第3話

河原に妊婦の亡骸を葬り

おじいさんとおばあさんは赤子を連れて

家に帰りました。


おばあさんはおじいさんに、今朝聞いた話をしました。


「明日、その村に行ってみよう。もしかしたら、誰か生き残っているかもしれん」


翌日、おじいさんとおばあさんは

赤子を連れて川上の村へ向かいました。

村に近づくににつれ、焦げた匂いが強くなります。

やはり、みんな焼けてしまったのでしょうか…


村の入口に差し掛かった頃

道の先に若いおなごが立っていました。


「おーい、この村のものか?ちょっと聞きたいことがあるんじゃが」


おじいさんが声をかけましたが

おなごは村の中へ入ってゆきました。

おじいさんとおばあさんも後を追って村の中へ入ってゆきました。

村は焼け野原でした…。


「おーい、何処へ行ったんじゃ?」


先ほどのおなごを探して歩いていると

焼け落ちた家の前におなごが立っていました。

おじいさんが近づいてみると

おなごは家の中を指差しました。

灰の中に、封をされた壺がすこし見えています。

おじいさんが不思議に思って壺を掘り起こしてみると、壺の中から綺麗な織りの巾着と、その中に何枚もの小判が入っていました。


「こ、これは…!」


おなごはもう何処にもおりませんでした。

この小判は誰のものか解りませんが

この農村で、こんな綺麗な織りの巾着と小判を持っているのは

あの側室以外に考えられません。


「どうすべか…」


「おじいさん、この小判はこの子の為に使いましょう」


「そんな、泥棒みたいな真似…」


「置いていけば、本当に泥棒に盗まれます。

この子の為に使ってやったほうがいいです」


そうして

おじいさんとおばあさんは、その小判を持ち帰り、赤子の為に必要なものを買いそろえてやりました。


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