第2話 そもそも問題はどこにあるのよ?

 ひとしきり叫んだ後、私は冷静になった。

 美樹は私に対して何をしたかったんだろう。

 シチュエーションだけ見れば告白してもおかしくはなかったが、渡してきたのはただの紙。

 書かれていたのは次の四行だけ。 



『お前に

 この問題が解け

 るか? 精々頭を使って

 頑張れよ』



「……これだけでどうしろって言うのよ?」


 私は眉間に皺が寄るのを感じた。

 最たるものが『この問題』という指示語があるのに、その問題自体がどこにもないということだ。

 そして彼はこうも言っていた。

 『もし分からなかったらPC室に行って調べろ』と。

 現状はその通り、全く分かっていない。

 だけど――


「……なんかしゃくよね、すぐ行くの」


 私は完全に彼に頭に来ていた。

 彼の言うとおりにしてやるもんか、と思った。

 だからそんなヒントには乗らないで問題を解いてやる、と誓った。

 しかし……


「本当……なんなのよこれ……」


 私は渡された紙と向かい合った。

 透かしても何もない。何かが上に書かれているわけでも、

 反射させてみても、特殊なペンで書かれている様子も見られない。

 火であぶってみようとも思ったが、私は不良ではないので火器類を持っていない。

 ということは、紙自体に何かあるとは思わない方がいいだろう。


 であれば注目すべきは――『問題』という言葉。


 問題を解け、という前にその問題を探さなくてはいけない。

 そしてそれはきっと、この学校にあるに違いない。

 問題がどこにあるか。


「……そっか。だ……」


 問題が何かではない。

 問題がどこにあるのか。

 この紙はそれを指しているのだろう。


 この学校で『問題がある』といわれて、真っ先に思い当たる場所があった。



「――生徒指導室!」


 私はすぐさま教室を飛び出し、生徒指導室を目指した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る