(過激描写注意)最後の夜(龍野視点)

「ん……」

 ヴァイスが時計を見ると、時刻は20:30と表示されていた。

「そろそろ動いても大丈夫そうね。そうだ、夜の警戒を……」

 ゆっくりと起き上がり、プライベートなドレス(スカート丈の短いもの)へと着替える。

「では、参りましょうか」

 ヒールの音を響かせ、ヴァイスはリビングへと向かった。


「失礼いたします、ヴァイスシルト殿下」

 リビングには、既にコウ少尉とミハル中尉がいた。ヴァイスの姿を見るなり、駆け寄って敬礼する。

「夜の見張りはお任せくださいませ、ヴァイスシルト殿下」

「我々はこの時に備え、昼夜の感覚を逆転させております。ですから、殿下には十分なご休息を取っていただきたく」

 二人は真剣な目で、ヴァイスに訴える。

「承知しました。では、お言葉に甘えさせていただきましょう(ネーゼ殿下でしょうか? どなたが手を回して下さったかは存じませんが、ありがとうございます)」

 それを聞き届けたヴァイスは、リビングを後にする。

(もっとも……。通達によると、残っていられる時間は15時間強程度。既に本日の撃破分と合わせて相当数の敵“代理”を殲滅したわたくし達J陣営ではあるのですけれど、正直どこまでフーダちゃんに報いているかが疑問ね。けれどここは焦っても仕方がないわ。存分に、休ませていただきます)

 歩きながら、思考を整理する。

 と、見知った顔が通り過ぎた。龍野である。

「おう、ヴァイス。もう大丈夫か?」

「あら、龍野君。ええ、お陰様でひとまずは」

 とは言ったものの、ヴァイスに存在する魔力はである。

「おいおい、無茶すんなよ(どうにか起きた、ってとこか? 気張るのはいいけどよ、ブレーンのお前に無茶されちゃ困るんだよな)」

「ん、気づいてるのかしら?」

「『気づいてる』も何も……。シュシュから送られたデータを見せてもらったけどよ、ヴァイス。お前機体を還元して魔術使ったんだって?」

「そうよ。お陰で疲れてしまったわ」

 ヴァイスは何でもないように答えるが、未だ癒えぬ疲れが肉体を蝕んでいた。それは疲労それそのものと言うよりは、“魔力の枯渇”に端を発したものである。

 魔術師となって一年を過ごした龍野にとって、それは容易に見抜けた。

「んー……。体を休めるか、魔力を補給するか。俺には決められねえや」

 などと言ってはいるが、言外にヴァイスに選択肢を与え、行動を決めさせている。やはり一年ヴァイスに付き添っていただけあって、多少なりとも話術が身についてきたのだ。

「それじゃあ、魔力を頂くとしましょうか。寝たばかりだから、少し体を疲れさせないと眠ってくれないのよ」

 ヴァイスもまた、龍野のに乗った。

 やはり、魔術師にとって魔力の残量管理は死活問題なのだ。

「なら、よろしく」

 龍野はヴァイスの答えを受け止めると、手を引いて部屋へと入った。


     *


「やれやれ、俺もすっかり欲しがりになっちまったな」

「そうさせたのは私だけどね」

 月明りが照らす部屋で、二人は唇を重ねる。

 小細工を用いずとも、二人は互いを求めていた。生存の為、快楽の為、存在確認の為。欲求の入り混じった動機で、目の前の異性あいてを貪らんとしていた。

 ぎらついた瞳で相手を見据えながら、邪魔なものを暴く。

「もう、この時だけは紳士的なんだから」

「『破るな』つったのは誰だよ」

 二人は今の相手の姿を見ると、ますます心に宿す炎を燃え上がらせる。

「ん……ふあっ、待ってぇ……!」

「待たねえよ」

 水のような音が響き、ヴァイスの艶やかな悲鳴が漏れ聞こえる。

 およそ15分程、それは続いた。


「さて、いい加減に限界だぜ。俺までれちまった」

「本末転倒じゃないの」

 互いに軽口を叩きあいながらも、興奮は冷めやらない。

「とはいえ……こうなったら、いつものようにお願いね」

 ヴァイスは龍野の両手を、自らの肩に添えさせる。

「あいよ」

 言い終えると同時に、龍野はヴァイスを押し倒した。無論、柔らかなベッドの上へ、だが。

 程なくして、ベッドが僅かな軋みを上げる。

「んっ……!」

 ヴァイスが感覚に耐え切れず、再び悲鳴を上げた。しかしそれに痛苦の色は見られない。

 二人は既に、けだものと化していた。


     *


「………………!」

「ふぁあっ……!」

 最後のシメをこなした二人は、崩れるようにベッドへ体を預ける。最も上を取っていた龍野は、一度を解いてヴァイスを潰さないようにしつつ、であるが。

「これで、しばらくはもつだろ……。大丈夫か、ヴァイス?」

「ええ、ありがとう……龍野君。魔力が減った影響からも、逃れられたわ」

 二人はシャワーを浴びるのも億劫に思うほど疲れ、そのままベッドで眠ってしまった。

 翌朝起きたシュシュ、玲香、ディノからはナニゴトかと問い詰められる事になったが、それはまた別の話である。



作者からの追伸


 はい、毎晩恒例のお話ですが、龍野達サイドはこれでおしまいです。

 次はゲスト(アルマ帝国)サイドですね。


 ちなみにこの際なのでバラしますが、

 まあ自主企画の進行とキャラクターのコラボを並列させたのですから、このくらいは仕方ありませんね。




 ですので、吹っ切れました。

 有原の世界では、アルマ帝国の面々は命令を蹴飛ばし、72時間いっぱいまで残る予定です。

 大体次期皇帝かつ姉御であるあのお方が原因ですね。姉に勝てる弟などいねぇ。弟君は哀れです。


 というより、残ってもらわないと困るのですよね。

 最後の敵はですから。

 やっぱり弟君は哀れです。


 はい、いろいろ煽らせて頂きました。

 では、今回はここまで!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る