2−10 業
・暗殺の才能※ ・徒手格闘の才能※
・奇襲の才能 ・魔法応用の才能 ・逃走の才能
・魔法薬作成の才能※
・調薬の才能 ・調合の才能 ・アイテム作成の才能
・脅迫の才能 ・交渉の才能
・罠設置の才能 ・鍵開けの才能
提示された可能性は存外多く、それぞれが魅力的で、許されるなら1週間ほど悩み込みたいところだった。しかし、キャンセルする場合キャンセル料が発生する。それは大した額ではないが、得られる才能がない時も同様で、いかにも勿体ない。
あからさまに扱いに困りそうな暗殺の才能は論外としても、選択肢は12もある。そのうち2~3を取得できるというのだから、即決しろとはなかなか酷なことを言ってくれる。
気になるといえば、やはり魔法応用の才能だ。魔法の才能がないのにどれだけ恩恵があるのか。魔法を使った際のあの疲労感の軽減はあるのか。魔法関係の才能は手に入りにくいと聞くし。
斥候としての本分を思えば、鍵開けはとっておくべきだろう。つい最近もなくて苦い思いをしたところだ。暇を見つけての訓練だけでは高が知れている。
将来の生活や収入を思えば魔法薬作成の才能は極めて有用な選択肢だが、これを取得すると他に取得できる才能は1つだけ。なんとも悩ましい塩梅であった。
「……魔法応用、アイテム作成、鍵開けで」
神官にせかされるぎりぎりまで粘って出した結論は、後から振り返ればもしかしたら後悔するかも知れない中途半端なものだ。しかし、鍵開けを選ぶ以上は将来の事だけを考えるわけにもいかないし、現状でも役立てれそうな無難な物を選ぶというのも大きな間違いではないだろうと思いたい。
……こうして皆が皆時間をかけて悩むから、神官はやってくるのに時間がかかるのだろうか。
「では。……レベルはぎりぎりですが4と評してもよいでしょう。レベルアップおめでとうございます」
儀式の終わりになって、ちっともめでたく思っていなさそうな声で、神官は俺のレベルアップを祝ってくれた。
◇◆◇
「逃走、罠設置、鍵開けの3つかと思ったんですけど」
と、ギルド受付嬢さんは帰り道になって俺の選択に首を傾げた。
確かに斥候としての能力だけを考えるなら、それが1番の選択だと俺も思う。
個人で行動することが多い俺のスタイルを加味すれば、鍵開けと徒手格闘や奇襲+逃走という選択も悪くない。悩みに悩んだ結果、結局興味に勝てなかったのだ。
「好奇心は猫を殺すと言いますし」
「アデルさん、今まで1度も死んでないですし、すごく慎重派だったと思ってたんですけど……。殺されると判って好奇心で飛びつくのは、らしく無いような」
ギルドでクエストを受けたり報告をしたり、或いは採取物の清算をする際に必ずしも彼女が担当してくれるとは限らないので、彼女と言葉を交えたことは思い返してみればあまり多くない。だというのに、彼女はずいぶんと俺のことを意識してくれているらしかった。
「1度も死んでないとか、よく知ってますね?」
「そりゃあ知ってますよ。私はアデルさんの担当官ですよ? それに、駆け出しの冒険者さんは何度も何度も死ぬのが普通なんです」
油断して、あるいは増長して無理をした結果死んでも、装備を失うだけだ。やり直しが効く。失敗に学ぶというのは、冒険者にとって常なのだろう。
俺が大した功績を上げていないのにランクアップを果たせたのは、そのあたりのマイナス評価が少なかったからという要因もあるに違いない。
「まぁ、そりゃあ、死にたくないですからねぇ」
溜息とともに俺はそう呟いて、ギルドの裏口の扉を開けた。
◇◆◇
現在冒険者ギルドが閑散としているのは、皆
俺には理解できないし、する気もない。
隣に別パーティがいるというのはなかなかストレスだ。冒険者の皮を被った盗賊でないとも限らない。面識がなければなおさらで、前回の遠出後半は気苦労が絶えなかった。
今思えばリーダーを筆頭とするセクハラの数々は、そんな俺の緊張を解そうとしていた気遣いなだったのかも知れない。確かめる術はないし、確かめようとも思わないが。
そんな縄張り熊討伐から1週間。モンスター達の動向に関する情報がギルドには多数入っているようだった。
資料室でざっと公開資料に目を通すだけでもモンスターの移動と縄張りの変化が伺える。この混乱の具合を見るに、南方面ではしばらくの間前情報に基づいた安全な探索は不可能だろう。万が一大型級モンスターとの連続戦闘などということになれば目も当てられない。
だからこそ、死に戻りを前提とした調査隊などが編成されているのだろうが。
その混乱を避けるとすれば、北か。
今週の報告は南の様子ばかりで北の情報がほとんどない。それでもどうにか断片的な情報を繋ぎ合わせて現状の把握に努めていると、背後で資料室の扉が開いた。
それ自体は、気に留めるほどの事でもない。冒険者ギルド内での敵対行為などという破滅願望を持ち合わせた人物などまずいないのだから、暗殺の指名を受けるような事情でもなければ気を張る意味はない。しかし、扉を開けた人物が俺を見るなり、呆けたような声を出したとなれば話は別だ。
「あ」
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2018/09/30 ルビ化失敗を修正
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