vs 宇宙戦艦バーダクライド(その2)

「クソッタレ……! 墜としても墜としても、キリがねえぜ……!」

 何機撃墜しても、バートラス達はひっきりなしに襲い来る。

 少数が固まる波状攻撃の為、自慢の広範囲攻撃も迂闊に使えず、龍野達は疲弊し始めていた。

「一体いつまで来るのさ、ボクとダイバリオンもそろそろ……」

「諦めるな、龍野、遠山准尉! 俺達が敗れれば、そのまま壊滅と思え!」

 そう。

 拠点となる屋敷は強化アカンサス二機他に防衛させているとは言え、包囲、しかも空中からの攻撃すら合わせた全方位攻撃に対しては、到底凌ぎきれない。

 実質、龍野達主力部隊が最終防衛ラインという有り様であった。




「くっ、奴ら……! 何が何でも、バーダクライド級だけは守り通すつもりか……!」

 一方のララもまた、苦虫を噛み潰していた。

 バーダクライド級を狙った投石が、ことごとくレーブル級エイどもアークレイズ級サメども、あるいはバートラス達ブーメランどもの身を挺した防御により、無効化されてしまうのであった。

(まずいな……。投げる物は小石だから尽きる事は無いが、霊力は流石の私でも限界はある……。くっ、せめてネーゼ姉さまから補給を受けられればいいのだが……。クソッ、一体どれだけ集めたというのだ!)

 そう。

 ララの馬鹿げた力――特に次元跳躍投擲――は、霊力に由来するものであるが故に、有限である。

 その為、出来るのは後4、5発が限度であった。

『マユ姉さま、霊力が……!』

『一時撤退なさい。ネーゼ姉さまで回復次第、もう一度頼むわね』

『はい(済まん、諸君……。少しだけ、持ちこたえてくれ……!)』

 マユがララとネーゼを一軒家にテレポートさせた事で(ララはサポートルームに来れない為)、補給が始まった。


「! オレのセンサーが、ビンビン来るっ!」

 その頃、一軒家にいた――龍野から置いてけぼりを食らった――ディノは、何やら震えていた。

『龍野、聞こえる!?』

 念話を飛ばすが、果たして――

『何だ!?』

 応答があった。

『二隻のレーブル級エイ野郎が、ここ拠点を狙ってる! 屋敷の直上で防御して!』

『見えるのかよ!?』

『見えてるよ!』

『ええいっ、クソッ……今行く!』

 それきり、念話が終わる。

(頼む……龍野、いやみんな……勝ってくれよ!)

 今のディノには、祈る事だけが出来たのであった……。


     *


 この圧倒的な戦力に押し込まれても、戦場は比較的無事であった。

 何故なら、リンド陣営――正確にはJ陣営以外の全陣営だが――は、南に集合した龍野達を最上位排除対象としていたからだ。

 故にこれまでの包囲攻撃には、損耗しても惜しくない兵力無人機達を回し、秘密裏に協力を行っていたのだ。


 そして、今回の特大規模の兵力投入の大半――特にバーダクライド級、レーブル級、アークレイズ級といった艦艇――は、ほとんどが南の屋敷や内部に存在する戦力を排除する目的で投入されていた。


「邪魔者を排除してからゆっくり掃除する」――そう考えているが故に、戦場は混迷さの割に比較的小規模な被害で済んでいたのである。


 だがそんな事実は、何の慰めにもならない。

 屋敷へ急行する龍野を始め、その場に存在する全ての戦力にとっては……。


     *


「間に合え……ッ!」

 龍野がディノの指示で、屋敷の直上へ到達する。


 と、同時に閃光が龍野を襲った。

 レーブル級二隻から同時に放たれた主砲が、シュヴァルツリッター・ツヴァイを襲ったのであった。


「クソ……ッ! けどよ、何が何でも、守り切って……やる、ッ!」

 とは言ったものの、正直、分が悪すぎる賭けであった。


 しかし、それでも退く訳にはいかなかった。

 今退けば、ネーゼ、ララ、そして戦えない全員が即死する。


「クソッ、タレがぁああああああッ!」

 龍野は叫びつつも、シュヴァルツリッター・ツヴァイの障壁に有りっ丈の魔力を送り込む。

 龍野の圧倒的な魔力量を以てしても、受け止めるのが精一杯であった。

『いけない、龍野!』

 ディノの警告。

『バーダクライド級が、キミを……ッ!』

『冗談じゃ、ねぇっ……!』

 そう。

 レーブル級二隻に加え、バーダクライド級までが屋敷を排除しようと主砲の砲口を向けていた。

『今のこれですら精一杯なのに、これ以上は持たねえぜ……!』

『後、少しだけ……!』

『しゃあねぇな!』

 龍野は手持ちの魔力をほぼ障壁に回す。

『ヴァイス、シュシュ! ヴァイスリッター・アインとツヴァイから魔力回せるか!?』

『やってみるわ』

『待ってなさい、今還元するわ! その代わり、全部使い切りなさいよ……!』

『当然だ!』

 程なくして、足元から青色の光の粒子が漂い始める。

(済まねえな、二人とも。きっちり使わせてもらうぜ……)

 防御に傑出した『水』の魔力を得た龍野は、その全てを障壁に回し始める。


 直後、バーダクライド級の主砲がシュヴァルツリッター・ツヴァイを襲った。


     *


「っ、これはいかん! 須王龍野!」

 ネーゼからの霊力の補給を終えたララは、居ても立っても居られず、屋敷から飛び出した。

「あははっ」

「!?」

 と、そこに手に槍を持った金髪の少女がいた。

「あはははははははっ!」

(だ、誰だ!?)

 ララはその少女を警戒するが、少女はララを気にも留めていなかった。


「どこを見ても敵だらけ! これだから、戦場は楽しーよねっ! あはははははははっ!」


 少女が見据えていたのは、無数のバートラス達――即ち、であった。



作者からの追伸


 はい、有原です。

 次回から面白くなってきます。


 そうだ、この際だから一言だけ。

 南木様、一週間お待たせしました。

 大分キャラクターが戦闘狂寄りに崩壊しておりますが、あの子を助っ人として参戦させます。


 そういう訳ですので、今しばらくこの絶望をお楽しみくださいませ。

 では、今回はここまで!

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