もたらされた“絶望”

「決闘終了。勝者、“進藤武蔵並びに漆黒”。繰り返します。勝者、“進藤武蔵並びに漆黒”。これにより、J陣営に1のアグニカポイントが付与されました」

「よし、終わったな」

 時刻は午前10:53を迎える。

 敵“代理”の機体を撃破した武蔵とリーゼロッテは、シュシュの命令で撤収作業に移る為に、拠点である一軒家へと漆黒改を向かわせていた。

『シュシュ、聞こえるか』

『何かしら、進藤少尉?』

 と、その最中さなかに通信を入れる。

『妙なエネルギーの流れを感知した。どこか高空に収束していると推測出来るが……何でもいい、収束箇所を確認出来ないか?』

『やってみるわ』

 シュシュが素早く、データを集め始める。


「ねえ、ムサシ」

 と、リーゼロッテが武蔵に呼びかけた。

「こうして二人きりなのも、何年ぶり、かな?」

「さぁ、何年ぶりになるのかな……。十年以上昔の話になる、だろうなあ」

「そっか。そんなに、離れてたんだね」

「なあ、リズ」

「何?」

「この戦争の後はどうする?」

「うーん、軍を裏切る事になったから……。ヴァイスシルト殿下かシュヴァルツシュヴェーアト殿下に頼んで、ヴァレンティア王国の国民にしてもらおうかな」

「いいな。おれも帝国軍を除隊するか」

「うふふ、嬉しいな。それで、のどかな場所に……」

「おっと、後にしよう」

 武蔵は名残惜しそうに、しかしはっきりとリーゼロッテの言葉を遮る。

『邪魔して悪いわね。解析結果が出たわ』

『どこだ?』

 シュシュはゆっくりと息を吸うと、はっきりと告げた。

『高度20,000m、エリア「レジェンド」上空よ』

 と、その刹那。



 膨大な光が、漆黒改のカメラを覆いつくした。



『なっ……何だ!?』

『ぐっ……!』

 機体を揺らすどころか吹き飛ばしかねない衝撃波が、漆黒改を、武蔵とリーゼロッテを襲う。

『お二方!』

 シュシュも動揺しているが、すぐに冷静さを取り戻した。

 だが、戦場での混乱は治まっていなかった……。


     *


 30秒後。

『お二方、ご無事ですか?』

 シュシュが安否を確認する。

 と、即座に応答があった。

『ああ。何とか、無事だ……』

『ええ。謎の攻撃の着弾地点から、ある程度の距離はありましたから。しかし……』

 リーゼロッテが絶句する。

『もしもし?』

 シュシュが慌てて、漆黒改のカメラと同期させる。

『……ひっ!』


 そこには、見渡す限りの“絶望”があった。



作者からの追伸


 はい、時刻は午前10:55を迎えました。

 予告した通り、アイツを出します。



 そうです。

 “宇宙戦艦バーダクライド”、戦争自体を無かったことにしようと活動を開始いたしました!



 次回からはこのバケモノを撃破する為に、龍野達に動いてもらいます。

 ただ、手駒は揃っております。


●我らが主人公、須王龍野と愛機“シュヴァルツリッター・ツヴァイ”

●我らがヒロイン達、ヴァイスシルト・リリア・ヴァレンティア並びに

 シュヴァルツシュヴェーアト・ローゼ・ヴァレンティア

●突如現れた味方、進藤武蔵

●アルマ帝国最強の戦力、ララ・アルマ・バーンスタイン

●アルマ帝国最強の操縦士ドールマスター、ハーゲン(・クロイツ)

●アルマ帝国の守護神が一柱、ディノ

●その為集結せし戦力


 あら不思議、負ける気がしない。


 はい皆様、大船に乗った気分でいてくださいませ。

 では寸劇を始めましょう!


---


グレイス

「釈然としませんわね。まさかの『引き分け』とは……」


ブレイバ

「結局、賭けには負けちゃったか」


ブランシュ

「ではクッキーを一枚ずつ頂いて……えいっ!」


グレイス

「お母様?」


ブレイバ

「わざわざ僕達に返したのかい?」


ブランシュ

「ええ。やはり、みんなで仲良く食べたいですわ」


グレイス

「お母様らしいですわね」


ブレイバ

「やっぱり姫様の性分は、相変わらずだったか。あっはは」


ブランシュ&グレイス

「うふふ」


     *


ララ

「投石で黙らされたアイツが来るとはな。もっとも、今回は攻撃阻止の役割に甘んじるとしよう」


玲香

「そうだね、ララちゃん(“ダイバリオン”を起動させつつ)」


ララ

「しっかしまあ、憎たらしい程までに穏やかな会話だな。涙が出そうになる(『戦場を知らない事への皮肉』で言ったのではなく、私には彼氏がいないのだ……。ああ、本っ当に羨ましい……)」


---


 はい、戦場が悲惨な分、追伸でほのぼの(またはイチャイチャ)させませんとね。

 では、今回はここまで!

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