三度、迎えた朝
「では、わたくしの命令通りに」
昇る太陽を見る事三度。
この戦争も残り6時間と言う所で、
「承知した、シュシュ。敵陣営の“代理”を屠ってくる」
「わかりましたわ、姫様。このリーゼロッテ・ヴィルシュテッター、助けていただいた恩を返しましょう」
二人の騎士こと進藤武蔵少尉とリーゼロッテ・ヴィルシュテッター少佐は、受けた命令を遂行しに北へと赴く。
その様子を見ていた男が、シュシュへと疑問を投げかけた。
「なあシュシュ。俺は?」
「待機よ、兄卑。お姉様の命令でしょ」
「まあ、そりゃそうなんだがなあ……」
無理もない。
“ディノとの契約”に“ヴァイスの魔力の回復”をした龍野は、魔力を多少使いこんでいたのだ。
それでも7割強は残っているが、「やはり魔力を多量に消費するシュヴァルツリッター・ツヴァイには載せられない」というヴァイスは、「龍野君をシュヴァルツリッター・ツヴァイに搭乗させない」と、龍野とシュシュに厳命したのである。
「にしても、フーダとの約束が守れるかってのは……」
「守れるわよ、兄卑。わたくし達でどれだけの“代理”を屠ったか、忘れたの?」
「……。そうだな、シュシュ」
そう。
龍野達一行は、J陣営の中でもトップの“代理”撃破数を誇っているのだ。
「拠点構築による戦力管理」、「複数登録によるフレキシブルな出撃」など、J陣営の中でも“異端”といえる戦法を取った一行は、敵陣営達にその存在を知らしめていた。
そして彼らを屠ろうとした敵陣営の戦力は、既に承知の通り、ことごとくが殲滅されている。
まさに「名刀達」あるいは「要塞」と呼ぶに相応しいものであった。
「龍野君、ちょっといいかしら?」
と、そこに別の声が響いた。
「何だ、ヴァイス?」
そう。ヴァイスの隣には、ララ・アルマ・バーンスタインがいたのだ。
「貴公が須王龍野か」
「は、はいララ殿下」
「そうかしこまらなくともよい。私はララ・アルマ・バーンスタイン。貴様の知人であるハーゲン少尉の上司、そして少尉の国であるアルマ帝国の第四皇女だ。つまりヴァイスシルト殿下と同じ立場にある者、という訳だな」
見た目は小学生と言えるララだが、その雰囲気は別格だった。
あの龍野ですら、本能で、それも一瞬で「勝てない」と悟る相手だ。
「貴様の実力はネーゼ姉さま、それにハーゲンから聞いている。漆黒の鎧を纏えば、身の丈を数倍も上回る巨大兵器すら瞬殺するのだとな。そこで私は思った」
「な、何でしょうか?」
緊張を落ち着けられぬまま、ララに問いかける龍野。
ララは幼い、しかし圧倒的な威厳を纏った声を発する。
「一度、手合わせ願いたい」
「………………は?」
龍野は絶句する。
確かに「最強戦力」と名高いララの情報自体は、とっくの昔に頭に入れていた。
しかしいざ決闘を申し込まれるとなると、思考の整理が追い付かなくなる。
「龍野君、またと無い機会よ? 別に機体に乗るわけではないから、存分に戦いなさいな」
そんな龍野の背中を押したのは、意外な事にヴァイスであった。
「兄卑、決闘を拒むなど、それでも貴方はお姉様の騎士なの? なっさけないわね」
シュシュもまた、龍野を正気に立ち返らせようとする。
それを聞いた龍野は、最早引くに引けなくなった。
拳を握りしめ、ララをまっすぐ見据えて口を開く。
「よろしいでしょう。お受け、いたします」
待ち望んだ答えを聞いたララは、「それでこそ、騎士というものだ!」と大笑いしていた。
作者からの追伸
有原です。
折角のコラボですもの、一度くらい戦ってもいいですよね。
まあ、結果は見えている訳ですが。
ちなみに、ヒナ子とソフィアさん達アルマ帝国の面々は、二人の戦いを見守っております。
えっ、シュシュ? 龍野の背中を押したら、漆黒改の指揮に向かいましたよ。
では、今日も今日とて、電波ジャック願いますかね。フフフ。
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ブレイバ
「おっ、ララ様がついに龍野さんと対決するとはね」
ブランシュ
「見物ですわ。どのような結末となるのでしょうか?」
グレイス
「わたくしは、『大叔母様が圧勝する』にクッキー一枚を賭けましょう」
ブレイバ
「おっ、いいねぇグレイス。じゃあ僕は、『龍野さんが勝利する』にクッキー一枚」
ブランシュ
「ではわたくしは、『仲良く引き分ける』にクッキー一枚を」
ブレイバ
「あはは」
ブランシュ&グレイス
「うふふ」
*
龍野
「あー、緊張してきたぁ~! けど、やってやるぜ!」
ララ
「そう構えなくとも良い(全力に近しい力を出すのは、どの程度か見極めてからとしよう)」
ヴァイス
「楽しみね(本当は魔力を消費するのですけれど、いざとなったらわたくしの機体から還元させるだけですわ。言ってしまったら龍野君が無茶をするので、表向きは伏せましたけれど。さあ、この戦い、『龍野君にとってはいかなる結果を迎えても益となる』、そんな戦いと確信したからこそ、わたくしは背中を押したのですけれどね)」
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さて、今回の寸劇は「本編の補足」といったものとなりました。
では次回、派手にぶつかってもらいましょう!
今回はここまで!
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