vs 宇宙戦艦バーダクライド(その3)

「龍野ッ!」

 ディノの悲鳴の先には、レーブル級とバーダクライド級の主砲を浴びるシュヴァルツリッター・ツヴァイがあった。

『あぁあああぁあああああああぁあああああッ!』

 制御機能が壊れ、龍野の叫びが漏れ聞こえる。

 機体を直接イメージで制御する以上、何よりも想像力と気迫が大事なシュヴァルツリッター・ツヴァイは、ひたすら主砲を受けながら逸らし続けていた。


「クソッ、頼むから死ぬなよ!」

「あはははっ! いいねぇその気迫、応援したくなっちゃうなぁ!」

 一方、ララと謎の少女は、それぞれの得物を構えていた。

「はぁあっ!」

「えいやっ!」

 それぞれ、小石と槍を投擲する。


 バーダクライド級の砲撃に命中した得物は、砲撃の軌道を空中で反らし、爆散した。


「まだまだ、これからだぞ」

「槍はこれだけじゃなーいもんっ♪」

 二人は臨戦態勢を整え、依然として接近し続けるバートラス達の排除を始めた。


     *


『ぐぅっ……』

 爆心地から、龍野のうめき声が聞こえる。

 元より丈夫さが売りの『土』と、シュヴァルツリッター・ツヴァイの障壁性能の強化・増幅、そして機体を還元して得た莫大な魔力のお陰で、龍野はどうにか持ちこたえていたのだ。

『おい、大丈夫かみんな!? のぉわっ!』

 と、間の抜けた声が響く。

 遅れて、重い音を立てて土煙が上がった。

『おいっ、シュヴァルツリッター・ツヴァイ! 返事してくれ! おい!』

 龍野の怒号が、周囲に響き渡る。

『おい! クソッ、ダメなのかよ……こんな、時にっ!』

 龍野が何かを殴りつける音が聞こえる。

『龍野っ、動かないで!』

 と、ディノからの念話が届く。

『何だよ、ディノ!?』

『事情は後で説明するから、今はそこで待ってて!』

 念話が終わる。

 そのわずか5秒後、シュヴァルツリッター・ツヴァイの

「おわっ!?」

「ごめん、荒っぽい事をした。とにかく一旦出て!」

 眼前に延ばされたディノの腕を掴み、龍野がシュヴァルツリッター・ツヴァイから脱出する。

「よしっ」

「なあ、どういうつもりだ、ディノ?」

「龍野。今からオレの言う通りにして」

 このどうしようもない状況を見た龍野は、すぐに頷いた。


「ふむふむ……。って、はぁああああああああっ!?」


 その後、龍野の素っ頓狂な声が響いたという。


     *


「くっ、一体どれだけいる……!?」

「ダイバリオンのビーム砲も、ブーメラン達ならともかく……あんな戦艦クラスの敵達気持ち悪い奴らには届きそうにないよ……!」

「いくら圧倒的な霊力があるとは言っても、既に残量は65%か……。これだけの数では、流石にネーゼ様のリナリアでも持たないぞ……!」

 その頃、死力を尽くして防衛ラインを維持していた部隊は、常識の埒外にある物量に、未だ苦戦していた。

「っ、ムサシ! あれ!」

 と、リーゼロッテが撃墜されるバートラスの一群を見つける。

 その近くには、ギリギリ見える棒――いや、槍があった。




「うひゃぁ、凄い数! これって、“どっちを向いても敵だらけ”ってやつだよね!」

「だが、退しりぞくく訳にはいかんな……!(気になるが、今は心強い味方だ! 謎の少女よ、今しばらく助力を乞おう!)」

 一連の攻撃の正体は、謎の少女とララであった。

「さぁ~て、これだけいるなら食べ放題だよね!」

「力を惜しんではいられん、脅威度の高いいくさぶねから排除する……!(この際、バーダクライド級のみとは言ってられんな……!)」

 謎の少女は空中へと疾駆し、ララは小石をまとめて投擲した。


     *


「龍野君、今助けるわ!」

 その頃。

 手紙に導かれ、漆黒の壁に手を添えたヴァイスは、既に純白の鎧騎士となっていた。

「今は、信じる他無いわね……!」

 そしてヴァイスが目を閉じると同時に、光に包まれて消失した。




「ここは……戦艦の、中?」

 再び目を開くと、巨大な構造物の中にいた。

 と、声が響いた。

「侵入者だ!」

「撃て!」

 ビームライフルを発砲する猿人とトカゲ人間。

 だが、ヴァイスの障壁の前には無力であった。

「はぁあっ!」

 瞬く間に距離を詰めたヴァイスは、魔力を纏わせた腕で兵士二人を瞬殺する。

「さて、都合よく見つかった事ですもの。一人くらいは生け捕りにして、中枢部の位置を――」

 と、念話が入った。

『ヴァイスシルト殿下でしょうか?』

『ええ。そちらは?』

『アルマ帝国第三皇女、ミサキ・アルマ・ホルストです。現在、どちらにいらっしゃるでしょうか?』

『えっと……“バーダクライド”とあります』

『それは都合が良いですわ。早速ですが、そのバーダクライド級の中枢へと案内致します』

『頼みますわ』

 ミサキの案内を得たヴァイスは、指示された方向へと走り始めた。


     *


「そう。オレとキスして」

「キス……」

「迷ってる暇じゃないでしょ、龍野!」

 一瞬の逡巡が龍野の脳内を駆け巡るが、ディノの叱咤で振り払った。

「そうだな! 信じるぜ、ディノ!」

「そうこなくっちゃ!」

 龍野とディノは、互いの両頬に手を添えた。

 そして目を閉じると、唇を重ねた。


     *


「ぐっ……」

「大丈夫か、進藤少尉!? くっ!」

 その頃、防衛ラインの機体はいずれも小破していた。

「大丈夫だ! ……ッ、右だ遠山准尉!」

「うわぁっ!」

 無数のバートラス達に殺到され、圧殺寸前にまで持ち込まれていた。

「くっ、頼むリナリア……!」

 ハーゲンがテレポート機能を用い、自身諸共転移しようとする。


 そこに極大のビームが通り抜け、バートラス達を一掃した。


「!?」

「助、かった……?」

「って、何アレ!?」

「まさか、アレは……!」

 四人の視線の先。


 そこには、黒と銀の鎧を纏い、龍の尻尾を備えた、全高103.5mの騎士が存在していた。


     *


「さあ、契約通りだよ龍野!」

「ああ、ディノ! やってやるぜ、このアルマガルムエグゼ……いや、ちょっと足らねえな。そうだ、こいつで行こう! 


 この“アルマガルム・アークエグゼ”でな!」


 ディノとのキスを終えた龍野は、アルマガルム・アークエグゼのコクピットに座していた。



作者からの追伸


 さあ、反撃開始!


 え、本来は全高40m? ディノの時点では100mもない?

 申し訳ありませんが、「乗り手によって形状が変化する」という設定を反映させていただいた以上、全力で魔改造させていただきますとも!


 とまあ言う事を言いましたが、あまりに目に余る場合は一言お願い致します。

 修正いたしますので。


 では、今回はここまで!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る