愛だと思った
“もう好きじゃなくなった”
そのメッセージを受け取ったのは今年の5月だった。友達の梨奈に誘われた2対2の飲みで知り合った、一つ年下の彼から急に別れを告げられた。あんなに好きと言われていた三日前。理解ができなかった。だから縋ってしまったのだ。
‘私は、どうしたらいい? まだ好きだよ’
“だから、怜に好きな人が出来るまで待つよ”
なんて、いい人ぶる言葉に腹が立ったのにまだ「彼女」という名前を持っていられることに、分かったと言うしかなかった。「好き」という口約束は、見えない感情のせいでいとも簡単に人を傷つける。傷つけられた側の事は何も考えずに。
それからは何も出来なかった。回数の減ったLINEに傷ついて、前に進みたくても何故か思い出は消えない。体調が悪い気がした。頭が痛い。目が痛い。
数日後、別れ話の前に約束していたご飯の予定を果たすために彼に会った。何故か違和感を感じた。この人の隣ってこんなに居心地悪いものだったのか。話しを聞いて頷いて、めんどくさいようなことばかりだった。手を繋いでもキスをしても、何も感じなかった。
「ねぇ怜」
「何?」
「最後にさ、しよ?」
「…え?」
「だから、セックスしよ」
「…わかった」
一瞬で分かった。彼は私じゃなくてもいいんだと。誰とでもセックスできる。そこに愛なんかなくったって。そして分かってしまった。私もそうなんだと。彼に対して何も感じなかった。でも身体は関係ない。愛がなくても感じるものは感じてしまうのだ。虚しさに差があるだけで。
近くのラブホテルに行き、特に会話もせずキスをした。あっという間に天井のライトが目に入った。彼の肩越しに見えた景色は、大好きだった時とは違うように思えた。果てた後の愛の言葉は、知らないうちに消えていた。
「何も感じないや」
「うん、俺も。そんなもんだよ、付き合うなんて」
「…そうだね」
私が彼を好きだった事実は変わらない。けれど人の気持ちはいとも簡単に移ろい、変化して良くも悪くも過ぎ去っていく。何かを一つずつ諦めて少しずつ進むしか方法がない。そう思えた。
そして私は、分からなくなった。
「愛」するということが。
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