思い付いたトラウマ

真坂 裕

悪気がなかったらノーカン

 なんや分からんが超能力でも与えるような暇な奴も居るようで、小学生の頃から「死ね」と思われた人の頭の上に思われた回数が見えるようになりましたんや。

 まあ悪気なく言ったりふと軽く思ったりしたような「死ね」なんてのはカウントされんらしくてな、言うてもクラスのやんちゃ坊主が二桁行っとるようなもんやったんや。

 まぁこんなもんじきに治るやろ思いましてな、しかしまぁ数年経っても治りませんねや。

 中学に入った辺りで大体分かってきましてな、ま~くっだらん能力やなぁ。って思ったんですがこれが結構考えてみると便利なもんなんですわ。

 人付き合いをする時に「死ね」思われた回数が少ない奴なんてのはけったいな性格の奴が少のうてなぁ、そんな人とばっかり付き合うようになったらまぁ楽なんですわ。

 そんな自分もやっぱり思春期なもんで、好きな人の一人や二人・・・・・・いやまぁ現実には一人なんやけども、出来ましてな。ま~奥手やからえろぉ恥ずかしぃて近寄れんかったんですわ。顔なんて見てしもたら最後心臓のバクバクで死んでまうかと思いましてん。

 しかしここで気になるのが頭の上に見える数字や。

 えっらいけったいな事にこの数字、ある程度距離つめんと見えんのですわ。

 そんなわけで好きな人が出来たのはええけどもその人の性格までは分からずじまいのまま、しばらく過ぎましたんや。

 まぁ友人はちょこちょこ居りましたさかい、おう○○、あいつのメールアドレス知っとるか?なんて学生通しで情報交換も盛んでなぁ、冗談抜かしてたはずが自分もその好きな人のメールアドレス、聞けましてん。

「死ね」思われた回数の少ない奴はええ奴ばっかりやと、実感しましたわ。

 まあそんなわけでボチボチと過ごしてたんですがね、まぁけったいな筆無精やさかいええ加減に話さな卒業してまう時期になってしもてな、こんにちは~、○組の□□ですねん。などとメールしとったんですわ。

 そしたら向こうも気がついとったみたいで「やっと送ってくれたんやなぁ、待っとったで」なんて返してくれて、しばらくはメールのやりとりしとったんですわ。

 そんな甘い戯れ言を繰り返してたらいつの間にか卒業しまして、まぁ最後の機会や会おたろか思いましてんや。

 その頃になるとまあ数字が見えるのにも慣れてきましてな、言うても普通の奴程度、せいぜい50やか60やかそのへんやろうと思っとったんですわ。

 んで当日や。

 こんにちわ~言うて。言うてもこっちも奥手やさかいに相手の顔なんて見れんわけや。

 ああ、言い忘れとったな。「死ね」思われたりした回数はな、頭の上に出よるさかいあんまりにも下向いとると見えんのや。ある程度上向いたら嫌でも見えるさかい基準は適当なんやろうが。

 んでまぁカフェ行って茶しばいて、会おてみて面と向こうて話しても(面は向こうとらんのやが)えらいべっぴんな性格しとってな。ほな今日はまた言う時まで恥ずかしゅうて見れんかった顔を勇気出して見たんや。

 そしたら頭の上にはな

942349151376457349464973738446767394465548513457286915376181656493764546188727944638928286181243946451346943794282828431816002764010344673686

 あんまりにもこわぁてな、すぐに逃げて帰ってきたわ。

 その人はってか?もうよぉ覚えとらんが、別の高校行ってからは疎遠になってしもうてな。それからや、人の頭があんまり見れんようになってしもたんは。

 これでしまい。さ、自分がなんでずっと下向いてるか、分かったやろ?ん?もちろん事実やがな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

思い付いたトラウマ 真坂 裕 @sakasamamassakasama

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ