の下。
教壇の横。
掃除用具入れ。
だけど、人が隠れていそうな所に人影はなかった。
それどころか盗聴器や隠しカメラ(ありはしないと思うが)などが置いてあるのかも確かめたが、何も見つからなかった。
ついでに教室の外に出て隣の教室を見てみたが、そこにも誰もいなかった。
誰もいない。
何も仕掛けられていない。
それを確かめた私は、息を大きく吸い込んで、
「――『PC室に行って調べろよ!』って何もないじゃないバカーッ!」
静かなPC室に絶叫が鳴り響く。
「何なのよあいつ! PC室に行って調べろって何を調べろって言うのよ! Web閲覧履歴でも調べろって言うの!?」
私は近くにあるPCの電源を付ける。
何台も何台もあるので、全部を確かめるわけではない。そもそも確かめられるわけがないことも分かっている。
だが言い訳しつつもここまで来たのに肩透かしを食らったことに対しての、中途半端な怒りの吐き出し先が見えなかったのだ。
とにかく開き、Web閲覧履歴を見る。
だが、特段特筆すべきサイトはなかった。
ライトノベルの発売日を調べたり、作者のTwitterを見たり――
「――これ、私の履歴じゃないの! ……って、当たり前か」
そもそも入ったのは学校で私に充てられていたアカウントであったので、履歴は私のものしかないのだ。
ここで少し冷静になり、ようやく履歴を確かめることじゃないことを頭で認識する。
「……じゃあ、なんなのよ……」
私は途方に暮れて机に突っ伏す。
美樹が意味ありげにメモを渡してくるから、ちょっと解いてやろうという気になったのに、今はその気力も萎えてしまっていた。
『お前に
この問題が解け
るか? 精々頭を使って
頑張れよ』
「頭……使っているわよ……」
ポケットにしまってあった紙を取り出し、そこに向かって唇の先を尖らせる。
まるでそのメモが彼であるかのように、文句を垂れ流す。
「あのね? 私ってそんなに頭悪いとかそういう風に感じたことなかったけどね、馬鹿にしているの? これは問題が悪いと思わない? ねえ? 分かっている? あんな態度で私を困惑させて、こんなメモを渡された時の私の気持ちが分かる? そして今の気持ち分かる? これで『メモを間違えていた』とかだったら許さないどころの話じゃないわよ」
ピンッ、とメモを指で弾く。
メモ帳は「ごめんなさい!」と謝ることもなく、成すがままに弾かれた分だけ揺れる。
と、その時。
メモが私の手から独りでに離れた。
え?
浮いた?
まさか動いた?
……などと一瞬だけ混乱したが、何が起こったのかはすぐさま理解した。
「――ふむふむ」
顔をあげると、そこにいたのは――美少女だった。
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