エピローグと後書き

エピローグ(その1)

 その後、屋敷に集まった龍野達は、最後の数十分間を談笑して過ごしていた。


「……えっ?」

 ディノは現在の状況に、しどろもどろになっていた。


 アルマ帝国の面々が、揃って跪いていたからだ。


「我らが守護神よ、ありがとうございます」

「「ありがとうございます」」

 代表して感謝を述べているのは、ネーゼである。

「あぁ、確かにオレはアルマガルムだけどさ……」

 正確には“インターフェース”であるが、格としては同じである。つまりディノも、れっきとした“守護”なのだ。


 ディノははにかむと、一言「帝国のみんなの為さ!」と返した。

 その言葉を聞いたアルマ帝国の面々はただひれ伏し、それ以外の面々は「「おおーっ!」」と、拳を握りしめて腕を高々と挙げていたという。


     *


「ただいま、72時間が経過いたしました。これにて、本戦争を終了いたします。繰り返します。これにて、本戦争を終了いたします……」

 戦場全域に、終戦を告げるアナウンスが響き渡った。

 元より刻限を定められた戦争だ、いつかはこうなる。誰もが知っていた事ではあるが、反応は様々であった。

 心より安堵する者、食い足りないと不満を漏らす者など。


 しかしカンパニーは、そんな者達を待ちはしない。

 次々と生き残った“代理”を、元の世界へと転送していく。

 だがここでも、J陣営は“例外であること”を見せた。

 龍野達は、屋敷を残して(つまりシュヴァルツリッター・ツヴァイの残骸も)、フーダの前に転送させられたのであった。

「皆様、いらっしゃいましたわね」

 初日、いや戦争開催前に出会った剣吞さはどこへやら、フーダは王女らしく――とまでは行かないものの、それでも龍野達にぺこりと礼をした。

「まずは一言、失礼いたします。


 皆様、この時までありがとうございました」


 その言葉で、周囲が一気に引き締まる。

「ご存知の通り、私に力はありませんでした。

 けれど、そんな私にも関わらず、皆様は招きに応じて下さいました。……何とお礼を申し上げて良いのか、分かりません」

 多少つっかえているが、フーダは今、自らの意思を自らの言葉で述べていた。

 居合わせた全員は誰も口を挟まず、誰も横槍を入れず、ただ言葉を聞いていた。


「……これ程の助けがあれば、私は社長になれるでしょう。

 次にお会いする時には、是非皆様の笑顔を見たい、そう思います。


 今まで、ありがとうございました!」


 最後は力強く締めると、一斉に歓声が沸き起こった。

 と同時に、集まった“代理”やアルマ帝国の面々の体を、光が包み込み始める。

 しかし何故か、龍野、ヴァイス、シュシュ、武蔵、リーゼロッテには光が無かった。

「今、帰還が始まりました。皆様、最後の言葉を……」


 そうフーダが言うと、早速龍野がハーゲンに話しかけた。




「なあ、ハーゲン」

「何だ?」

「次に会う時は、お互い強くなってるといいな」

「おうよ!」

「後、そうだ。“良いしらせ”ってのも、聞かせてほしいぜ」

「おう」

 二人は拳を握ってぶつけ合い、互いを讃えた。

 しかし龍野との約束は守られなかったというのは、とある未来の話である。




「では、アルマ帝国皇室の皆様。お世話になりました」

「またご縁がありましたら、よろしくお願いいたします」

 ヴァイスとシュシュは、ネーゼ、マユ、ミサキ、ララのアルマ帝国皇女達と、別れを惜しんでいた。

「時に、ネーゼ殿下」

「はい、ヴァイスシルト殿下」

 ヴァイスがいたずらっぽく微笑みながら、ネーゼに耳打ちする。

「次は二人のご子息を、お目にかかりたいですわ」

「! ま、まあ、ヴァイスシルト殿下ったら……」

 既にこれ程の言葉を交わせるまでに、二人の仲は親しくなっていた。

 しかし、守られない未来もあるという事を、ヴァイスはまだ知らなかった。

「では、マユ殿下、ミサキ殿下、ララ殿下。ありがとうございました」

「こちらこそ、ヴァイスシルト殿下にシュヴァルツシュヴェーアト殿下」

「企み事などございましたら、ご一緒させていただきますわね」

「次はヴァレンティアの文化をお目にかかりたいものです!」

 かくして、アルマ帝国の面々を始めとした“代理”などの戦力は、戦場より完全に帰還した。




「うわ~ん、龍野ぁ~、シュシュちゃ~ん!」

 光に全身を包まれた玲香は、泣きながら龍野とシュシュに抱きつく。

「おいおい、泣くなよ。確かに、寂しいけどさ……」

「ええ、寂しくなりますわね。遠山准尉」

「もっと一緒に居たいよ~!」

 ダダをこねる赤子となった玲香だが、やがてフッと表情を切り替える。

「けど、これでお別れなんだね……」

 それを聞いた龍野は、力強く返した。玲香に惚れられた、男として。

「そうだな。だから俺が、最後に抱きしめてやらぁ!」

「兄卑、わたくしも!」

 シュシュも一緒に、玲香を抱きしめる。



「二人とも……。ありがとう!」



 最後に感謝の言葉を告げると、玲香は笑顔で去って行った。


     *


「さて、そろそろかな」

 龍野達も、帰還の時を待っていた。

「待って……待って!」



 しかし、フーダは龍野達を呼び止めたのであった。



作者からの追伸


 有原です。


 さて、自主企画は本日(2018/11/13)の23:59を以って終了です。

 しかし有原は、まだエピローグを書き終えておりません。



 つまり自主企画終了に間に合わないと言う事です。



 まあ、それは良いのですよ。

 バーダクライド級をボッコボコにするまで、エピローグは迎えないつもりでしたから。

 もっとも、11/15までには終わらせますがね。




 そしてここからが重要です。


 人には、やがて別れが訪れる、というものです。


 次回は、作者の私もうっかり泣いてしまいそうになりますね。

 では、今回はここまで!


追伸:やっつけじみた別れとなり、申し訳ございませんでした。

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